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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる(補足 その4) 

‖ 北朝鮮版ニュークリアシェアリングとは?

高橋氏はツイッターで、北朝鮮にもニュークリアシェアリングを・・みたいなことを仰っていましたが、こちらがその詳細のようです。

3/4中段~下段

核シェアリングは、日本だけの問題ではなく、北朝鮮の封じ込めにも使えるはずだとも指摘した。つまり、北朝鮮の核を、中国との共同管理=核シェアリングに持ち込むべきだというものだ。
これは別に中国でなくてもロシアでもいい。・・北朝鮮の核をシェアリングできれば、日本の安全もかなり高まるはずだ。

もちろん、国家の体制保障を求めて核開発を進めてきた北朝鮮が、おいそれと核シェアリングを飲むはずない。しかし、・・核放棄と保持の中間的な性格がある核シェアリングは、北朝鮮にとっても現実的な選択肢になりうるはずだ。



今までにニュークリアシェアリングが実施されたのはNATO諸国のみですが、ここで突如、高橋氏がオリジナル案?を披露。それは、中露、あるいはどちらか一方で、言わば「北朝鮮版ニュークリアシェアリング」を導入するべきというものです。

しかし、こちらの北朝鮮版というのは、一体どのようなものなのか?

NATOの事例をヒントに、北朝鮮の核兵器を撤去した上で、中ロが提供する戦術核兵器で北朝鮮を守る。有事の際には中露が使用の判断を決定し、必要に応じて北朝鮮軍が核で応酬する。

しかしこれでは、今までフリーハンドで使ってきた北朝鮮の核・ミサイル体制と比較して、その抑止力が大幅に低下します。

とはいえ、こちらのシェアであれば一考に値するといいますか、仮にこれを導入した直後にアメリカが核ミサイルを撃てば、北朝鮮問題は強引に解決することになりますけどw

あるいは、北朝鮮の従来の核兵器はそのままで、その使用の判断(ロックの解除)を中露に渡すという意味なのか?しかしこれも、以前よりも抑止力を低下させるだけです。北朝鮮の立場から見てメリットと言えるものがないです。

北朝鮮版ニュークリアシェアリングがどういうものであるのかはさておき、こちらに関しては高橋氏も、そう簡単にはいかないことを承知しています。しかし、これが北朝鮮にとって現実的な選択肢になるという話には、私は首を傾げざるを得ません。

‖ 北朝鮮における核・ミサイル開発の源流

中身を考えることは面倒なので先送りとして、その上で北朝鮮にニュークリアシェアリングを導入するにしても、こちらは中・露・北の充分かつ安定的な信頼関係が構築されていることが前提になります。要は北朝鮮は中国やロシアを信頼できるのかという話です。

しかし、私はこれは全くありえないことだと考えています。北朝鮮は中国・ロシア双方を信用していないというのが私の認識です。

そもそも、北朝鮮が核武装を考えるようになったのはいつ頃からなのか?

例えばこれは、1993年頃のIAEAの核査察で揉めた(1994年にNPT脱退を宣言)とか、あるいは2002年のアメリカ・ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言など、そんなに最近の話ではないと思います。

北朝鮮の核開発の源流は、こちらも前回にお出しした資料等から考えれば、冷戦の終結(1989、もしくはソ連崩壊の1991)、さらに時代を遡れば、1962年のキューバ危機、70年代の米中接近(ニクソン米大統領の訪中)。こんなところでしょうね。

北朝鮮はソ連の支援を受け、既に1950年代から原子力の基礎的な研究に着手していましたが、やはり社会主義の同胞・後ろ盾であるはずのソ連や中国もまた、歴史の教訓として信頼しきれる相手ではない。とにかく、何の備えも持たない孤立だけは避けなければならない。冷戦終結後には、そのような不信や危機感が一層高まったものと思われます。

北朝鮮は常々、「アメリカの侵略に備える」として核開発を正当化(実態は体制保証・経済援助が目的)していますが、たしかにそれも主要な理由ではあると思います。しかし、より根本的なところは、中国・ロシアを味方につけるための、言わば脅迫のための材料。そんなところにあるのではないかと考えています。

核・ミサイル開発を全面に強調し、万が一、体制を脅かす事態になれば、暴発や難民の大量流出を招く(どさくさ紛れに核物質や化学兵器・関連技術者の流出リスク等)という、ある種の外交カード。暴発リスクを恐れる中露を半ば人質にとり、アメリカとの交渉材料とする。これが北朝鮮が今後も取り続ける基本戦略ということになるのでしょう。

中国もロシアも信用出来ないからこそ、両方を味方につけて利用するために、今後も北朝鮮は核の完成度を高め続ける。言わば核開発は、中・露・北の関係を固定化させるための接着剤。

このような動機が正しいとすれば、たとえその形がどのようなものであれ、北朝鮮版ニュークリアシェアリングの実現可能性は皆無であると考えます。

‖ 危機の時代だからこそ冷静に

一応、今回までの話の流れで、ニュークリアシェアリングにかんする主要な論点と、それに対するおかしなところをほぼ網羅したことになると思います。

今までの連載と、あるいは以前の、「北朝鮮のミサイルは原発より東京に 田中俊一規制委員長の発言は失言ではない(1~6)」も合わせてお読みいただければ、巷で話題の「ニュークリアシェアリング」なるものは、全く新しくも画期的でもなく、それどころか一考にも値しない都市伝説の類であることに納得していただけるものと確信しています。

北朝鮮の脅威が日増しに高まっている今だからこそ、まずは冷静に、現在日本が備えている基本的な安全保障環境について確認してみることが大切だと思います。

- おわり -

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北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる(補足 その3) 

‖ 韓国における核武装論とその源流、そして限界

2/4中~下段(クリックするとページが別窓で開きます)

こうした議論の必要性は、韓国の動きを見てもわかる。
9月3日、6回目の核実験など北朝鮮の挑発があった後、世論調査会社・韓国ギャラップが、「韓国も核兵器を保有しなければならないと思うか」とする主張に対し、回答者の60%が「賛成」、35%が「反対」の意思を示した事が明らかになった。

・・

もっとも、北朝鮮による戦争挑発の可能性には、・・半数以上の韓国国民は、戦争の可能性がないと考えているようだが。
こうした世論調査の読み方は慎重に行わなければいけないが、最後の戦争の可能性については、願望というところが大きいと思う。つまり、戦争はしたくないが、核保有はやむを得ない、というリアリズム的な思考で考えている人が韓国には多いのだろう。



韓国における核武装論。こちらは「自主核武装」を意味しているのだと思いますが、ギャラップの調査によれば6割が賛成。これは確かに、数字を額面通りに受け取れば、なかなか物騒な話ではあります。

しかし、韓国における核武装論は、特に真新しい話ではありません。やはり日本と同様に、北朝鮮で何かが起きる度にブームになるという、ある種の「お約束」に近いものがあります。つまり、最近の6割という数字も高まっているという意味ではないのでしょう。

こちら例えば以前の記事でも紹介したように、李明博大統領(当時)が核武装論に一定の評価を示したように、たとえ政治のレベルであっても「場合によっては・・」という話は少なくないのが実情です。

さらに言えば、韓国における核武装への願望は、例えば加藤哲郎・井川光雄(編)「原子力と冷戦 日本とアジアの原発導入」に詳しいのですが、その源流は朝鮮戦争を経験(1953/7/27 休戦協定)したことによる、北朝鮮に対する軍事的な脅威にあると見るのが妥当であると思います。

そのような背景を踏まえれば、韓国の政治・国民レベルにおいて、危機を経験する度に、突発的・感情的に核武装論が盛り上がることはある意味やむを得ない面もあるのでしょう。

しかし、韓国において、現実的には、すなわちリアリズム的な思考としての核武装は、ほとんど不可能です。

核武装に踏み切ることで、NPTや原子力平和利用の二国間協定、これらを含めた国際ルール・条約等を一方的に破棄。このような状況下では、もはや韓国にとって安全保障・経済等で最重要のパートナーであるアメリカとの友好関係は完全に破綻します。

もちろんこれは、日本が置かれた状況と基本的には変わりません。日本の核武装が非現実的な理由もだいたいこんなところです。

すなわち、核兵器を得る代償として世界の孤児になることに、果たして韓国(日本)国民は耐えられるのでしょうか?現代文明の恩恵にあずかり、ある意味「贅沢慣れ」した私たちは雑草だけで我慢できるのでしょうか。

‖ 韓国でのニュークリアシェアリングは「ほとんど」意味がない

前回の最後の章題が「竹ヤリと立ち小便」だったので、お食事中の方には申し訳なかったとちょっと反省してますw

その竹ヤリですが、前回のとおり、高橋氏は韓国でニュークリアシェアリングが実現する可能性をツイートしています。同様の主張は3/4の上段でも述べられていますが。

韓国の核保有については、国際社会からみれば、核拡散防止条約(NPT)の点で国際常識に反するのは日本と同じである。となると、韓国はアメリカとの核シェアリングという方向に進むかもしれない。その場合、日本はどうするのかという問題になるだろう。



こちらに関連する話として、先日、韓国の朴槿恵前大統領が、昨年アメリカに対して戦術核の配備を要求していたらしい(こちらはシェアではなく、米軍によって朝鮮戦争後から1991年まで続いたとされるの戦術核配備の意味だと思います)という記事がありました。

【朝鮮半島情勢】 朴槿恵政権、戦術核再配備を昨年要請 米は拒否
2017/9/11 http://archive.is/muTAU #産経ニュース

一部抜粋

韓国紙、中央日報は11日、朴槿恵前政権期の昨年10月、趙太庸・国家安保室第1次長(当時)がオバマ米政権の国家安全保障会議(NSC)幹部に対し、1991年に在韓米軍から撤去されたとされる戦術核兵器を再配備するよう要請していたと報じた。
 「核なき世界」の実現を掲げていた米国は拒否したという。当時の韓国政府高官の話としている。趙氏は同紙の取材に否定も肯定もしなかった。



対北朝鮮案件として、韓国に戦術核を配備する意義。こちらはたしかに、日本よりは若干ありうることは確かだと思います。そのため「ほとんど」意味がないというわけです。

こんなことを書くと、「やっぱりお前は韓国の手先か!」なんて怒り出す方もいらっしゃるかもしれませんが、別に私は韓国に肩入れする意図はまったくないのですw

前回の最後のあたり。私は、「陸続きの欧州と違い、四方を海に囲まれた日本が・・」と記述しましたが、戦術核の存在意義は今となっては骨董品に近くても、最低限、それらを提供される国家が陸続きであれば若干ありうるかもといった見方は可能です。

そもそも韓国に戦術核が配備された理由は、言うまでもなく北朝鮮軍の再侵入を阻止するためです。これは欧州とソ連の関係と同様に、南北間では当初は北側の方に勢いがあったという事情があります。

しかし、現在の韓国軍が、やはりロートルな北朝鮮軍の侵入を安々と許すような、そんなに弱い状況なのかと言えば、私はまったくもって疑問です。

前回説明したとおり、戦術核は抑止力としてではなく、相手の侵攻を水際で止めるための防衛的な仕様です。導入初期には現在のように、射程500キロ以下というような明確な定義はなかったにせよ、基本仕様はそんなところです。そのため、これをいまさら再配備する意義があるとは、形式を問わず、ちょっと考えにくいです。

余談になりますが、オバマ政権が韓国側の要求を断った理由は、「核なき世界」というよりも、純粋に安全保障面でメリットが無いと判断したためと推察します。たしかに用途が限定されるとはいえ、戦術核が増えることはアメリカの基本政策である核不拡散体制の維持と矛盾しますし、ひいては国際社会に無用な対立を煽る可能性も否定できません。

しかし、オバマ大統領は自分が生きてる間はそんな世界は実現しないだろうと、昨年広島でそう仰っていたわけですからwそして韓国もまた、アメリカの拡大抑止の提供を受けているわけですし。

仮に今後、韓国である種の精神安定剤的な目的として戦術核を配備するような状況になったとします。しかしそれでも、今回の記事の冒頭(抜粋)部分で高橋氏が仰っている、「こうした議論の必要性」、すなわち日本がニュークリアシェアリングを導入する理由・動機づけには全く当たらないと考えます。

補足 その4につづく

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北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる(補足 その2) 

‖ まったく予定になかった連載に・・

今回の連載(の予定ではなかったのですが)の最初に登場した、ニュークリアシェアリング推進派(?)の経済学者の高橋洋一氏。その高橋氏が現代ビジネスに寄せたコラムを昨日発見してざっと読み、そして先ほど読み返したところです。

北朝鮮危機回避の最後の外交手段?「核シェアリング」とは何か いまこそ議論の時だ
2017/9/11 (1234/4) #現代ビジネス

一部抜粋

1/4上段(クリックするとページが別窓で開きます)

今回は、「非核三原則の見直し」の後に来るものを書こう。できれば前回のコラムでそこまで言及したかったのだが、字数の関係でできなかった。それは「核シェアリング」についてである。先週木曜日放送の「ザ・ボイス そこまで言うか!」に出演した際にも話したのだが、この核シェアリングについて説明したい。



コラムを読んだ率直な感想としては、タイトルの「核シェアリングとは何か?」、「今こそ議論の時」とは裏腹に、全くの見かけ倒し、タイトル詐欺w何とも読めば読むほどに残念といった内容です。

‖ ニュークリアシェアリング万能論?

1/4下段

一部の右派からでている「日本も核武装すべきだ」という核保有論はあまりに粗野だ。現在の核拡散防止体制を考えれば、・・

・・

そうであれば、国際的に容認しにくい核保有論より、より実現可能性の高い「核シェアリング」を考えたほうがいい。それも非核三原則の一つである「もちこませず」の修正の延長線で考えたほうが得策であると筆者は思っている。
こう提案するだけでアレルギーを起こす読者もいるかもしれないが、国際社会をみれば、「核シェアリング」は、実際に北大西洋条約機構(NATO)で行われている。



高橋氏は、日本の自主核武装が現実的ではないという、極めて現実的なご意見であるのに、なぜか北朝鮮に対する最大のプレッシャーとしてニュークリアシェアリングが実現性が高く、これを阻んでいるのが国民感情、いわゆる核アレルギーにあると指摘しています。

どうも高橋氏は、核兵器の種類を区別せず、核と名の付くものなら何でもかんでも抑止力になると考えているようです。その上で、核兵器を共有しさえすれば、それを何時でも好き勝手に使って良いと思いこんでいるようにも見受けられます。こちらの論説を支持している方は、大体そんな感じなので困るのですがw

‖ NATOにおけるニュークリアシェアリングと将来の展望

2/4中段

しかも、かつてのソ連の核の脅威に対して、核シェアリングは結果としてソ連の核攻撃を抑止した。その意味で核シェアリングは有効だったのだ。いまの危機下において、可能性のある選択肢としてこの議論を持ちだしてもいいだろう。



NATOで配備された戦術核には、冷戦の初期、ソ連の通常戦力が欧州諸国の脅威と認識されていたので、その戦力差を埋める意味合いがありました。

その使用用途は、対空・対戦車ロケット砲・核地雷など、実質的には水際作戦に近く、これはソ連に圧力を与える意図の核抑止力というよりも、本土を防衛するための核(他に手段がない場合)と見る方が適切であると思います。「核に防衛的も何もあるか!」という話はさておきとして。

もちろん、こちらも以前に説明したとおりですが、これも最終的には、核兵器の提供国(=アメリカ)が同意した上で初めて使用が可能になるのです。

欧州がソ連の脅威から難を逃れた理由としては、ニュークリアシェアリングというよりも、NATO、すなわち集団的自衛権による安全保障体制が功を奏した結果でしょう。当然これには、NATOの主役であるアメリカによる拡大抑止の提供も含まれます。

そして現代は、核・ミサイル、通常兵器の近代化により、戦術核兵器を配備する意義がほとんど無くなりました。現実にアメリカやロシアも、戦術核はほとんど廃棄に回しています。

ニュークリアシェアリングとは、通常兵器と戦術核が同居していた、すなわち、実戦で核兵器が使われる想定が今よりは多いと見られていた一時期(結局、幸いに一度も使用されませんでしたが)においては、たしかにそれなりの意義があったといえるものだと思います。あくまで当時の事情としては、という意味ですが。

NATO諸国では、現在も一部で規模を大幅に縮小した上で配備が継続しています。しかしこちらは安全保障というよりも、例えばNATO諸国の結束力のアピールといった政治的、あるいは惰性的な意味合いが理由であると思います。これすらも近いうちに廃止されるというのが著名な軍事アナリストの総意ではないでしょうか?

‖ 竹ヤリと立ち小便

つまり、ニュークリアシェアリングという提案がダメな理由は、決して「核アレルギー」があるからではないのです。この件、たしかに私が嫌いな感情論的な拒否反応を示す方も少なくないのですが。

でも本当は、もはや使い道のない骨董品みたいな話なので、「何をいまさらw」というのが正しい反応なのです。

陸続きの欧州と違い、四方を海に囲まれた日本が、いまさら射程100キロ程度、あるいは地雷などの戦術核を配備して、それが一体何になるのか?北朝鮮の脅威に対し、日本人は立ち小便で応酬するのがリアリズムなのか?

それとも、日々ロシアや中国軍の侵攻を想定し、その気になればそれらを余裕を持って排除することも可能な自衛隊(自衛隊は守りに非常に強く、攻めが全くできない極端な構造)が、ロートルな北朝鮮軍に安々と制空・制海権を取られてしまうほど弱いという認識であるのか?

高橋氏には申し訳ないですが、私には竹ヤリと立ち小便の区別がつきませんね。

補足 その3につづく

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北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる(補足) 

‖ ニュークリアシェアリングに対するまともな反応

自民党・石破茂氏に端を発した、唐突ともいえる「ニュークリア・シェアリング」論。これに対して自民党内の一部の議員はともかくとして、政府の反応は総じて否定的です。

石破氏「核配備」発言が波紋=自民に賛否、公明・野党は反対
2017/9/6 http://archive.is/otPLM #時事通信

一部抜粋

北朝鮮の核・ミサイルへの抑止力強化の方策として、石破氏は日本政府が堅持してきた非核三原則の見直しを促した形だが、政府や公明党、主要野党は見直しに否定的だ。ただ、自民党内の一部には石破氏に同調する声も上がっている。

・・

 これに対し、菅義偉官房長官は7日の記者会見で「政府として非核三原則の見直しはこれまでも議論しておらず、今後も考えていない」と明言。公明党の山口那津男代表も会見で「国是は変えてはならない」と訴えた。

 自民党で「ハト派」を自認する岸田文雄政調会長は記者団に「米国の核抑止力に不備があるとは考えていない」と強調し、三原則を見直す必要はないとの認識を示した。



外相 非核三原則の見直し議論を行う予定ない
2017/9/8 http://archive.is/uBDQl #nhk

河野外務大臣は、自民党の石破元幹事長が非核三原則について、抑止力として機能するのか議論すべきだという考えを示したことに関連し、アメリカの抑止力は有効に機能しており、政府として、非核三原則を見直す議論を行う予定はないという認識を示しました。

・・

これに関連して、河野外務大臣は閣議のあと記者団に対し「トランプ大統領やティラーソン国務長官など、あらゆる段階で日米は100%ともにあると繰り返し言っているので、アメリカの抑止力は極めて有効に働いている」と述べ、核戦力などあらゆる軍事力で同盟国を守る『拡大抑止』を含む抑止力は、有効に機能しているという考えを示しました。



2番目。北朝鮮が核・ミサイル開発等で挑発行動に出る度に、日米間では「日米安保条約第5条が適用される」、「あらゆる手段で日本を防衛する」という主旨のコミットメント(約束)の再確認が行われるのが定番です。この辺りは日米双方で当然理解していることなので、頻繁に再確認する必要があるのかな?とは思いますが。

とはいえ、このような状況で、唐突にニュークリアシェアリングを議論するべきというのは、これはハッキリ言えば利敵行為、あるいは危機に便乗した売名行為としか言いようがないです。しかも日本に戦術核兵器を配備することで北朝鮮に対する抑止力が高まるなどと、全く見当外れな話です。

‖ それでももう少しニュークリアシェアリングについて考えてみる

話題の「ニュークリアシェアリング」は全く意味を成さず、実質的に日本は既に、上位互換の戦略核兵器のニュークリアシェアリングを導入している。この話はこれで終わりと言ってもいいと思います。しかし、話のついでということで、前回と少々被るところもありますが、もう少しこの辺について考えてみたいと思います。

どうも「ニュークリアシェアリング(=核の共同保有)」という響きやイメージだけで考えると、これは親切にもアメリカが、地球上どこにでもフリーハンドで撃てる戦略核をプレゼントしてくれるというような、そんな常識外れの「裏ワザ」であるかのような錯覚を覚えている方が案外多いのではないかと思います。

長島昭久‏@nagashima21
2017/9/6 http://archive.is/sCIls

うーん。日本が保有するミサイル防衛システムなど拒否的抑止力に加えて(報復戦力による)懲罰的抑止力の必要性を議論する時期が来たとは思うが、報復核攻撃の意思決定はあくまでワシントン次第だから、米軍の戦術核を日本に配備しても米本土に配備された戦略核でも抑止効果は変わらないと思うのだが。



このあたり、先日民進党を離党した長島昭久氏は、さすがに安全保障に詳しいということもあり、与太話には引っかかりませんね。

それにしても民進党は惜しい人を逃してしまいました。「不倫バレた、日本死ね」みたいな方が離党するのとは全く異なります。

ニュークリアシェアリングをオススメしている方は、NATOでの事例から「日本も導入するべき」と仰るわけです。しかし、これが戦術核で最終的な判断はアメリカにあるとか、そのような大事な話を全く考慮に入れてなかったりするのです。そして、これによってドイツやイタリアなどの安全保障が担保されているとか、そういう話でもないです。

その上で、先ほどの「裏ワザ」的な妄想に耽る。これこそが最新の安全保障論、リアリズムであると。

こんなバカげた話を著名な大学教授から政治家まで、案外信奉している方(2ちゃんねるなどで「真実」を知るパターンもw)が多いので、日本はまだまだ平和であるということですねw

長島氏も指摘されているとおり、アメリカの核戦力は、今やアメリカ本土やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)などから、その気になればどこにでも即時かつ正確に攻撃が可能なので、わざわざ日本に配備する意味もありません。日本に配備しようとしまいと、アメリカの核抑止力が世界最強であることは誰もが理解していることです。

それでも、たとえ戦術核であっても手元にあるだけで国民的に安心ができる(?)というような意見もあると思いますが、どちらにしても最終的な判断はアメリカが握っているわけです。結局こちらも、日本に配備しようとしまいと全く同じということです。

あるいは、NATOとはまた違った形のシェアを模索するという考え方もあるでしょう。しかし、たとえそれがどんな形であってもフリーハンドはありえません。これを許してしまうと、提供国の意図と違う形で核兵器が使用される、あるいは脅迫(ニュークリア・ブラックメール)に利用されるおそれがあり、これはこれで大変危険ですから。

そして最初の話に戻りますが、日本は既に、日米同盟によって戦略核兵器をシェアしている状態です。それなのになぜ、それよりもはるかに劣る話が脚光を浴びるのか。全く理解に苦しみます。

‖ 非核三原則は既に死文化している

前回、このような話(ニュークリアシェアリング)が出てくると、日本国内では感情論的な批判に終始しがちになる(それが残念であるという意味)とも述べたわけですが、案の定、朝日新聞がそんな社説を発表しています。

社説 北朝鮮問題、どう向き合う 非核三原則の堅持こそ
2017年9月8日 http://archive.is/KjLiP #朝日新聞

一部抜粋

核実験をやめない北朝鮮の脅威にどう向き合うか。自民党の石破茂元防衛相が、非核三原則の見直しに言及した。
 「米国の核の傘で守ってもらうといいながら、日本国内にそれ(核兵器)は置きません、というのは本当に正しい議論か」
 問いに答えるなら「正しい議論だ」と言うほかない。

・・

脅威に便乗するような強腰の主張が、地域の安定に資することはない。求められるのは、非核三原則や専守防衛といった日本外交の基軸を守った冷静な議論である。



日本は既に戦略核兵器をシェアしている。このような事実に照らせば、実は国是とされている非核三原則(ただし、法的な根拠はない)も、実質的には意味を成していないことがわかります。

非核三原則。すなわち、核兵器を「持たず」、「作らず」、「もちこませず」。確かに冷戦時代は3番目があいまいであったことは事実としても、それを考える必要もありません。

なぜなら日本は、「持たず」、「作らず」、「持ち込ませず」して、実質的にはアメリカの核兵器を保有しているのと同じであるからです。すなわち「日本株式会社」は、一種のファブレス企業(工場や商品を持たない)として核兵器を製造し、保有している。そのようなイメージです。

誤解されては困るのですが、唯一の被爆国として非核三原則を堅持するという国是は国民的にも広く支持されているので、私としてはこれを無くせという意図は全くないのです。つまり論点整理、表向きと現実は異なるという話ですね。

‖ 原発・エネルギー問題を学べば学ぶほど・・

何といいますか、私が福島原発事故を契機に原発・エネルギー問題を勉強するようになって、そこから得られたものというのは、結構多いように感じます。

核の平和利用と軍事利用は表裏一体。平和目的であれ軍事目的であれ、その線引きは政治的なものにすぎない。すなわち、「原発=核兵器」と定義することも一応可能ではあります。

このあたりの論点を調べていくと、核兵器であれば、どうにも賛成・反対派双方がおかしなことを言っている事が多く、それがなぜか通用している場面が多いなと。例えば今回のニュークリアシェアリングと、それに対するリアクション。私から見れば、双方の主張がまともであるとは到底思えません。

まともでないのは原発もそうで、こちらも推進・反対で色々おかしなことを言い合っている。そんなところを当ブログでも度々述べてきたわけです。

別に私がまともであるということを主張したいのではなくて、勉強してみて率直な感想がそうであるということですwまともであると言い切る自信がない立場から見ても、核を巡る議論は軍事・平和利用、これらの推進・反対双方でまともじゃないです。

これらの問題について、より理解を深めていく上でも、この頃は涼しくなってきましたので、そろそろ勉強を再開したいと考えています。

- おわり -

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北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる 

‖ 北朝鮮の脅威の高まりと、それについて回ってくる物騒な話

今月3日の北朝鮮による水爆実験。前回とは違い、今回のものは当初の発表によると、爆発の規模が70キロトンで、最終的な評価としては160キロトン。これが実際に、直ちに弾頭化が可能な兵器なのかはさておき、北朝鮮の脅威が高まっていることは間違いないですね。今回の核実験では北朝鮮の国民が被ばくしたという情報もあり、こちらも心配です。

以前にも何度か話題にしたことがありますが、今回のような騒動が起きると、周辺諸国、特に日本では、必ずと言っていいほど、なにかと物騒な話が一時的なブームになります。やはり、「やっぱり日本も核武装しないと!」みたいな話が、その実現可能性を検討する以前から、ある種の説得力(?)を持った話として脚光を浴びるわけです。

しかし、少なくとも日本の自主核武装は、技術的な問題以上(こちらも短期間では難しいでしょうが)に政治的なハードルが高く、全く現実的ではありません。誤解されている方も多いように思いますが、日本はその気になれば一朝にして核兵器を四千発も作れるとか、世の中そんなに甘くはないですw

‖ 核武装が出来る裏ワザ!?

自主核武装は現実的ではない。それを理解した上で、それでも何とか核兵器を手元に置きたいと考えている方は、今度は「ニュークリア・シェアリング(核の共同保有)」こそが日本の進むべき道、これぞリアリズムだ!と主張するかもしれません。自主核武装ではなく、アメリカに核兵器を提供してもらう、言わば「お試し核武装論」です。

石破氏「ニュークリア・シェアリングを議論すべき」
2017/09/06 http://archive.is/d8nm1 #テレ朝NEWS

一部抜粋

自民党の石破元幹事長は日本の核政策について有事の際、アメリカの保有する核兵器を使う権限を持つ「ニュークリア・シェアリング」も含めて議論をすべきとの考えを示しました。

 石破元幹事長:「NATO(北大西洋条約機構)は核をどんな時に使い、どんな時に使わないか、持たない国がどう関与するか、常に実務レベルでも閣僚レベルでも常に議論している。だから抑止力が働く」
 
・・

さらに、非核三原則についても「核の傘で守ってもらうと言いながら、日本国内に置きませんというのは抑止力として十分なのか」と話し、見直しも含めて議論をすることが重要だという考えを示しました。



高橋洋一(嘉悦大)‏@YoichiTakahashi
2017/9/7 http://archive.is/g9D4z

ザボイス。今日は Nuclear Sharing の話をした。北朝鮮の核への対抗策。核保有よりスマートで現実的。NATOでドイツ、イタリアという日本に似た国でもやっている。非核三原則の見直しの後に出る話として議論はしておくべき。左派は非核三原則の見直しだけで思考停止になるかな笑



ニュークリアシェアリング。老若男女、ベテランの政治家から著名な大学の先生に至るまで、世の中「裏ワザ」と名のつくものには弱いのかな?と。やっぱり大人も大したことないなと、私としてはこのような論説を見聞きする度に、とてもガッカリしてしまいますw

‖ ニュークリアシェアリングとその歴史的な経緯

ニュークリアシェアリングが無意味であるという話も以前に説明したとおりではあるのですが、この機会にもう一度まとめてみたいと思います。

  • NATOにおける核の共有は戦術核兵器(戦術核)に限られる
  • 戦術核の使用は対ロシア・地上戦(戦車部隊等の侵攻)を想定
  • 核兵器の最終的な使用の権限は提供国(アメリカ)にある

もともとNATOのニュークリアシェアリングは、1950~60年代の、ソ連(ロシア)の通常戦力がヨーロッパ諸国を圧倒していた事情から、その戦力差の解消を目的として、場合によっては戦術核の使用もあり得るとして導入されたものです。大国・ソ連の脅威と、通常兵器と核兵器の戦力差に相当開きのあった、当時の軍事技術的な背景もありました。

現在は通常兵器の性能の向上や、NATO諸国の結束(=集団的自衛権)もありますし、唐突にロシアがドイツに侵攻してくるとか、そのような状況も想定されにくいです。わざわざ戦術核を使う機会はほとんど無いと考えていいでしょう。したがって、既にニュークリアシェアリング・戦術核兵器は時代遅れの産物と言っても差し支えないと思います。

言ってみれば周回遅れ(それどころではないw)の話が、なぜか日本では最新情報とか、あるいは簡単に実現可能な核武装の裏ワザみたいに、たびたび話題になる。これが不思議なのです。

そもそも、陸続きの欧州とは異なり、周囲を海に囲まれた日本が戦術核を配備したところで、それで何か意味があるのか?たかが射程数十キロのロケットランチャーや核地雷を配備することが、果たして北朝鮮に対する抑止力になり得るのか?手元にあるという心理的な効果はあり得るとしても、最終的な決定権はアメリカが握っているわけですから。

‖ 日本は既にニュークリアシェアリングを導入している

だったら、より射程の長い戦略核兵器をシェアすればいいじゃないかという意見もあるでしょう。

でも、既にシェアしてるじゃないですか。それこそが、日米安全保障条約による拡大抑止(いわゆる核の傘)の提供です。もちろん、日本政府の意思では使えない(そんな気前のいい話はありませんがw)ですが、日本は実質的には、世界最高水準の戦略核兵器のニュークリアシェアリングを実現しているのです。

北朝鮮問題では、基本は日米間(同盟諸国)の足並みを乱さないことにあるのでしょう。そこで今のタイミングで、日本がアメリカの核兵器の配備を要求するなんて話になれば、これではある種の対米不信の現れです。しかも意味が通らないわけですから、これでは両国間の無用な関係悪化につながるだけです。

北朝鮮としては、各国間の同盟関係を分断してアメリカとの交渉を有利にしたいわけで、核・ミサイル開発の副産物として各国で感情論的な発言が出てくる事も計算のうちと言ったところでしょう。

‖ 核と感情論

ついでになりますが、このような話題が出てくると、とかく反核、あるいは原発反対派(基本的には原発反対=核兵器反対)は、「ヒロシマナガサキ」、「唯一の被爆国」、「非核三原則」的な感情論に終始しがちです。先の石破氏も色々批判を浴びているようですが、その根拠もそんなところだろうと思います。

どうにも、日本における核の話は、推進・反対双方が訳もなく、いつもただワーワー騒いでいるだけ。そんな印象なのです。現実は、仮に北朝鮮が核保有を認められる状況になれば、NPT体制、国際的な核の秩序の崩壊にもつながりかねない相当危険な局面であるにもかかわらず、全くお構いなしです。

私は感情論を好みませんので。

カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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