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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

冷やし狸庵的・核兵器禁止条約懐疑論 その5 

条文については前回で終了ということで、その1で告知したとおり、今回は前文について検証してみます。

‖ 「ヒバクシャ」は核兵器の被害者だけに限定されるのか?

前文上段より抜粋

本条約の締約国は、国連憲章の目的と原則の実現に貢献することを決意する。
 核兵器の使用によって引き起こされる壊滅的な人道上の結末を深く懸念し、そのような兵器全廃の重大な必要性を認識し、廃絶こそがいかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である。
 偶発や誤算あるいは意図に基づく核兵器の爆発を含め、核兵器が存在し続けることで生じる危険性に留意する。これらの危険性は全人類の安全保障に関わり、全ての国が核兵器の使用防止に向けた責任を共有していることを強調する。
 核兵器の壊滅的な結果には十分に対処できない上、国境を越え、人類の生存や環境、社会経済の開発、地球規模の経済、食糧安全保障および現在と将来世代の健康に対する深刻な関連性を示し、ならびに電離放射線の結果を含めた、特に母体や少女に対する悪影響を認識する。
 核軍縮ならびに核兵器なき世界の実現および維持の緊急性に対する倫理的責務を認識し、これは国家および集団的な安全保障の利益にかなう最高次元での地球規模の公共の利益である。
 核兵器の使用による犠牲者(ヒバクシャ)ならびに核兵器の実験による被害者にもたらされた受け入れがたい苦痛と被害を心に留める。



こちら、やや長めの引用になりますが、要約すると、とにかく核兵器の使用は悲惨だから絶対にやめましょうという内容です。

もちろん、私もこのような主張には全面的に同意するものであり、たしかに、核兵器、すなわち「原子力の軍事利用」については絶対に否定されるべきだと思います。

しかし、こちらについては、どうにも足りない要素があるのではないか?とも考えます。

やはり当ブログとしては原発問題は欠かせないというわけで、ここに原発、すなわち「原子力の平和利用」にかんするリスクが述べられていないことには強い違和感を感じます。

例えば、先の引用文を、「核兵器」を「原発」に置き換えて読み直してみると、これは全く同じ意味を持った文章として理解することが出来ると思います。

スリーマイル、チェルノブイリ、そして福島。何れも軽微な事故であったことが人類にとっては幸運でしたが、原発がもたらす壊滅的な人道上の結末、(原発が)存在し続けることで生じる危険性、国境を超えた地球規模の懸念。すなわち「ヒバクシャ」は、核兵器、原子力の軍事利用の被害者に限定されるものではないはずです。

‖ 原子力の軍事利用と平和利用

私は2011年の原発事故からこの問題に興味を持ち、趣味として勉強を続けることになって今日に至ります。

それまでは原発の知識なんて全く無くて、当初は、なぜ電源が止まると危険なのかがよくわからなかった。事故から数日経った後のテレビの特番で、仮に止まっても冷やせばなんとかなる(止める・冷やす・閉じ込める)と、池上彰氏もそう仰っていたように思います。実際にはその時点で原子炉の底に穴が空いていたらしいのですがw

あるいは、福井県の「敦賀(つるが)原発」の読み方を「・・きょうが?」なんて調べて、答えを知って赤っ恥wそこで「ああ、高校野球の!」とw鹿児島県の川内(せんだい)原発を、「かわうち」と読んでひんしゅくを買った経産大臣がいましたが、私も人のことは言えません。

しかし、そんな私にとっての脱原発入門、講師に相当するのが原子力資料情報室であり、必然的に高木(仁三郎)先生の著作に行き着いたという意味では、これはある意味で運が良かったと思います。

ここで学んだことは、単に原発のリスク、被曝がどうこうというよりも、原子力の平和利用と軍事利用は表裏一体(コインの裏表)で、平和だから良いというものでもないということでした。たしかに、どちらも同じ核物質を使っていることもあります。厳密には仕様は異なるとはいえ、核物質の爆発(悪用)、放射能汚染等の重大性は同じです。

その意味では、私は核兵器・原子力の軍事利用については、平和利用の原発問題からの視点で、この問題を考えているということになります。

‖ 元来、「反核」とは原子力の軍事利用・核戦争のみに反対だった

先ほども述べたとおり、私は本当に物を知らないので、原発の勉強を進めていくうちに、今度は「同じ核なんだから、きっと反核団体は昔から原発に反対だった違いない」と、勝手にそう思い込んでいた時期がありました。

しかし、日本を含めた「反核」の歴史を調べてみると、実はそうではないのですね。

反核論者にとっての原子力は、元来良いものであるという位置づけで、悪いことに使われることが問題と考えている。そして、「原子力-軍事利用=平和利用」という、平和利用の方程式。これは良いことなので、端的に言えば原発は肯定される。すなわち、反核=反核兵器・原発推進と定義して差し支えないでしょう。

ここであえて暴言を言いますと、反核論者は核戦争さえ起きなければ良いと考えている節があると思います。例えば、軍事利用の「死の灰」は問題とするが、平和利用のそれは、平和なので全然平気。あるいは通常兵器が用いられる戦争は、当然、核戦争ではないので問題なし。

ここで、「反核団体でも原発に憂慮してきたところもある」、「別に核戦争以外は無関心というわけでもないだろう」という反論もあるでしょうし、もちろん私も承知しています。しかしここでは、反核の定義をより明確に説明するための暴言ということでご容赦いただきたいのです。

しかし、従来の反核団体、あるいは反核の視点に立脚するジャーナリスト等は、ライフワークとしている核兵器の脅威に目を向ける一方で、平和利用のリスクに対する認識が不足していたことは明らかです。

日本記者クラブ シリーズ企画「3.11大震災」   田中煕巳(てるみ) 日本被団協事務局長
2011/8/23 https://archive.is/JacMS

一部抜粋

日本被団協は1956年、結成宣言で「破壊と死滅の方向に行くおそれのある原子力を決定的に人類の幸福と繁栄との方向に向かわせるということこそが、私たちの生きる限りの唯一の願いです」と原子力の平和利用を支持した。その後も「自主・民主・公開」の平和利用基本三原則を守り、安全対策を求める立場を維持した。
反原発を訴えなかった理由について、田中さんは「核兵器廃絶と原爆被害者への国家補償に全力を尽くしてきた。原発反対を唱えて力を分散しないように、との思いもあった。原子力平和利用への期待感もあった。原発産業で働く被爆者もいたのでその生活にも配慮した。



太田昌克 「核の今」がわかる本(講談社α新書)
2011/7/20 https://bit.ly/2Gm8Jd3

おわりにより一部抜粋

 本書の土台となっている共同通信の連載企画「核なき世界-人類の岐路」の取材を二年前に開始した時、こんな形でこの重大な問いに向き合うなどとは思ってもみなかった。私自身、全世界を震撼させる原発事故がよもや日本で起きるとは思っておらず、そうした意味では「原子力村」の専門家同様、今回の事故は「想定外」だった。先見の甘さと洞察の弱さを猛省するほかない。

・・

 しかし「フクシマの核危機」は、本書が「解」を探求してきた問いの中にある「核のパワー」が決して核兵器に限定されるものではなく、民生利用を体現する原子力発電をも意味することを、あらためて、そして今さらながらに痛感させてくれた。



元来、平和利用を是としてきた日本の反核論は、福島原発で事故が起きたからこそ、現実に目を向けざるを得なくなった。そんなところでしょう。

私は今後も、彼らから「核」について学ばせていただく機会は多いと考えており、あまり大きな事は言えません。所詮、敦賀が読めなかった分際ですwしかし、なぜ、私などよりもはるかに知識・経験な豊富な方々が、「想定外」に動揺する結果となったのか。

余談になりますが、特に日本の反核運動では、「旧ソ連や中国の核実験・保有の是非」を巡って一大論争になった時期もあり、そもそも、核兵器に反対するという行動自体に紆余曲折を経て今日に至っています。すなわち、日本の反核運動は、軍事利用と平和利用、双方で矛盾を抱えてきたということになります。

そのような意味では、私はたしかに核兵器には反対ですが、いわゆる反核論には、尊敬と不信の念という矛盾する心境で、一定の距離を置きながら接しているという感じです。

‖ 核兵器禁止条約の主旨は、あくまで「反核兵器」である

そして、冒頭の前文の話に立ち返ると、そこには核兵器・軍事利用に対する敵意と否定のみが語られており、やはりその他の事情は考慮されていない内容になっている。とはいえ、先ほどの通常兵器の話で言えば、前文では国連憲章について触れられているあたり、さすがに核戦争以外に全く興味が無いというわけでもないのでしょうが。

核兵器も原発も、核物質の脅威という共通のリスクがある。その意味では原子力の平和利用と軍事利用は表裏一体とも言えますが、これでは両者の関係の説明としては不足している部分があります。それは、事故のリスクとは別に、平和利用に専念すること自体に内包される、逃れようのない問題です。

その6につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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