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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

冷やし狸庵的・核兵器禁止条約懐疑論 その6 

いよいよ、私が条約について最も憂慮する、かつ最大の矛盾を抱える箇所についての検証になります。

‖ 核兵器禁止条約は、原発を推進する権利を認めている

前文下段より抜粋

本条約のいかなる内容も、締約諸国が一切の差別なく平和目的での核エネルギーの研究と生産、使用を進めるという譲れない権利に悪影響を及ぼすとは解釈されないことを強調する。



核兵器禁止条約では、このように、一切の差別のない、原子力の平和利用の推進が、譲れない権利であることが強調されています。

原子力の平和利用とは、すなわち、軍事利用以外の全てということになるので、これは当然、原発も含まれます。平和利用用途の中でも、原発は圧倒的なシェアを占めることは言うまでもありません。

もちろん、権利があるからと言って、例えば条約の加盟国は、もれなく原発を推進(権利を行使)しなければならないとか、そのような意味では全くありませんが。

こちらは、その4の脱退条項の話題とも通じるのですが、核兵器禁止条約の「譲れない権利」についても、NPTにおいて、ほとんど同じ内容の条文が見られます。

日本原子力研究開発機構 核兵器の不拡散に関する条約(NPT)
1970 http://bit.ly/2mOgFc2 #jaea

第四条第一、第二項より抜粋

1 この条約のいかなる規定も、無差別にかつ第一条及び第二条の規定に従って平和的目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならない。

2 すべての締約国は、原子力の平和的利用のため設備、資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、また、その交換に参加する権利を有する。



既にNPT上で認められている、平和利用の権利(2018/3/27 末尾に「追記その1」あり)。核兵器禁止条約の目的が核兵器の廃絶であれば、わざわざここで、「権利に悪影響を及ぼすとは解釈されないことを強調する」、と念を押す必要もないように思えてきます。

‖ 「核のアパルトヘイト」とは、二通りの意味を持つ

核兵器禁止条約は、NPTが抱える矛盾、いわゆる「核のアパルトヘイト(人種隔離政策)」を厳しく批判する意味も含まれています。

確かにNPTは、米・露・英・仏・中、正式な核兵器国と、非核兵器国という区分けがあり、後者には絶対に核兵器を持たせない、そして前者は後から軍縮に努力(いつゼロにするかは不明w)するという、かなりズルい条約です。これは裏を返せば、軍事利用・核保有を目指す国家から見ると差別的であるとも言えます。もちろん、私は遠慮しますけどw

核のアパルトヘイトについてはこのような理解が一般的に思います。しかしこれでは、章題の「二通り」の意味を成しません。

実はこれにはもう一つの意味があり、それは「平和利用」もまた差別的であると、特に原子力技術の導入を希望する途上国からは、そのような不満が以前から見られます。

‖ 世界最大の「原子力ムラ」とは

しかし、この場合の「途上国」については、その定義はちょっと難しいです。一応、経済的に発展途上であり、かつ原子力技術はほとんど手付かずの状態。そのうえで、国家の発展には原子力技術の導入は欠かせないと考えている国々。大まかに言えば、今回の核兵器禁止条約に賛同した国の全てと言っても差し支えないと思います。

原発事故後に定着した「原子力ムラ」ですが、これは日本であれば経産省や電事連、国際的な視野で言えばアメリカやフランス、ロシア等を連想します。しかし、これらは何れも、既に相当な原子力技術を保有する、原子力先進国です。これら少数の事例をもって「原子力ムラ」と理解することは、いささか偏り過ぎではないかと思うのです。

つまり、本当の原子力ムラとは、先の途上国なのです。潜在的な数の上ではこちらのほうが圧倒的に多数派です。ここまでのスケールになると、もはや「ムラ」ではなく、「連合」や「連盟」のほうが適切かもしれませんがw

原子力技術を希望する途上国は、NPTに規定されている、核兵器を持たない見返りとしての平和利用の推進の権利について、実態としては全く不十分であると考えている。原発であれば、限られた先進国がその技術を独占し、途上国にはその知見がなかなかもたらされないことに、「平和利用のアパルトヘイト」という感情を抱いている。

そして途上国は、平和利用としての原子力利用を、極力、先進国の干渉を受けない形で推進したいという思惑も根強いようです。先進国が原発(技術)を提供しても、途上国に規制をかけてがんじがらめに・・みたいな推進ではおことわりであると。

太田昌克 「核の今」がわかる本(講談社α新書)
2011/7/20 https://bit.ly/2Gm8Jd3

一部抜粋

 核燃料バンクに反対する途上国

 「核の番人」と称される国際原子力機関(IAEA)。二〇一〇年三月の定例理事会(日米など三十五カ国)は、イラン核問題への対応を主な議題にウィーンの本部で始まった。・・
 だが翌日、テーマが「核燃料バンク」構想に移ると「途上国に対する差別だ」と先進国批判が続いた。・・

・・

 途上国は将来にわたり原子力の技術的発展の芽が摘み取られると危惧し、アルジェリアのフェルキーIAEA担当大使らは核燃料バンクを「先進国の主張」と拒む。・・

・・

 「核技術は先進国だけのものではない」。ある途上国の大使の言葉が重みを増す。核技術を持つ国と持たざる国。両者の間の溝はあまりに深い。



こちらは、その源流としては米ソ間で何十年も前からあったものの、特に2000年代、温暖化対策等で原子力の復権が期待される、いわゆる「原子力ルネサンス」の時期に話題になった、「原子力の共同管理構想」にかんする話です。こちらは、同時期のブッシュ政権で提唱されたGNEP、オバマ政権のIFNECなど、現在でも議論は進んでいるようです。

構想の内容としては、今後世界中で原発への期待が増すことに比例して、それに伴うリスクも増加する。そこで既存の先進国で役割分担し、フロントエンド(燃料・原子炉の製造)からバックエンド(廃炉・核燃料サイクル)まで、全体的にカバーする。いわば先進国が途上国を恒久的に支援・指導する。そのようなプランです。

そして、上記の引用文のように、途上国としては「ふざけるな」とw

なお、平和利用の差別という意味では、平和利用の二国間協定(原子力協定)も、核物質や技術の供給国が圧倒的に有利な仕組みで、現在原発を推進している国ですら窮屈と言える面があります。すなわち、日本の「原発=国産エネルギー」論の誤りは明らかです。こちらの詳細は、金子熊夫「日本の核・アジアの核」をお読みいただければと思います。

どうも日本の原発反対論を見渡すと、何かにつけてその焦点が日米関係に集中しがちです。例えばアメリカと日本が手を組んで、嫌がる途上国に原発を無理やり押し付ける・売り付ける。常に先進国が極悪な加害者で、途上国が善良な被害者であるという前提が見受けられます。

しかし、途上国は以前から、先進国の思惑とは別に、原発を渇望している。かと言って先進国の制約は受けず、もっと自由な形で推進したいと考えている。そして、そのような途上国による先進国への突き上げは年々高まりつつあるのです。

‖ 核兵器禁止条約の賛同国に「脱原発論」は通用するか?

核兵器禁止条約は、単に核兵器の廃絶を訴えるだけではなく、前文の「譲れない権利」に示されるように、一切の差別のない平和利用の推進を強く要求する意味が込められている。そしてそれは、「途上国・持たざる国」による、「先進国・持てる国」に対する、長年の核技術への欲求・フラストレーションを表現したものであるとも読み取れます。

脱原発を考える上では、このような原子力平和利用を巡る国際情勢・背景についても考慮に入れておく必要があるのでしょう。

そして正直、これは「かなり難しい」では到底収まりきらない問題(2018/3/27 末尾に「追記その2」あり)と考えます。たとえどんなに、代替エネルギーとされる、「再エネ」や「高効率火力」、あるいは最近は非炭素電源の最有力とも評される「省エネ」のノウハウを提供したところで、途上国の原発への渇きを潤すことになるものかどうか。

「原発認めない」発信を ICANが避難者に訴え
2018/2/24 https://archive.is/3ZBcz #神戸新聞

一部抜粋

東日本大震災から7年がたとうとする中、被災地から近畿に2520人、うち兵庫には最多の782人が避難する(1月16日現在)。東日本大震災避難者の会「Thanks&Dream(サンクスアンドドリーム)」(森松明希子代表=兵庫県伊丹市出身)はこのほど大阪市内で、昨年ノーベル平和賞の「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))国際運営委員の川崎哲さんと意見交換した。川崎さんは核兵器禁止条約が原発を容認していると明かし、事故が大きな脅威となることを指摘。「原発を認めない条約にするため、福島第1原発事故の避難者である皆さんの発信が必要」と呼び掛けた。・・

・・

 川崎さんが、同条約がいかなる核の使用も「国際人道法に違反する」としたことを「画期的」と評価する一方、「『原子力の平和利用』を認めたことは最大の汚点」と明かすと、集まった約100人の避難者らからは「知らなかった」と驚きの声が上がった。
 
 川崎さんによると、最後まで反対したが「一部の先進国だけが経済発展のため原子力の資源や技術をほしいままにしている」との意見が途上国を中心に相次ぎ、「原子力の平和利用は奪い得ない権利」と押し切られたという。「これが格差社会の現実」と川崎さん。



私がこの記事を見て驚いたのは、核兵器禁止条約に興味があるはずの参加者の皆さんが、その内容を全く理解していないことでしたw条約の衝動買いには要注意ではないかと思います。

余談になりますが、川崎氏は正直な方だと思いました。単に条約の賛同者を募る意図であれば、そもそも平和利用に関してはスルーしても良かったのでしょうし、話の流れで説明が必要になれば、「それはレントゲンのことです」等と、客筋から察するに誤魔化しとおすことは十分に可能であったと思います。

その7につづく

2018/3/27 追記その1

これに限らず、既存の原子力の軍事利用・核兵器を制限する条約等には、必ずこのような権利が記載されています。例としては、IAEA原子力平和利用の二国間協定(原子力協定)、核物質の防護条約CTBT等が挙げられます。

2018/3/27 追記その2

かと言って、「平和利用のアパルトヘイト」という意味では、途上国のために先進国が主体的・主導的に貢献するべきという、原発推進派に見られる論理も通用しないわけで、日本を含めた原発先進国で論じられる、「賛成・反対論」自体が途上国には受け入れ難いとも言えるのでしょうか。

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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