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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

反原発のヒーロー 小出裕章先生は北朝鮮の核・ミサイル開発を容認しているのか? その1 

‖ 小出裕章先生が北朝鮮の核・ミサイル問題を語る

北朝鮮の核と日本の対応について小出裕章先生の見解
2017/9/5 http://bit.ly/2fpUBny

こちらは、小出先生が北朝鮮の核開発問題ついて意見を述べたとされるメールです。

メールが公開されたのは日付のとおり、ごく最近のことで、ネットでは上記のようなタイトルで拡散されているようです。

なにやら反核・反原発の皆さんの間では、こちらのメールに関して「冷静かつ的を射た意見」、「納得した」といった肯定的な評価も少なくないようです。「要拡散」なんて結構RTされてるようですね。

しかし私としては、内容的に疑問に思うところが多々あり、どうしても納得することができませんでした。

というわけで、以下に自分なりの感想を述べてみたいと思います。

‖ 北朝鮮のプルトニウム事情

本題に入る前に、まずは北朝鮮のプルトニウム生産事情について少しまとめてみたいと思います。

北朝鮮の核開発計画の中核とも言える、寧辺(ニョンビョン、もしくはヨンビョン)核施設。核兵器用のプルトニウム生産は、こちらにある5MW級原子炉(=黒鉛炉)が主力になります。ちなみに、5MWとは電気出力5,000kW、熱出力ではおよそ25,000kWに相当します。

こちらの原子炉は、6カ国協議(2003~2008年)の影響で、2007年頃から一時期稼働が停止(冷却塔の破壊措置)となりました。しかし、合意内容の齟齬により、協議の枠組みは事実上崩壊。その後、2013年頃から再稼働を進めるという話(この間に密かに修理していた?)が報道されるようになり、現在に至ります。

したがって、最近活発に行われている核実験は、基本的には過去に作り溜めされた、あるいは比較的最近に作られて再処理したプルトニウムが用いられている、ということになろうかと思います。

上記のリンク先のとおり、北朝鮮はウラン濃縮施設も所有して、実際に生産をしている言われています。しかし、今回の話はプルトニウム生産が主体なので、ウランの話は除外(と言いつつ、あとでちょっとだけ出ますがw)とさせていただきます。

‖ 冷静に考えて、いきなり最初からつまづくw

朝鮮民主主義人民共和国の核の件、皆さん冷静にならなければいけません。
朝鮮には熱出力で25メガワットのごく小さな原子炉しかありません。京大原子炉実験所の原子炉は熱出力で5メガワットでした。

日本でも世界でも標準的な原子力発電所は100万キロワットです。これは電気出力で、熱出力は300万キロワット、メガワット単位で示せば3000メガワットです。

つまり、朝鮮が持っている原子炉は、日本の原発の原子炉の100分の1以下という小さなものです。



小出先生は、北朝鮮が所有する黒鉛炉の出力はごく小さなものであるとして、その比較対象として、現在の商業用原発のスタンダードとして利用されている軽水炉・電気出力100万kW(=熱出力300万kW、もしくは3,000MW)を例に出しています。

私としてはこの時点で「・・おかしいな?」と思うわけです。

なぜなら、核兵器用のプルトニウム生産に適した黒鉛炉と、商業用の軽水炉を比較する意味・理由が私には全く理解できないからです。もちろん軽水炉でもプルトニウムは出来ますが、その品質は黒鉛炉に比べると相当劣ります。核兵器を作るなら黒鉛炉を使うのが一番手っ取り早いです。

そして、確かにメガワットで比較すれば100倍以上の差があるわけですが、比較対象として適切とは思えない熱出力の差を論じたところで、果たしてどのような意味があるのか?これでは北朝鮮の原子炉を過小評価するために、強引に軽水炉を持ち出したと、読み手によってはそのように受け止める方も少なくないのではないかと思います。

そもそも、核兵器用の原子炉は、そんなに大出力・大容量である必要は全くなく、熱出力で数万~数十万kWクラス。だいたいこんなところではないかと。アメリカやロシアにしても、核兵器の導入初期は、今の北朝鮮と大差ない原子炉でプルトニウムを生産していたはずです。このあたりでも先ほどの比較の手法がおかしいことがわかります。

‖ 少しであれば良いのか・・?

その原子炉を動かしてどれだけのプルトニウムができるかについては、昔計算して書いたことがあります。・・
 
仮に朝鮮が原爆を作れたとしても、その数は知れています。



5MWの原子炉でどのくらいのプルトニウムが生産可能であるのか。これは稼働率によって結果は異なりますが、一般的に言われている、核兵器1発あたり4kgのプルトニウムが必要であるという考え方に基づくと、年間で2発分程度の量にはなると思います。

北朝鮮が現在どれだけの核兵器(相当する核物質)を持っているのか?これは核開発問題で度々登場する、ストックホルム研究所や38ノースなど、様々な研究機関の見解が分かれているところですが、高濃縮ウラン分も含めて概ね20発前後(一説には最大で60発とも)でしょうか。

諸説あるとは言え、年間2発分程度の製造能力に、在庫量としての20~60という数字。これをあっさりと、その数は知れているというような評価をして良いものなのかどうか・・?

もちろん、北朝鮮の核開発能力はいずれも推測の域を出ず、本当の実力は北朝鮮内部でしか知り得ないことです。そのため、この問題を考える上では、過大評価も過小評価も禁物であることは言うまでもありません。

しかし、小出先生は以前、日本の核武装の可能性として、核物質の計量の誤差を利用してプルトニウムを取り出すことも可能であると仰っていた記憶があります。先生はそのような厳しい指摘(実際、計量はそれほど気を使う問題ではありますが)をされながら、北朝鮮は少ないでは、ちょっとどうなのかあと。

先ほどの100倍以上でいえば、北朝鮮はより大型の黒鉛炉も建設中(現在は凍結中で、建設が進んでいるという報道は無いようです)です。こちらは例えば、先ほどのリンク先の50MWの原子炉に相当(電気出力表記なので、熱出力は250MW、25万kW程度?)します。

仮に将来、これが完成したとして、小出先生はそれでも「軽水炉の数十分の1以下で、作れたとしてもその数は少ない・・」などとフォローをされるおつもりなのでしょうか?凍結中といえば、さらに大型の泰川(テチョン)の200MW原子炉もありますが、こちらも標準的な軽水炉と比較すれば、まだまだ余裕はありますが。

参考資料 北朝鮮の核関連施設(タイトルは機密のベールを脱いだ北朝鮮の核開発プログラム)
2016/4/14 http://archive.is/BTtlM #reuters

クリックでフルサイズになります
n_korea_nuclear_plant.png

‖ 北朝鮮はプルトニウムを取り出せない説にこだわる小出先生

そもそも小出先生は、つい最近まで、北朝鮮は核兵器を作れない、再処理ができないから不可能であるという認識でした。

京都大学 原子力安全研究グループ 小出裕章 朝鮮の核問題(PDFファイル)
2003/6/14 http://bit.ly/1Gqiemm

1985 年に着工され、1996 年に完成予定であった放射化学実験室(Radiochemical Laboratory)が再処理開発を目的とした実験施設であることは朝鮮自身も認めているが、1994 年の枠組み合意時に建設が凍結された。したがって、朝鮮はプルトニウムを取り出すことができないし、もちろん原爆を作ることもできない。



北朝鮮は再処理工場を持っていない(完成させていない)からプルトニウムを取り出せない、したがって核兵器の製造はできない。小出先生はそのように仰るのですが、実際にはその2003年度中に北朝鮮は再処理(=放射化学実験室)を行い、プルトニウムを抽出しています。

原子力百科事典ATOMICA 北朝鮮の原子力研究センター (14-02-02-01)
http://archive.is/wwQa

 この再処理施設は、1994年10月の枠組み合意により凍結された。2003年2月26日、アメリカ政府は北朝鮮が寧辺の実験用原子炉を再稼働したことを明らかにした。
 北朝鮮は2003年7月8日、ニューヨークでの米国との非公式協議で、寧辺の5MWe実験用原子炉から1989年春に取り出した燃料棒約8,000本の使用済燃料の再処理を2003年6月30日に完了したと通告した。



こちらは14年前の論文なので古いと仰る方も多いと思います。しかし比較的最近の記事(ラジオ番組)でも、小出先生は北朝鮮の核開発には否定的でした。

北朝鮮の核開発疑惑に迫る!!【第2弾】「プルトニウムを取り出すことすらできない、そういう状態ですので、北朝鮮に核兵器があるというのは私はそれこそあり得ないことだと思います」〜第25回小出裕章ジャーナル
2013/6/29~7/5 http://bit.ly/2hnwnLj #ラジオフォーラム

プルトニウムというのは原子炉の中でつくっただけではだめで、それを使用済み燃料の中から取り出すという、再処理という作業が出来なくてはいけない。
・・それを行うためには、いわゆる再処理工場という工場が必要なのですが、1992年の時点で朝鮮民主主義人民共和国には再処理工場がなかったのです。
つまり、取り出すことすらできない、そういう状態ですので、あの国に核兵器があるというのは私はそれこそあり得ないことと思いまして、そう発言を続けてきています。



現実には、2003年の時点で北朝鮮は再処理(こちらも先の協議の影響で一時期稼働を停止しましたが)を行っている。これは別に、最近まで長らく隠されていた機密情報でもない。それなのに、小出先生は出来ないと仰っている。

おそらく聞き手の石丸氏は、そのあたりの経緯を事前に勉強していたので、「この間に開発が進んだということは?」と質問をしている。それに対して小出先生は、ひょっとしたら出来てるかもしれない、とあくまで否定的なニュアンスで、出来てたとしてもしれている量であると仰っています。

そして小出先生としては、2013年当時まで行われた核実験にも懐疑的(トリック)という認識ですね。

その2につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

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