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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

医療被ばく問題 なぜ読売新聞は日本学術会議を批判しないのか? その3 

前回の「その3につづく」から2ヶ月ほど経ってしまいましたw

‖ 放射線被ばくをオススメするメディアや専門家

福島原発事故以降、大手メディア、原発や放射線、医療の専門家、あるいはテレビのコメンテーターなどが、そもそも放射線が人体に与える影響は少ないとか、実はもっと浴びても構わない(浴びるべき)というように、被ばくを推奨するかのような言説が多く見られるようになりました。例えば、連載1、2で紹介した読売新聞の社説がそんな感じです。

中でも特徴的なのは、読売新聞の社説でも見られる、「○○は200・500msvに相当する(だからそれだけ被ばくしても構わない)」という論法でしょうか。

例えば、私の記憶では野菜不足の発がんリスクが100~200msvとか、そんな感じです。つまり、放射線被ばくを他のリスクに置き換えて正当化を図るという方法です。

‖ 放射線被ばくのリスクを他のリスクに換算する際の問題点

放射線被ばくの問題では、今でも「野菜不足のほうが怖い」という話を見聞きします。

しかし、そもそも野菜不足でがんになりやすいという話があるとしても、実際問題として、どの野菜を食べればリスクを抑えられるのかと言えば、それは今のところわからないわけです。野菜に限らず、巷で言われる「がんに効く」とされる食べ物は、ほぼ100%、信憑性に欠けるのです。

あるいは、飲酒が200~300msvとか、そんな話もあります。酒は百薬の長ともいわれていますが、やはり飲み過ぎは禁物。

しかし、確かこの数値は毎日3~4合といった「呑ん兵衛」に相当する数値です。私もお酒はたしなみますが、毎日こんなには飲めません。

また、原発事故では、特に子どもの被ばくが問題視されたわけですが、「Q:うちの子は大丈夫でしょうか?」、「A:飲酒のリスクのほうが高い」ではフォローにならないと思います。

似たような話では喫煙もあります。確かに喫煙は、一般的には特に肺がんのリスクを高めると言われていますが、一説には直接(主流煙)よりも何十倍?もリスクが高いと言われている受動喫煙(副流煙)の影響については、実はほとんどわかっていないのです。

そして、野菜不足・飲酒・喫煙等にしても、これらは全て、「習慣」です。野菜不足習慣、飲酒習慣が続けば数百ミリの被ばくに相当するリスクになるかもしれない。

だとすれば、「被ばく習慣」もあるでしょうね。放射線の単位では大きいとはいえない10~20msvといった数値でも、5年10年‥と続けば、当然、200、300と積み上がるわけで、これは結構危険だと思います。そういう意味では、たとえ追加被ばくが1msv/yの環境でも、若い時から浴び続けるとすれば、あながち軽視できないとも考えられます。

被ばくの影響を他の病気のリスクに置き換える。様々な疫学調査などを根拠に、一応そのような見立ては可能なのでしょう。しかし、結局このような話が蔓延してしまうと、「日本人はもっと被ばくしても良い」といった、被ばくのモラルハザードを誘発するおそれがあると思います。

また、野菜不足や飲酒、喫煙等も、実際に国民的な課題としてそれらのリスクを下げる努力がなされているわけで、いわばそのような話を楯にするような論調というのは、個人的にはいかがなものかと思います。

‖ 学術会議はリスク低減を言う前に・そして読売新聞は

そもそも今回の連載は、日本学術会議による医療被ばくのリスク低減の話でした。

私は、専門家やメディアの役割は、有事の際にはなるべく安全側に立ち、リスクの低減を図るように提言なり行動を起こすことにあるのだろうと思っていました。

しかし、原発事故が起きた途端に、先の話にリンクする形で、「実は100msvまでは安全」、「500でも良い」、「毎月200まで」、「CTスキャンによるホルミシス効果」、「235sv/yでも健康上有益」等、様々な放射線安全論が飛び交い、個人的には大変怖い思いがしました。なにしろ、安全を謳う話にはこれだけの開きがあるわけですからw

学術会議の提言は結構なのですが、その前に、まずは原発事故後に蔓延した、極端な放射線安全論を諌めるべきであったと思います。医療被ばくのリスク低減を考えるなら、なぜ専門家と呼ばれる方々や、あるいは彼らを後ろ盾にする形で著名人等が、国民の被ばくを誘発するような行動に走ったのかを検証するのが先だと思います。

個人的には、原発事故で自分たちの職域(アイデンティー)が脅かされるという危機感があったように思っています。理由は職種によって様々でしょうが、平たく言えば「商売上がったりになる」ことを恐れたのだろうと。そのため、それぞれの組織防衛のために、「これだけ浴びても全然平気・むしろ体に良い」などと言い出した。

ついでに言うと、それがかえって、一般の方の放射線に対する恐怖心を必要以上に高める結果になったのではないかと。

日常的には、例えばレントゲン撮影するときでも、被ばくの必要のない部分を鉛のチョッキでガードした上で、頑丈な分厚い扉を閉めるわけです。素人目にも一応専門家は放射線を慎重に扱っていると思うわけですから。それが事故を境に、「実はどうでもいいんですw」みたいな話が出てきたわけです。

放射線安全論を吹聴する方々の思惑はさておき、片方はいくら浴びても安全で、もう片方はCTスキャンのリスクを下げましょうではよくわかりません。リスクを考える上でも、まずは放射線は慎重かつ丁寧に扱うことが大前提でしょう。

そういう意味では、今回の学術会議の提言には、若干名、人選としては不適切と思われる方(PDF)も含まれているようです。

それから読売新聞は、CTスキャンや肥満の話を用いるなどして、国民の被ばく量を緩める方向に誘導するような社説を繰り返し発表してきた手前、いまさら医療被ばくの低減を主張するのはおかしいのです。乗りかかった船というわけで、やはり「医療被ばくの低減は福島の風評被害を助長する」などとして、学術会議を徹底的に批判するべきです。

- おわり -


その他参考資料

主にその1~2

高木学校 受ける?受けない?エックス線CT検査―医療被ばくのリスク
2011 http://bit.ly/2ypqXTE
→新版が2014年にちくま文庫から発売されています

大阪府診療放射線技師会 放射線Q&Aガイドブック
http://archive.is/sAWW8

宮崎県 串間市民病院 自然放射線とは?
http://archive.is/xhTv4

京都大学・原子力安全研究グループ 今中哲二 「“100ミリシーベルト以下は影響ない” は原子力村の新たな神話か?」(岩波「科学」2011年11月号・PDF)
http://bit.ly/2lM67dn

その3

がんを防ごう1 第3部 食卓から変える 「あふれる”特効食”情報」
2015/8/5 http://bit.ly/2zw18VC #北海道新聞

生活習慣のリスク判定 専門家の調査、研究から
2015/8/5 http://bit.ly/2zxyLnV #北海道新聞

上記2点は、本来予定していた参考資料より新しいものを拾いましたので、こちらに差し替えとなりました。

京都大学・原子力安全研究グループ 今中哲二 「『20ミリシーベルト』と幻の安全・安心論」(岩波「科学」2017年7月号・PDF)
http://bit.ly/2hZW56g

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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