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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

冷やし狸庵的・核兵器禁止条約懐疑論 その4 

今回は第六、七、十五、十七条について見てみます。

‖ 核実験等の補償・条約履行にかんするコストの問題

第六条第一、第二項より抜粋

▽第6条(被害者支援と環境改善)
 一、締約各国は、自国の管轄下で核兵器の使用や実験によって悪影響を受けた者について、適用可能な国際人道法および国際人権法に従って、医療やリハビリテーション、心理療法を含め、差別することなく、年齢や性別に適した支援を提供し、これらの者が社会的、経済的に孤立しないようにする。
 二、締約各国は管轄・管理下の地域が核兵器や他の核爆発装置の実験や使用に関連する活動の結果として非常に汚染された場合、環境改善に向けて必要かつ適当な措置をとる。



第七条第六項より抜粋

▽第7条(国際協力と支援)
六、国際法でのその他の責務や義務にかかわりなく、核兵器やその他の核爆発装置を使用、実験した締約国は、被害者の支援と環境改善の目的のため、被害に遭った締約国に十分な支援を提供する責任を有する。



核兵器禁止条約は、その名のとおり、主たる目的は核兵器の禁止、ということになります。しかし、同条約は興味深いことに、核兵器の使用、あるいは核実験等の被害を受けた方々への補償・原状回復(被害者救済)を義務付ける規定があります。

核兵器の使用による被害者という意味では、もちろん1945年の広島長崎。あるいはそれに前後する形での、地上・地下を含む、核保有国内・植民地(旧を含む)、北極圏、太平洋等で行われた核実験が挙げられます。

今日までの核兵器による直接・間接的な被害者数は、おそらく数百万人規模では到底足りず、汚染された地域も含め、その補償・原状回復等については十分とは言えない状態が継続しています。放射能は長期間に渡って人体及び環境に影響を与えるため、たとえ過去の出来事であっても、その被害・リスクも継続するという問題があります。

核実験を含めた核兵器の使用による、人体及び環境への悪影響は今日に至っても継続中であり、加害者(核兵器の使用国)による積極的かつ十分な補償は当然行われるべきと考えます。

しかし、この問題を条約の規定に組み込むことは、その目的とは若干異なるのではないかと考えます。

本条約はその2でも述べたとおり、第一条から、特に核保有国にとっては直ちには受け入れがたい内容となっています。その上、核兵器の使用にかんする補償の義務を負うとなると、核保有国の条約加盟へのハードルが一層高くなるものと考えます。核兵器の禁止と使用による補償については、不可分の議論を前提とすることには疑問を感じます。

第七条第一~第四項より抜粋

▽第7条(国際協力と支援)
 一、締約各国は本条約の履行を促進するため、他の締約国と協力する。
 二、本条約の義務を履行するに当たり、締約各国は他の締約国から、それが実行可能なら支援を求め、受け取る権利がある。
 三、それが可能な締約国は、本条約の履行促進のため、核兵器の使用や実験で悪影響を受けた締約国に技術的、物質的、財政的な支援を与える。
 四、それが可能な締約国は核兵器その他の爆発装置の使用と実験に伴う被害者に対する支援を与える。



こちらは先の補償問題、あるいは前回の核兵器の解体。このあたりの費用負担にかんする条文になります。

これらの問題について、例えば第一・第二項、「本条約の履行を促進するため、他の締約国と協力する」、「義務を履行するにあたり・・支援を求め、受け取る権利がある」とすれば、解決のために必要なコストの総額と、誰がどのくらい負担するのか、支援(協力)を求めて受け取るにしても、その割当・配分が大きな課題となります。

‖ 条約の発効要件にかんする問題

第十五条第一、第二項より抜粋

▽第15条(発効)
 一、本条約は50カ国が批准、受諾、承認、加盟の文書を寄託してから90日後に発効する。
 二、50カ国の寄託が終わった後に批准、受諾、承認、加盟の文書を寄託した国については、その国の寄託から90日後に本条約が発効する。



一口に条約と言っても、その発効要件は画一的ではなく、それぞれ異なるのだろうと思います。そして、核兵器禁止条約については、それは50カ国が批准(条約の内容に従う)することであるとされています。

しかし、条約の加盟については数の要素もたしかに重要ではありますが、やはり中身が伴っていなければ意味を成しません。核兵器にかんする条約であれば、既存の核保有国、あるいは潜在的な核兵器の開発能力を有する国の参加が前提となるはずです。

例えば、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年に国連で採択)においては、第十四条で効力の発生要件が定められており、別途附属書で指定される全ての国の参加が前提(つまり、未だ要件を満たしていない)となっています。

しかし、核兵器禁止条約の場合は、上記のとおり、単に「50カ国」と表記されているだけです。これでは核兵器を持たない、あるいはそれ以前に原子力の技術をほとんど有していないような国々が参加することでも要件を満たすことに(現状ではその可能性が極めて高い)なり、そのような条約の実効性には疑問を持たざるを得なくなります。

核兵器の禁止、解体・廃棄、不可逆的な検証作業、あるいは今回のような補償問題、後述する平和利用の推進(私は反対なのですがw)。これらの課題への取り組みに際し、やはり核保有国とその同盟国の協力が不可欠です。

‖ 脱退条項・密かに核開発を進め、頃合いを見て合法的に脱退可能?

第十七条第一、第二項より抜粋

▽第17条(期間と脱退)
 一、本条約は無期限。
 二、締約各国は本条約に関連した事項が最高度の国益を損なうような特別の事態が発生したと判断した場合、国家主権を行使しながら、本条約脱退の権利を有する。寄託者に対し脱退を通告する。上記の通告には最高度の国益が脅かされると見なす特別な事態に関する声明を含める。



第十七条は脱退にかんする規定になります。

世の中に脱退できない条約は存在しません。しかし、こと核兵器を禁止する条約から脱退するということは、これは一体何を意味するのか?これはどう考えても核武装以外にはないだろうと。

実は、核兵器禁止条約の脱退規定とほとんど同じ内容の条文が、NPT(核不拡散条約)の第十条に記載されています。

日本原子力研究開発機構 核兵器の不拡散に関する条約(NPT)
1970 http://bit.ly/2mOgFc2 #jaea

第十条第一項より抜粋

1 各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。



この規定に合致するのが、昨今の核問題の中心となっている北朝鮮です。

北朝鮮の核開発は、その源流は1960年代から始まり、70年代後半辺りから、アメリカの偵察衛星等で具体化の兆しが発覚。そして、ソ連(ロシア)に促される形で1985年にNPTに加盟。しかし、その後も疑惑は払拭されず、査察の受け入れ等で軋れきが生じ、まさに上記の第十条を根拠に、1993年と2003年、二度に渡り脱退を表明しています。

そして、核兵器禁止条約においても、まったく同じ内容の規定がある。とすれば、禁止条約の枠内において、密かに核兵器を開発・秘匿し、査察等の問題でこじれれば、「疑惑国」は、最高度の国益が脅かされたとして、合法的に脱退することも可能でしょう。

そもそも核兵器を禁止しても、加盟国はそれを未来永劫守りとおすことが出来るのか、途中で抜け駆けは起きないのかという疑念は尽きません。

仮に核兵器が存在しないはずの世界が実現したとして、そこで、ふいに核兵器を保有する国家が単独、あるいは複数出現した場合。国際社会はそれにどのように対峙することになるのでしょうか。

これまで条文についていろいろと検証してきましたが、いよいよ次回からが本題となる、「前文」についての話を進めていくことにします。

その5につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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