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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

日米原子力協定の自動延長と迷走する原発反対論の今後について考えてみる(補足) 

‖ それでも腐ったミカンは放り込まれる

前回その4のとおり、現在の脱原発論(運動)の最大の欠点は、議論の俎上で中身の伴わないデタラメ(=腐ったミカン)が蔓延しやすい上に、それらの処分がうまくできていないことにあると結論づけたところです。そのため原発問題は余計に混乱をきたしてしまうのです。

しかし、現実は非情です。今まで溜まり続けた腐ったミカンを処分する前に、また誰かが腐ったミカンを放り込んできて、ますます議論は迷走を深めてしまうのです。

今回の「誰か」は、先日の中国新聞の社説です。

社説 日米原子力協定の延長 核燃サイクルと決別を
2018/1/31 http://archive.is/d5d3v #中国新聞

内容的には酷すぎるというのが率直な感想で、以下に気になった箇所とその理由を述べていきます。日米原子力協定については過去の連載記事でも解説してきましたが、こちらも合わせてお読みいただければ、今回の中国新聞の社説はおかしなところだらけであることは一目瞭然です。

‖ 日米原子力協定とは、事実上の核不拡散条約である

被爆国には核拡散防止の先頭に立つ責務がある。保管施設のプルトニウムを狙うテロ集団などへの警戒も欠かせない。同盟国だからといって米国から核燃料サイクルを例外的に認めてもらう構図自体、おかしな話だ。

 核保有の可能性を巡っては歴代の日本政府は重ねて否定してきたが、最近は一部の国会議員からも肯定論が聞かれる。北朝鮮情勢に関連して、就任前のトランプ米大統領が日本と韓国の核兵器保有を容認するかのような発言をしたのも気掛かりだ



繰り返しになりますが、日米原子力協定(二国間協定)の主旨は、あくまで「核不拡散」です。日米間に限らず、各国で締結されている原子力の平和利用にかんする二国間協定は、国際社会の共通の利益である、核不拡散体制の維持・推進に寄与していることは間違いありません。

そして、協定によって定められる原子力利用は、全て平和利用に限られます。その意味で言えば、その是非はともかく、再処理もまた平和利用の手段の一つとも言えます。

アメリカの一部議員、あるいはトランプ大統領による日韓の核保有容認とも受け取れる発言の存在(ただし、トランプ氏の場合は就任前)は私も承知していますが、彼らは基本的に物を知らないだけです。日本でも与野党を問わず、何かにつけて妙な事を仰る先生(ネットの真実を真に受けて炎上とかw)は少なからず存在します。

それから、日本が保有する、原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウム(日本11トン、英仏預かり分37トン=計48トン)は、必ずしも日本の核武装と直結するものではありません。

いわゆる余剰プルトニウム問題は、一義的にはテロリストなどに核物質を盗まれる(悪用)ことにあります。核兵器用途としては品質に問題のある原子炉級のプルトニウムは、国家安全保障上の計算できる兵器としては利用が困難とはいえ、テロリストにとっては、とりあえず核爆発を起こせば勝ちという意味の違いです。

‖ 協定上、再処理は「権利」であり、当然、「権利を行使する義務」は生じない

「利用目的のないプルトニウムは持たない」ことを日本政府は原則としてきた。核廃絶の機運を高め、あらぬ疑いを持たれないよう、核燃料サイクルと決別するのが筋であろう。

 思考停止や前例踏襲の自動延長ではなく、ルール上認められる半年前の破棄通告を真剣に検討すべきだった。こうした動きが政府になかったのが残念だ。



この社説の一番おかしな箇所はこのあたりだと思います。核燃料サイクルと決別するのが筋という主張には私も同感ですが、次の段落では、決別するために半年前の破棄勧告を検討するべきだった(それが残念だ)と、全く意味不明なことが書かれています。

どうもこの社説の内容は、原発反対派の多くに見られる、「日米原子力協定があるから日本は原発をやめられない」、あるいは「協定が再処理(核燃料サイクル)を義務付けている」という、協定にかんする典型的な誤解が前提になっているようです。

原子力規制委員会 日米原子力協定(1988年度 PDF)
1988 http://bit.ly/2B1n1JU

第五条一項より抜粋

この協定に基づいて移転された核物質及びこの協定に基づいて移転された資材、核物質若しくは設備において使用され又はその使用を通じて生産された特殊核分裂性物質は、両当事国政府が合意する場合には、再処理することができる。



条文のとおり、日本はアメリカ由来の核物質を、「両当事国政府が合意する場合」に再処理が出来る。アメリカとしては「ホントは嫌だけど、やりたければどうぞ(ただし悪用はしないでね)」というスタンスですから、すなわち日本の再処理(核燃料サイクル)事業は、その推進・撤退の判断は国内政策次第ということです。

もちろん、現在の日本の国策としては核燃料サイクルは堅持というわけですが、これはアメリカがどうこうというような問題ではありません。日本には核燃料サイクルを推進する以外の選択肢を実質的に備えていないことが問題(ただし、今後は従来の全量再処理路線を一部変更するという話もありますが)なのです。

しかし、その気になれば核燃料サイクルは日本の判断でいつでもやめられるのに、なぜ協定の破棄を真剣に検討しなければならないのか?ひょっとすると、この社説の執筆者は一杯飲んで原稿を書いたのではないかと、私は真剣に疑っています。

‖ 日米原子力協定の破棄を呼びかける中国新聞こそが無責任

まず日本がこれ以上、プルトニウムをため込まないことだ。日米原子力協定は自動延長しても、半年後には打ち切りを含め方針転換できる。政府が4年前に原発回帰路線を明らかにしたエネルギー基本計画も改定作業に入っている。「核のごみ」処分問題を含め、将来に責任を持つ政策が求められている。



やはりこの社説の執筆者は、協定によって日本は再処理(プルトニウムを溜め続ける)を義務付けられているという前提で原稿を書いているとしか思えません。再処理政策を転換するためには協定の破棄が必要であるという、そんな結論です。

しかし、執筆者は当然新聞記者なので、まさか協定の条文を読んだことがない・理解していないわけもないはず。だとすれば、わざと協定の内容を曲解して、読者をミスリードさせようとしていることになるのでしょうか。‥一体何の目的で?

日米原子力協定は、日本に原発の推進や再処理を義務付けるような理不尽な条約ではなく、協定の主旨(核不拡散)に加え、原発の是非にかかわらず、原子力分野における日米間の協力(脱原発であればバックエンド事業や各種基礎研究等)は今後も不可欠なものであり、少なくともこの協定の破棄は賢明とは言えません。

私から言わせていただくのなら、このようなわけのわからない社説を発表する中国新聞こそが無責任です。

しかし、こんなくだらない社説に惑わされないでくださいと私がいくら主張しても、やはり反対派の皆さんは真に受けて大騒ぎするのでしょうね。それこそが「腐ったミカンの方程式」なのですが。

- おわり -

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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