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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

反原発・ニセモノ狩りの記録7 -日米原子力協定- その4 

‖ 教養講座で学んで以来の・・

日米原子力協定といえば、「統治行為論(とうちこういろん)」なんて小難しい法律用語も出てきますよね。なんでも、「日米原子力協定が憲法の上位法なので、司法は原発の是非を判断できない」のだそうです。ハッキリ言ってこれも相当おかしな話なんですがw

ところで、統治行為論とは一体どのような内容でしたっけ。そうですね、高度な政治判断。端的に言えば国防に関するような重大な政治問題は、司法は判断を回避する。たしかそんな感じですよね。大学の教養講座で憲法の講義を聞いていた時に、そういう事例があるということを教わった記憶があります。

そういう内容で問題ないのであれば、やはり原発と統治行為論なんて何の関係もないわけです。

‖ 「湯沸かし器」に見る高度な政治判断

ここで基本的な話に立ち返りますが、そもそも「原発」とはどういうものなのでしょうか。

「あの・・、核が、ウラン235がマッチ棒がねずみ算式にこう、バーンと・・!」というような細かい話(?)はさておき、原発とは一言で言い表せば「湯沸かし器」である。そういう話を聞いたことある方は多いのではないでしょうか。

原発は火力発電とは違い、石油や石炭、ガスなどの代わりに核燃料を使いますが、核反応から得られる熱を、熱交換※1によって湯を沸かし、それで蒸気を作り出してタービンを回し、その結果電気を生み出します。

すなわち、原発とは原理的には火力発電と同じ蒸気機関とも言えますし、もっと簡単に言えば湯沸かし器です。

つまり結局は湯沸かし器なんですから、こんなものが統治行為論の対象になるとか、そんな理屈はないわけです。もし違うのであれば、私たちは食後のコーヒーすら満足に飲めないことでしょう。

‖ 原子力基本法の「安全保障」は核武装の前触れか?

統治行為論の話に関連すると、2012年に改訂された「原子力基本法」に、「安全保障」というワードが入ったことで、「これで日本は原子力を軍事目的(核武装)に使えるようになったので、統治行為論の対象になった」というような話もありますが、これも全然違います。

原子力基本法 (昭和三十年十二月十九日法律第百八十六号) 最終改正:平成二六年六月一三日法律第六七号
http://goo.gl/F9I1P

一部抜粋

(基本方針)
第二条  原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
2  前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。



これが問題の「安全保障」の部分になりますが、これを余計な先入観を排して読んでみると、「日本は核武装への道を開いた!」と理解するのは明らかな誤りであることがわかります。

それではこの「安全保障」とは一体何を意味するのかといえば、それはそれの少し前に書いてある「前項の安全確保について」にかかる言葉になります。つまり、「原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし・・」という、原子力基本法の根幹である「平和利用」、「民主・自主・公開」の原則。これらの安全確保として「我が国の安全保障に資する」ことを目的として行う、ということになります。

これは簡単に言えば核セキュリティー、原子力従事者や住民などの安全確保ということになります。原子力災害というのはたとえ実験レベルでも国家を巻き込むとんでもない事態にもなりかねませんし、核災害から国民を守る=安全保障という意味合いとして考えれば、文脈としては間違いではないと思います。

実際に、この「安全保障」に関しては、基本法が改定された当時の野田内閣でも私の説明したような答弁※2がなされています。

原子力基本法改正等において「我が国の安全保障に資する」との文言が追加されたことに関する質問主意書 提出者  服部良一
2012/6/22 http://goo.gl/gS78k5

一部抜粋

原子力規制委員会設置法(以下、「設置法」という。)が本年六月二十日に成立したが、同法の目的及び原子力規制委員会の任務に係り「我が国の安全保障に資する」との文言が盛り込まれるとともに、同法附則において原子力基本法並びに核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「炉規法」という。)が改正され、それぞれに「我が国の安全保障に資すること」との文言が追加されたことについて、我が国の非核三原則の放棄及び核武装を意図したものではないのか、あるいは拡大解釈の余地を残し、軍事転用に道を開くものではないのかといった懸念が引き起こされている。報道によれば、日本国内のみならず、韓国等海外からも懸念の声が上がっているとのことである。法案提出者の立法意思及び内閣の解釈は参院環境委員会での審議等において表明されているところであるが、改めて内閣としての解釈及び見解を確認するため、以下、質問する。

一 日本が非核三原則を放棄し、核武装を目指すことは将来にわたってあり得ず、原子力利用は平和目的に厳格に限定されるということを内閣の意思として明確に示されたい。・・



第180回国会 衆議院議員服部良一君提出 原子力基本法改正等において「我が国の安全保障に資する」との文言が追加されたことに関する質問に対する答弁書
2012/7/3 http://goo.gl/FHjRco

一部抜粋

一及び二の2について
 原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号。以下「設置法」という。)による改正前の原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第二条においては、原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り行うものとする旨が規定されており、設置法による改正後の原子力基本法第二条においても、この旨の規定内容に変わるところはなく、設置法は、我が国の原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限るという方針に何ら影響を及ぼすものではない。また、野田内閣としては、非核三原則を堅持していく方針に変わりはない。



二、四、五及び五の2について
お尋ねの設置法第一条等並びに設置法による改正後の原子力基本法第二条及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第一条において「我が国の安全保障」という文言が規定された趣旨については、平成二十四年六月二十日の参議院環境委員会における原子力規制委員会設置法案の審議や「原子力規制委員会設置法案に対する附帯決議」(平成二十四年六月二十日参議院環境委員会。以下「附帯決議」という。)等を踏まえ、設置法により原子力規制委員会が原子力安全規制、核セキュリティ及び核不拡散の保障措置の業務を一元的に担うという観点から規定されたものと理解している。



三の2について
原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織については、設置法附則第五条に基づき、設置法の施行状況等を踏まえ、原子力利用における安全の確保に係る事務が我が国の安全保障に関わるものであること等を考慮し・・



このように、原子力基本法に記載された「安全保障」とは、「=核セキュリティー・安全確保」の意味なのですから、これが核武装であるとか、統治行為論の対象であるとか、そんな話には全く結びつかないわけです。

‖ 原子力基本法=原子力は平和利用に限る

さらに付け加えるならば、そもそも論としての原子力基本法成立(1955年)の経緯です。原子力基本法といえば、日本の原子力技術導入の最重要人物とも評される中曽根康弘氏。「札束で学者のほっぺたを引っぱたいてやる(=政治主導で原子力を進める)のだ」という例の話は有名ですよね。

当時の科学者たちは、原子力の研究には慎重派・反対派が多数派を占め、その理由としては、特に将来の日本の原子力の軍事利用(=核武装)を警戒していたそうです。結局科学者側は折れることになるわけですが、それでも法案成立の際には「平和利用のため」、「民主・自主・公開」の原則を盛り込ませることで学者筋としての面目を保ったという内幕があったのです。

もちろん、この「平和利用」、「民主・自主・公開」の原則は現在の原子力基本法にも記載されていますし、そのような状態でそれらを真っ向否定するような文言を書き加えられる道理がないのです。

ただし、私も「安全保障」という文言はパッと見で誤解されかない物騒な感じもしますので、これは将来的により妥当な表現に改められるべきだとは思います。

その5につづく


2015/11/15 追記

※1 いまさらですが、これは「熱交換」ではなくて、「熱伝導」の方が適切ではないかと思いました。とりあえず、ニュアンスとしてだいたい伝わればそれで良いのかなということで、細かな言葉の使い間違いはご容赦ください。

ついでになりますが、その前に書いた「ウランがねずみ算式に・・」という個所がありますが、これは本当にねずみ算式にバーンとなると大変なことになってしまいますので、実際にはその辺は上手く、ゆっくり一定のペースになるように調整しています。

2016/4/8 追記

※2 当初は答弁書のみの掲載でしたが、読者の皆様に内容を把握していただくには質問部分もあった方が良いだろうと考え、質問主意書も追加(このため、旧※1に変更)しました。

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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