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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

冷やし狸庵的・核兵器禁止条約懐疑論 その2 

今回は第一条を見てみます。

‖ 第一条は国家安全保障の否定条項に近い

実際に核兵器禁止条約の中身を詳しく検証してみると、第一条からその実現可能性を疑われるような条文が並んでいます。

核兵器禁止条約の日本語訳全文 署名50カ国
2017年9月21日 http://archive.is/y6RGU #朝日新聞

第1条(禁止項目)
 一、締約国はいかなる状況においても次のことを実施しない。
 (a)核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発、実験、製造、生産、あるいは獲得、保有、貯蔵。
 (b)直接、間接を問わず核兵器およびその他の核爆発装置の移譲、あるいはそうした兵器の管理権限の移譲。
 (c)直接、間接を問わず、核兵器あるいはその他の核爆発装置、もしくはそれらの管理権限の移譲受け入れ。
 (d)核兵器もしくはその他の核爆発装置の使用、あるいは使用をちらつかせての威嚇。
 (e)本条約で締約国に禁じている活動に関与するため、誰かを支援、奨励、勧誘すること。
 (f)本条約で締約国に禁じている活動に関与するため、誰かに支援を要請する、あるいは受け入れること。
 (g)領内あるいは管轄・支配が及ぶ場所において、核兵器やその他の核爆発装置の配備、導入、展開の容認。



これら(a)から(g)については、表向きは核兵器に関連する禁止事項が列挙(2018/3/23 こちらに関して末尾に追記あり)されています。一つ一つを読んでみると、確かに良いことばかりです。皮肉ではなくて本当にw

しかし、これらは従来の国家安全保障の議論にも多大な影響を与える可能性が高く、やはり核保有国、あるいは「核の傘」の提供を受ける非核保有国にとっては、まず受け入れられる余地は無いと思われます。

これらの条文について、身近な例として、アメリカと同盟国の関係で見てみます。

まず、(a)および(d)によって、アメリカは核保有国としての地位を放棄する。したがって、最近のトランプ大統領の私のほうが大きいみたいな話はもってのほかです。こちらは条約以前の問題として、別の意味で不適切な発言にも映りますがw

そして(b)から(g)で、アメリカはNATO(欧州)、日本、韓国等、同盟国への核兵器を含めた拡大抑止の提供や、ニュークリア・シェアリング、核持ち込み等の要素(当然、ここにはdの要素も含まれる)が完全に否定されます。もちろん、逆に受け入れる側から見れば、それらの受領が全て期待できなくなります。

ここで、「核兵器の禁止なんだから当たり前じゃないか!」というツッコミもあると思いますし、私も同意見ですw

しかし、これは以前の連載でも述べたことですが、たとえ日本のように「非核」を国是とした国家であっても、その安全保障政策には、以前より、自衛隊はもとより、日米安全保障条約と、それらのプラスの要素としての核抑止力が組み込まれており、大前提となっている。そのような厳然たる事実があります。

日本にとって、具体的にどの国が脅威であるかは言うまでもないでしょう。仮に現状の私達を取り巻く国際情勢を無視した上で、「唯一の被爆国だから」という理由のみで、単独で核兵器禁止条約を署名・批准する場合。これでは日本の安全保障を一方的に損ねるだけであり、政府および世論としても到底受け入れられないでしょう。

‖ アメリカが核の傘を差さなければ、おそらく(アメリカが)刺される

核軍縮という議論になると、どうしてもその方向性は核保有国に焦点が集まる傾向があります。しかし、軍縮を含めた核の取り扱いについては、既に核保有国の一存では決められない時代に入って久しいと考えます。

外務省 わが国の外交政策大綱 外交政策企画委員会(PDF)
1969/9/25 https://goo.gl/n1I7XV

一部抜粋(核兵器に関してはP67)

(9) 核兵器については、NPTに参加すると否に関わらず、当面核兵器は保有しない政策を取るが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともにこれに対する掣肘(=せいちゅう、干渉の意味)をうけないよう配慮する。又核兵器一般についての政策は国際政治・経済的な利害得失の計算に基づくものであるとの趣旨を国民に啓発することとし、将来万一の場合における戦術核持ち込みに際し無用の国内的混乱を避けるように配慮する。



国会会議録検索システム 第65回国会 衆議院内閣委員会議事録第26号
1971/5/15 http://goo.gl/NWvOTC

一部抜粋

○鈴切委員 いま現在はアメリカの核の中に入って、日米安全保障条約のもとに、もし核攻撃があるならばそれはアメリカの核によって対処をしてもらうということでありますが、・・日米安保条約がなくなった場合、これは裏を返せば核武装をしなければならないんじゃないかというふうに疑われる点があるわけでありますが、そういう点についてはどうでしょうか。
○中曽根国務大臣 現在の国際情勢が続く限り、アメリカの核抑止力がまた機能している限り、日本は核武装をする必要はない、こういうことを従来から申し上げているとおりで、そういう情勢がずっと続くだろうと私は思っております。



日本は唯一の被爆国であり、当然核兵器は持たないが、その代わり、アメリカの核戦力を徹底的に利用する。しかし、その前提が崩れればどうなるかわからない。これが従来から続く、日本の非核政策の基本姿勢でしょう。

かといって、これは日本に限らず、アメリカの核戦力の提供を前提としている国家に共通の考え方とも言えると思います。

確かに核兵器は保有しないが、実質的にはそれと同じような体制を取る。「大人の世界は汚い!」と言われれば、確かにそのとおりwでも、世の中何事も竹を割ったようにスパッと行くものでもないのでしょう。

つい先日、大田昌克氏の「偽装の被爆国 核を捨てられない日本」を読んだところですが、同書の一節に、私が以前から考えていた、かと言って、うまく表現できないことが簡潔に述べられており、まさに我が意を得たりという気持ちになりました。

 オバマ政権が核の先制不使用に踏み切れば、米核戦略の一大転換だ。米軍の運用する核戦力は何も米国一国を守るための道具ではない。「核の傘」という言葉がまさに表現するように、自分より力の弱い者に「傘」を差しかけてきた。そうすることで同盟国の安全保障を担保し、西側諸国の結束を確かなものにしてきたのだ。そしてそれは、冷戦から今日に至るまで、米国を同盟の盟主たらしめる政治力の源泉として作用してきた。
 米国の核戦力は同盟国にしてみれば、単に米国だけの財産ではなく、いわば「公共財」なのだ。



日本の話で言えば、オバマ前大統領の「核なき世界」というスローガンに対して、自民党・民主党政権において当初は懸念を示していました。

オバマ政権のレガシー(政治的な遺産)とも称された、核兵器の先制不使用についても、同盟国である日本や韓国、NATO諸国が半ば共闘する形で、取り下げとなった経緯があります。

一般論で言えば、圧倒的な力を持つはずの、「傘を差す側」が強いというイメージですが、実態としては「傘を差される側」も相当したたかに映ります。公共財としての核。アメリカの核は自国のためだけに存在するのではない、お前たちは傘を提供する義務があるのだと。

核の傘の受領国は、ある意味でこれを既得権と位置づけている。それが脅かされる事態には、単独ないし、時には結託して、提供国に徹底的に抗議する。これは、反核・反原発論にありがちな対米従属史観では説明がつかない現実です。今回の核兵器禁止条約も、実は最大の抵抗勢力は、「差される側」にあるのかも知れません。

このような状況で、仮に、何らかの理由でアメリカが一方的に傘の提供をやめる、あるいは緩めるような政策に打って出た場合。はたして、今まで核兵器を持たずして核抑止力を自国の安全保障政策に組み込んできた、「差される側」はどのような行動に出るのか?私としてはとても悲観的に考えています。

先の太田氏の著作によれば、就任以前から続く、トランプ大統領による執拗なNATO批判の影響で、例えばドイツなどでは、アメリカが核の傘の提供をやめるのなら、欧州の核戦力を強化(ドイツの自主核武装ではなく、フランスを念頭に置いた財政支援)するべきであるというような議論もあるようです。

‖ 急進的な核廃絶論がもたらす核拡散のリスク

核兵器禁止条約に対する懐疑論として、例えば核保有国と非核保有国の分断を助長するという意見が多く見られます。一口に「分断」と言っても、その論じられ方は多々あると思いますが、私もこのような意見に近い考えです。

私の場合は、条約の署名・批准を巡る議論が熱を帯びることによって、核の傘の提供・受領国間、もしくは核保有国、非核保有国同士の相互不信を助長し、かえって核兵器の拡散に繋がるリスクが高まる(2018/3/27 末尾に追記あり)ことを懸念しています。

大変悩ましい話ではありますが、「核の傘」は、受領国の核武装を抑止しているという側面は否定出来ないものと考えます。

なお、先の、第一条の一(a)については、今回の論点とは異なり、前文の内容と大いに矛盾する要素があると考えています。こちらについては、連載の最後に予定している前文の論点において詳しく述べていきたいと思います。

その3につづく

2018/3/23 追記その1

こちらの禁止事項を見る限り、例えば核実験のコンピュータ・シミュレーションは規制の対象とはならないように思います。

もちろん、いくら禁止項目を列挙したところで、秘密裏に核兵器が開発されるリスクは常に付きまとうわけですが。

2018/3/27 追記その2

あるいは核兵器が全廃されるとしても、その穴埋めとして、各国がより強力な通常兵器の開発にシフトする可能性、軍拡競争に発展するリスクが高まると考えます。

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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