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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

アメリカの核態勢見直しと河野太郎外相の発言の是非について考えてみる その1 

‖ 核態勢見直し(2018)と河野太郎外相

アメリカ合衆国政府が今月の2日に発表した、「核態勢見直し(NPR)」。これは、今後5~10年程度を目処とした、同国の核戦略の報告書になります。

アメリカ政府の発表に際し、日本政府はいち早く賛同し、国内のマスコミ(読売・産経はともかくとしてw)に野党、反核団体等は両政府を痛烈に批判。報告書が公表されてから、私が見た限りでは大体このような流れになっています。

<米核態勢見直し>日本政府「高く評価」 米国依存鮮明に
2018/2/3 http://archive.is/ZrVqk #毎日新聞

一部抜粋

日本政府は、トランプ米政権の核戦略指針「核態勢見直し(NPR)」について、抑止力を強化するものと歓迎する意向を示した。北朝鮮の核・ミサイル問題を背景に、米国の「核の傘」に依存する姿勢が一層鮮明になった。日本は唯一の戦争被爆国として核廃絶を目指してきたが、NPRが核軍縮の流れに逆行しているのは明らかで、野党は、NPRとそれを評価する日本政府への批判を強めている。



そして、例の河野太郎外相による、外務大臣談話、国会質疑等での「高く評価する」、「評価しない理由がない」という発言。これらが影響したせいか、批判の矛先は特に河野大臣に向けられているようです。私も大臣の発言は、あまりにも単刀直入で、各方面への配慮に欠くという意味では批判的に見ていますが。

‖ 新旧のNPRを読み比べてみる

NPRについては、以前話題になった「核兵器の先制不使用」について、過去記事で取り上げたことがあります。そのため、2010年度版の内容については一応理解しているつもりでいます。

それではメディア等が酷評する、今回の(2018年度版)内容はどんなものなのか。核なき世界に逆行する、核戦争のハードルを下げる、軍拡を誘発するとか、色々報じられていますが、果たしてそのような危険性を内包したものなのか?

私としても河野大臣の国会答弁は納得がいかない部分もありますし、そちらも含めて今回の件についてブログで記事にしてみたいと思い、ここ数日ほど、新旧のNPRを読み比べていたところです。

長崎大学核廃絶研究センター 核態勢見直し(NPR)報告書 要約部分全訳 ※2010年度版
2010/4 http://archive.fo/YWdwZ

米国国防長官府 核態勢の検討(要約 日本語訳 PDF) ※2018年度版
2018/2 http://bit.ly/2sPTTpM

そのようなわけで、以下、両者を比較しながら、感想をいくつか述べるような感じで行きたいと思います。なお、NPRについては、2018年度版を「新版」、2010年度版を「旧版」と表記させていただきます。

‖ 新旧でそれほど違いがあるようには・・

いきなり結論になりますが、実際に新版・旧版を読み比べてみると、全体的な印象としては、そんなに変わったところは無いような気がします。

新版の問題点としてよく指摘されているのが、例えば「核兵器の小型化(低出力核兵器)」、「SLCM(=核搭載の水上発射巡航ミサイル、2013年に退役の核トマホークの代わり?)」の開発を進めるという話(ただしその時期は不明)です。たしかにこのような方針は新版で新たに明らかになったものであり、誰が見ても物騒なネタだと思います。

新版の11ページを見てみますと、たしかにそのようなことが書かれています。

いま、低出力オプションをも含めるよう柔軟な米国の核オプションを拡大することは、地域侵略に対する信ぴょう性のある抑止力の維持にとって重要である。


さらに、米国は近いうちに低出力オプションを提供するために少数の既存のSLBM弾頭を修正し、長期的には近代的に核装備した海上発射巡航ミサイル(SLCM)を追求する。



しかし、これらのネタは、実は旧版で既に内包されていたとも読み取れるのです。

事実、核兵器が存在する限り、合衆国は安全、安心で、効果的な核戦力を維持しつづけるであろう。これら核戦力は潜在的敵国を抑止し、世界中の同盟国及びパートナーに改めて安心を提供するための不可欠な役割を引き続き果たすであろう。



旧版に見られる、「安全、安心で、効果的な核戦力」が意味するところは、アメリカとしては必ずしも硬直的な核戦略は採用せず、情勢の変化によっては柔軟に対応すると解するのが妥当だと思います。そのような意味では、低出力核兵器やSLCM(旧版では先の核トマホークの退役を表明)等の開発も、将来的には否定できないということです。

それから新版については、幾つかのメディアにより、「新たにアメリカは通常兵器への反撃に核攻撃を検討した」という指摘があります。

野党「非常に危険」と追及 米の核使用緩和 政府「高く評価」
2018/2/6 http://archive.is/Hb3jZ #東京新聞

NPRは、通常兵器に対する反撃にも核兵器の使用を排除しない方針を追加し、爆発力を抑えた小型核弾頭などの開発にも道を開くなど、核兵器の役割拡大を明確化。オバマ前政権が掲げた「核なき世界」の方針を転換する。



こちらについては、事実誤認であると私は見ています。

核兵器の使用については、旧版に以下のような記述があります。

合衆国は現段階においては、核攻撃の抑止を核兵器の唯一の目的とするという普遍的な政策を採用する用意はない。しかし、合衆国は、このような政策を安全に採用できるような条件を確立するために努力するであろう。



アメリカは伝統的に、核兵器の先制不使用政策(核兵器の最初の使用者にはならない)を採用しないわけで、これは今のところ変化の兆しはありません。すなわち、旧版においても通常兵器への反撃として核攻撃は可能であり、特段、新版になって変更したというような話ではありません。

そのようなわけで、マスコミの報道と同様の懸念を示された逢坂誠二(立憲民主党)先生のご指摘も当たらないと考えますし、この件に関しては、政府側の答弁は妥当であると言わざるをえません。

‖ 新版は逸脱ではなく、マイナーチェンジに近い印象

先程のオバマ大統領の「核なき世界」というスローガンに代表されるように、「オバマ=いい人」、「トランプ=悪い人」という前提に立てば、人によっては、旧版はなにやら良いことばかりが書かれているというようなイメージを抱いてしまうかもしれません。

しかしながら、そのような先入観を排して改めて読み直してみますと、そこには様々な「抜け道」が用意(初っ端から核なき世界は自らの生きている間には達成できないと書いてますw)されており、核大国としてのしたたかさが垣間見えてきます。もちろん、評価できる部分も多いと考えますが。

新旧NPRを読み比べた上で最近の一連の報道を見てみますと、どうにも騒ぎすぎという気もしてきます。資料を比較した限りにおいては、特段、新版が従来の核政策を逸脱するような内容とは思えないからです。旧版をベースに、国際情勢の変化に対応するため、若干の変更を加えたというのが私の感想です。

断っておきますが、新旧どちらにしても「核戦略」なのですから、私としてはどちらも良い話だとは全く考えていないのです。

その2につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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