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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

北朝鮮問題と「ニュークリア・シェアリング」という名の都市伝説について少し考えてみる(補足 その4) 

‖ 北朝鮮版ニュークリアシェアリングとは?

高橋氏はツイッターで、北朝鮮にもニュークリアシェアリングを・・みたいなことを仰っていましたが、こちらがその詳細のようです。

3/4中段~下段

核シェアリングは、日本だけの問題ではなく、北朝鮮の封じ込めにも使えるはずだとも指摘した。つまり、北朝鮮の核を、中国との共同管理=核シェアリングに持ち込むべきだというものだ。
これは別に中国でなくてもロシアでもいい。・・北朝鮮の核をシェアリングできれば、日本の安全もかなり高まるはずだ。

もちろん、国家の体制保障を求めて核開発を進めてきた北朝鮮が、おいそれと核シェアリングを飲むはずない。しかし、・・核放棄と保持の中間的な性格がある核シェアリングは、北朝鮮にとっても現実的な選択肢になりうるはずだ。



今までにニュークリアシェアリングが実施されたのはNATO諸国のみですが、ここで突如、高橋氏がオリジナル案?を披露。それは、中露、あるいはどちらか一方で、言わば「北朝鮮版ニュークリアシェアリング」を導入するべきというものです。

しかし、こちらの北朝鮮版というのは、一体どのようなものなのか?

NATOの事例をヒントに、北朝鮮の核兵器を撤去した上で、中ロが提供する戦術核兵器で北朝鮮を守る。有事の際には中露が使用の判断を決定し、必要に応じて北朝鮮軍が核で応酬する。

しかしこれでは、今までフリーハンドで使ってきた北朝鮮の核・ミサイル体制と比較して、その抑止力が大幅に低下します。

とはいえ、こちらのシェアであれば一考に値するといいますか、仮にこれを導入した直後にアメリカが核ミサイルを撃てば、北朝鮮問題は強引に解決することになりますけどw

あるいは、北朝鮮の従来の核兵器はそのままで、その使用の判断(ロックの解除)を中露に渡すという意味なのか?しかしこれも、以前よりも抑止力を低下させるだけです。北朝鮮の立場から見てメリットと言えるものがないです。

北朝鮮版ニュークリアシェアリングがどういうものであるのかはさておき、こちらに関しては高橋氏も、そう簡単にはいかないことを承知しています。しかし、これが北朝鮮にとって現実的な選択肢になるという話には、私は首を傾げざるを得ません。

‖ 北朝鮮における核・ミサイル開発の源流

中身を考えることは面倒なので先送りとして、その上で北朝鮮にニュークリアシェアリングを導入するにしても、こちらは中・露・北の充分かつ安定的な信頼関係が構築されていることが前提になります。要は北朝鮮は中国やロシアを信頼できるのかという話です。

しかし、私はこれは全くありえないことだと考えています。北朝鮮は中国・ロシア双方を信用していないというのが私の認識です。

そもそも、北朝鮮が核武装を考えるようになったのはいつ頃からなのか?

例えばこれは、1993年頃のIAEAの核査察で揉めた(1994年にNPT脱退を宣言)とか、あるいは2002年のアメリカ・ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言など、そんなに最近の話ではないと思います。

北朝鮮の核開発の源流は、こちらも前回にお出しした資料等から考えれば、冷戦の終結(1989、もしくはソ連崩壊の1991)、さらに時代を遡れば、1962年のキューバ危機、70年代の米中接近(ニクソン米大統領の訪中)。こんなところでしょうね。

北朝鮮はソ連の支援を受け、既に1950年代から原子力の基礎的な研究に着手していましたが、やはり社会主義の同胞・後ろ盾であるはずのソ連や中国もまた、歴史の教訓として信頼しきれる相手ではない。とにかく、何の備えも持たない孤立だけは避けなければならない。冷戦終結後には、そのような不信や危機感が一層高まったものと思われます。

北朝鮮は常々、「アメリカの侵略に備える」として核開発を正当化(実態は体制保証・経済援助が目的)していますが、たしかにそれも主要な理由ではあると思います。しかし、より根本的なところは、中国・ロシアを味方につけるための、言わば脅迫のための材料。そんなところにあるのではないかと考えています。

核・ミサイル開発を全面に強調し、万が一、体制を脅かす事態になれば、暴発や難民の大量流出を招く(どさくさ紛れに核物質や化学兵器・関連技術者の流出リスク等)という、ある種の外交カード。暴発リスクを恐れる中露を半ば人質にとり、アメリカとの交渉材料とする。これが北朝鮮が今後も取り続ける基本戦略ということになるのでしょう。

中国もロシアも信用出来ないからこそ、両方を味方につけて利用するために、今後も北朝鮮は核の完成度を高め続ける。言わば核開発は、中・露・北の関係を固定化させるための接着剤。

このような動機が正しいとすれば、たとえその形がどのようなものであれ、北朝鮮版ニュークリアシェアリングの実現可能性は皆無であると考えます。

‖ 危機の時代だからこそ冷静に

一応、今回までの話の流れで、ニュークリアシェアリングにかんする主要な論点と、それに対するおかしなところをほぼ網羅したことになると思います。

今までの連載と、あるいは以前の、「北朝鮮のミサイルは原発より東京に 田中俊一規制委員長の発言は失言ではない(1~6)」も合わせてお読みいただければ、巷で話題の「ニュークリアシェアリング」なるものは、全く新しくも画期的でもなく、それどころか一考にも値しない都市伝説の類であることに納得していただけるものと確信しています。

北朝鮮の脅威が日増しに高まっている今だからこそ、まずは冷静に、現在日本が備えている基本的な安全保障環境について確認してみることが大切だと思います。

- おわり -

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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