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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

北海道胆振東部地震と北海道のエネルギー安定供給について考えてみる その2 

‖ 北海道ブラックアウトと泊原発再稼働論

9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震。地震の影響による北海道ブラックアウトを奇貨として、世間では、にわかに泊原発の再稼働を求める論説が広まり始めています。

ちなみに、「泊」は「とまり」と読みます。特にツイッターでは、なぜか「北海道の柏(かしわ)」原発の再稼働を!」という主張も見られ、なんだかよくわかりませんw

震度7という大地震による北海道の全停電。たしかに感情的には原発の再稼働を求める声が上がることは理解できなくもないですが、これは現実的に考えると無理であるとしか言いようがありません。これは何も、私が原発反対の立場であることとは全くの無関係な事情があるからです。

‖ 現状、泊原発は動かしようがない

事実確認として、現在、泊原発1~3号機は、原子力規制委員会の審査を受けている状況で、これをパスしていません。さらに昨年、地震による液状化対策として、北電(北海道電力)から新たな防潮堤の建設を行うことが発表されていますが、こちらもまだ完成されていません。

泊原発に防潮堤新設 沈下恐れで北電方針 再稼働さらに遅れも
2017/10/13 https://archive.is/vO8xm #北海道新聞

一部抜粋

北海道電力は、泊原発(後志管内泊村)が強い地震に襲われた場合に敷地が液状化し、津波の防潮堤が沈下する恐れがあることへの対策として、固い岩盤にくい打ちした防潮堤を新たに建設する方針を固め、原子力規制委員会に伝えた。東京電力福島第1原発事故後に完成させた土盛りの防潮堤は液状化で破損する恐れがあるためだ。再稼働に向けた安全対策費が膨らむのは必至で、再稼働時期のさらなる遅れにつながる可能性もある。



メディア等の情報を整理すると、北電としては原発の再稼働は3年程度先を想定(おそらく当面は3号機を優先)しており、事実、現在、何れの原子炉にも核燃料は装填されていません。また、企業のリソースの問題から、数年先の再稼働を見越しながら、直ちに再稼働が出来るような体制が整っているとは到底考えられません。

なお、今回の地震に際し、原子力規制委員会の更田委員長は、「規制委が電力供給の状況に判断を左右されることはない」と発言しています。

そして政治の問題で考えると、政府、安倍内閣の方針としては、世界一厳しいとされる原子力規制委員会の判断をうけて再稼働を進めるという方針です。

泊原発「直ちに再稼働あり得ない」…菅官房長官
2018/9/10 https://archive.fo/MIy1L #読売新聞

一部抜粋

 菅官房長官は10日の記者会見で、北海道電力泊原子力発電所(北海道泊村)の再稼働について、「原子力規制委員会で新規制基準に基づく安全審査中なので、直ちに再稼働することはあり得ない」と否定した。



菅官房長官の発言は妥当であると思います。ネット上の床屋談義であればともかく、政権を支える責任ある立場の方が、突拍子もなくちゃぶ台返しみたいなことを言えるわけもありません。

泊原発の再稼働に際し、たしかに、政治判断・超法規的措置で対応することは可能でしょう。しかし、その時点で、原子力の安全審査体制は破綻します。原発の安全性の議論に際し、専門家集団から素人に権限が移行し、全責任を持つことになる。原発問題から逃げているとされる安倍総理に、そんなリスクを負う覚悟があるとも思えません。

どうでしょう?安全性の怪しい車を車検に出して、現状ではナンバープレートがついていない、バンパーがない、ライトが付いていない、ブレーキが効くかわからない。そんな状態で公道を走らせることを認める判断が、果たして妥当であるのかどうか・・。それでもたしかに走らせることは可能でしょうが。

‖ 電力供給の過信は禁物、しかし危機を煽ることは生産的ではない

そして、これはその1でも述べていますが、北海道の電力供給については、現状の一時的な混乱はともかく、今後に関しては冬期も含め、過度に心配する必要はないと考えます。事実、昨日は京極発電所1号機が再稼働(今日は2号、計40万kW※1)されています。

北海道の電力供給について、何やら発電所が1機でも落ちたらオシマイだと考えている方も多いかも知れませんが、別にそんな事はありません。

これは北電のプレスリリースでも明らかです。過去には今回の苫東厚真等が、需要のピークである冬期に停止を余儀なくされたことも多々ありますが、その都度自社の発電所をやりくりし、電力融通等で対応してきた実績があります。北電は原発の停止を前提として、複数の発電所で支障が生じても電力を供給できる体制を整えて※2きました。

北海道電力株式会社 プレスリリース 苫東厚真発電所4号機の停止について(第1報)
2016年2月6日 https://bit.ly/2Mn2yo9

今回は需要の少ない時期で、しかも同時多発的・瞬時に電源が喪失という、北電としても想定しにくい状況だったのでしょう。今時期は先の理由から、いくつかの発電所は冬に備えて停止・メンテナンスを行うのが通例です。ピーク時の対策に比べ、そうでない時期はどうだったのか。今回の事故の検証作業でも議論になると思われます。

‖ 北海道の電力供給の真の危機とは?

どうにも電力需給に関する議論では、一般的には、とにかく大容量の電源ばかりが注目されます。今回であれば石炭(苫東厚真)や原子力(、柏ではないw)です。

しかし、これらの電源は仕様上、時々刻々と変化する電力需要には瞬時には対応できない、ベースロード電源です。基本的には100万なら100万kWという使い方しか出来ません。原発にしても仮に稼働させるのであれば、定格出力で運転するのが一番安全なのです。

胆振東部地震を経て、これからの北海道における真の危機は、今後の余震活動、連動等によって、ミドル・ピーク需要に対応出来る、石油・水力(揚水)、LNG、北本連系等の相当部分が長期間、機能停止に追い込まれるシナリオです。極端な話、一日の波がある人間の生活を、ベースロードの都合に合わせることなど到底不可能なのですから。

北海道電力株式会社 電気の品質「周波数」を一定に保つために
https://bit.ly/2x89Lnj

一部抜粋

電気は、「周波数」を一定(50Hz)に保ちながらお届けすることが大切です。なぜなら、周波数が変動すると産業用機器の使用などに不具合が生じるおそれがあるためです。
周波数を一定に保つには、電気の消費(需要)と発電所の出力(供給)のバランスをとる必要があります。
そこで、当社は周波数が常に一定となるように需要の変動に応じて、火力発電機や水力発電機の出力を調整しています。



このあたり、世間では「電力不足」という言葉が一般化していますが、「電力過剰」も大変危険です。電力需給は常に一定、すなわち同時同量の原則が守られなければ電力の品質は保てない。電力供給は多くても少なくてもダメなのです。そのため、特に有事の際は、ミドル・ピーク電源の健全性が重要になってきます。

‖ 電気(北電)に頼り切らない自衛策を

こちらもその1で説明したとおりですが、そもそも北海道の電力供給は、北電が抱える構造的な問題により、信頼性が高いとは言い難い。大型の発電所が特定地域に集中しており、需要に対して発電所1機あたりの供給力、ウェイトが重い。有事に対する備えという意味では、おそらく日本の電力会社の中でも最下位ではないかと思われます。

私は今まで、主に電力の供給側の問題について触れてきましたが、これは需要側、すなわちユーザーの意識も大事になってくると思います。供給側が問題を抱えている以上、そこでオール電化的・電力に依存する生活を前提とすることはリスクが高いのだろうと。

もちろん、電気はいろんな意味で便利ですから、ここで昔のような石炭・薪ストーブに戻れとは言いません。そんな生活は私もイヤですよwしかし、生活のすべてを電気に頼り切るのは、北海道においてはそもそも危険であるという認識を持つことが大切であると思います。今回の地震も、オール電化の方は特にひどい目に遭ったと聞きます。

そうですね。冬に備えて、せめてカセットコンロ(ガスボンベ)の点検は済ませておく。これが北海道民にとってのリスク回避への第一歩かもしれません。道民にとっては、夏はジンギスカン、冬は鍋料理は欠かせませんので、カセットコンロの普及率は高いでしょう。

しかし、北海道でも近年は、こちらも電化が進んでおり、電源頼み(ホットプレート・IH調理器等)というご家庭も少なくありません。ここはやはり、「冬の電力は大丈夫?」という考え方そのものがリスクであることを認識するべきと思います。オール電化よりは95%電化のほうが、有事の際には明暗を分けることになるのでしょう。

- おわり -

2018/9/14 追記

※1 リンク先の記事では供給力は変わらないと書かれていますが、これは北本連系を必要に応じて使うという意味で、京極発電所によって主にピーク時に余裕が生じる分、北電の供給力が増したことを意味しています。京極発電所の稼働状況を見極め、近々、20%の節電目標も緩和の方向に進むと思われます。

※2 もちろんこちらには、ユーザーによる「節電(当初は数値目標、後に無理のない範囲に緩和)」の効果も含まれます。しかし、北電の供給力が以前より改善されつつあることは、近々予定されている石狩湾新港LNG火力の完成、北本連系の容量増設の完了等でも明らかです。なお、先の京極発電所も、東日本大震災の後に完成した新しい発電所です。

それから、私の記憶では、北海道では数年前、冬期に100万kW程の電力が喪失したことがあったように思います。実際北電はそのくらいのレベルに対応できる準備をしています。もちろんその時点でブラックアウトは起きていません。起きていたらとっくにニュースになっていますので。

ただし、今回のような即時と、過去の事例に見られる段階的(ボイラーの蒸気漏れ等で様子を見ながら出力減等)なトラブルでは、対応のための時間的な猶予に差が出てきます。

今回のブラックアウトに際し、北電は129万kWの脱落までは想定していたようですが、これも即時と段階的、あるいは供給力が異なる季節等の要因によって、全く状況が違ってくるのではないかと私は見ています。

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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