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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

【Q&A方式で解説】 日米原子力協定 - 最終章 - その3 

‖ 原発反対派を後ろから撃つ人たち その1 参議院議員・山本太郎

日本はいくら原発をやめたくても、アメリカの圧力、すなわち日米原子力協定によって手足を縛られている。これを破棄しない限り原発や絶対にやめられない。このような主張を広め、一躍反原発のカリスマになったのが、現参議院議員の山本太郎氏です。

山本氏やその周辺の影響を受けた方々は、きっと私にこのような質問を投げかけるはずです。

Q9.日米原子力協定は日本に原発の推進を義務付けているのですか?

Q10.日米原子力協定を根拠に、日本は原発の再稼働や新増設を進めなければならないのですか?

Q11.日米原子力協定のせいで日本は再処理をしなければならないのですか?

Q12.日米原子力協定のせいで原発がやめられない、協定を破棄、もしくは全面改定しない限りは無理ですか?

A.はい。全てデタラメですw

このような話は2013年ころ、現参議院議員の山本太郎氏が選挙期間中に熱心に発信していた「原発の隠された真実(デマw)」です。まあ↑のように日本の原発がやめられない理由はいろいろあって、とにかくその元凶はアメリカにあるのだという話です。

官邸前抗議(山本太郎、三宅洋平、吉良よし子、丸子安子)
2013/07/05 #iwj



山本氏は原発反対派の中でもアイドル、というよりもカルト的な人気があり、これらの「真実」は、未だに支持者の皆さんによって繰り返し宣伝され、それを真に受ける人が後を絶たない。まったくもって困ったものです。

先の困った話(設問)は各論点が少しずつ被っている面もありますが、どれもタネを明かせば以下のような感じになります。冷静に考えれば騙されないで済むわけですが。

Q9.については、その1でお示ししたとおりです。日米原子力協定とは、「原子力の非軍事利用(平和利用)の分野における協力のための協定(条約)」ということになります。平和利用のための相互協力と、その実体は核不拡散の要素が強いわけです。

Q10.については、原子力協定にはそのような条文は一切ありませんし、仮にアメリカの圧力が作用しているとすれば、現状の原発の稼働数はあまりにも少なすぎる。もんじゅも廃炉を決定しましたね。大間原発や六ヶ所再処理工場(何れも青森県)の稼働時期も未だ未定です。

そして原発の再稼働や新増設を強く求めているのは、例えば電力会社(+電事連等の協賛団体)、経団連、日本商工会議所、労働組合といった、国内の利害関係者が中心です。冷静に現実を見渡してみるのが一番かと思います。

Q11.再処理についてはその2補足のとおりです。アメリカは元々日本の再処理には反対で、今もできればやめてほしいと考えている。これこそが真実なのですが、こちらはなにも隠されていたわけでもないです。なにしろ私が知ってるくらいなんですからw

日米原子力協定が日本の原発推進や再処理を義務付けている、この協定のせいで日本は原発がやめられない、だから破棄、あるいは全面改定するしか無い(Q12.)。こんな話は全くのデタラメであるということは、ここでハッキリさせておきたいと思います。

‖ 原発反対派を後ろから撃つ人たち その2 ノンフィクション作家・矢部宏治

日本の原発がやめられない理由は日米原子力協定、すなわちアメリカが元凶であるという論説の担い手としては、矢部宏治氏も外せません。

矢部氏の著作、「日本はなぜ『基地』と『原発』を止められないのか」はマスコミでも好意的に取り上げられた影響でベストセラーとなり、半ば反原発派のバイブルみたいになってます。

矢部氏の著作の影響を受けた方々は、例えば私に以下のような質問をすることでしょう。

Q13.日米原子力協定によって、日本が決められるのは電気料金だけだそうですが?

Q14.日米原子力協定は憲法の上位法なので、司法は原発の是非を判断できない(=統治行為論)って本当ですか?

Q15.矢部氏が「もう笑うしかありません」と断じる、日米原子力協定第十六条三項の「引きつづき効力を有する」というように、このような協定は地球上でほかに存在するものなのですか?

Q16.民主党・野田内閣の2030年代原発ゼロは、日米原子力協定を根拠に潰された?

A.はい。これらも全てデタラメですw

Q13.については、実際に矢部氏の著作を読んでみると、日本が決められるのは電気料金だけ、要は原発の推進・再稼働はすべてアメリカの命令であるというような話が書かれています。

しかし、日米原子力協定(実施取極・附属書を含む)の条文を逐一調べてみても、アメリカによって云々・・みたいなルールがあるとは、私にはそのような解釈を導き出すことはできませんでした。

矢部氏はこちらを「条文を詳しく分析した専門家に言わせると・・」と伝聞調に語るわけですが、その専門家が一体何者であるか、あるいは参考資料等は同書では一切明かされていません。

Q14.については、私の過去の連載記事で詳しく説明させていたとおりです。原理的には蒸気機関・湯沸かし器である原子力発電が高度な政治判断を要する、すなわち統治行為論の対象であるなどという話はまったく当たりません。

Q15.の「引き続き効力を有する」ですが、こちらも過去にネタばらしをしています。

過去に説明したとおりが続いたので、これではちょっと寂しいかなと思い、こちらについては少しだけ触れておきます。

日米原子力協定 第十六条三項

  いかなる理由によるこの協定又はその下での協力の停止又は終了の後においても、第1条、第2条4、第3条から第9条まで、第11条、第12条及び第14条の規定は、適用可能な限り引き続き効力を有する。



こちらで規定されている条文は全て原発の是非とは直接関わりのない、「核不拡散」に関連する話です。もともと平和利用のための相互協力であり、これが終了したからと言って直ちに悪用されても困るわけです。

かといって、この辺りは終了すれば義務も何もないわけですから、条文の内容としては、ある種の紳士協定というか、お願いみたいなものですね。だから「適用可能な限り」なのです。

そして、こんな協定(条文)は地球上他にあるのかと言えば、どこにでも転がっているのが実情ですね。原子力平和利用に関する二国間協定では、日米原子力協定第十六条と同様の条文は必ず見られると言ってもいいです。むしろ無い方が困るのです。詳しくはぜひ過去記事をお読みください。

Q16.ですが、これは同じことの繰り返しですが、日米原子力協定は日本の原発推進を義務付けるような条約ではありません。すなわち、協定を根拠に野田内閣は原発ゼロを断念したという話は全く当たりません。

やはりこちらについても過去に詳しく説明させていただいたとおりです。要は国内要因・ステークホルダーの利害調整に失敗し、原発ゼロと核燃料サイクルを推進するという意味不明な政策では、これは相手が誰であろうと疑問を投げかけてくるのは当然といえます。

矢部氏の場合は山本氏と同様に、「日米原子力協定」が日本の原発ゼロの壁という認識です。

しかし、両者の解釈には明確な違いがあり、山本氏は破棄による救済、矢部氏の場合は協定が終了しても救われないという認識です。感動のラストシーンが少年漫画か青年漫画的か。両者の違いはさておき、どちらも寝言は寝て言えというわけです。

‖ 反対派が陥りやすい「全てはショッカーの仕業」症候群

私からすればデタラメだらけの「日米原子力協定陰謀論」も、実は多くの反対派がこれを「隠された真実」と信じ込み、全てはアメリカの陰謀だと考えている。

例えば、これだけ世論は原発に反対しているのに、安倍総理は涼しい顔をして再稼働を進めている。なるほど、これは日本が対米従属でアメポチだから、全てはアメリカが元凶に違いないと。「さてはショッカー(あるいはゴルゴム)の仕業だな!」という、そこには善と悪しか存在しないという、特撮ヒーロー的な世界観。

これも結局は、前回に述べた、反対派は対米従属史観と相性が良いという問題が影響しているように思います。

このような話が間違っているという話は以前から述べてきたとおりなので、もうしません。何れにしてもこの協定を特定の思想・史観に基づき、最初から「悪魔の協定」であると思いこんで条文を読むからこそ、ことごとく解釈を間違えるのです。

その3(補足)につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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