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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

余剰プルトニウム物語 -頼れる核兵器材料?プルト君- その2 

かくいう私も、実は福島原発事故以前は「原発のプルトニウムで核兵器なんかできるわけがない」と思ってたんです。その理由は前回の話のとおりというわけで、純度が違うじゃないかというものです。

とはいえ、そのような「一般常識」と同時に、「余剰プルトニウムは持たない」という話も新聞やニュース等から得られる情報で承知しており、なぜ核兵器に使えないものが余ると国際的な問題になるのか、どうにも引っかかるなあと思いつつ、そんな話は日常の生活の中で置き去りになっていったというわけです。

原発事故が起きた年(2011)になりますが、どこかのテレビ番組で「原発の使用済み燃料が再処理されて余剰プルトニウムが・・」という話題があって、やはりその時点ではスルーしてたんですが、ちょうど同じ時期に読んでいた高木先生の本が、私の長年の謎を解き明かしてくれたのです。

‖ 知る人ぞ知る

高木仁三郎 原子力神話からの解放-日本を滅ぼす九つの呪縛
2000/8(2011年再販)http://goo.gl/dR7A2Y

一部抜粋

日本の原子力計画のなかで生産されるようなプルトニウムだと、六〇~七〇パーセントくらいの濃度です。こういうものを原子炉級のプルトニウムと言っていますが、この原子炉級のプルトニウムは核兵器にはならないんだ、ということが日本ではさかんに言われてきました。こういうことを、国際的な場で経験を積んだ核問題の専門家であり、かつての国連大使だった今井隆吉氏などがさかんに言ってきました。日本の電力会社のパンフレットとか、日本政府の雑誌などでも、原子炉級プルトニウムは核兵器にならないから大丈夫なんだ、というようなことがさかんに言われています。
 悪評を買った日本のプルトニウム利用計画の宣伝ビデオ「プルト君」は、かつての動燃事業団がつくったものですが、このビデオも、日本のプルトニウムは平和利用にしかならない、原爆にはならない。というふうなことを言っています。
 これは世界的に見れば恥ずかしい話で、そんなことを信じるのはまったく非科学的と言いますか、事実に反することで、世界には通用しない話です。私はいろいろな国際会議に出ましたが、どういう場においても、日本ではなぜそんなことが通用しているのかと質問されました。
 アメリカで一九九〇年代になって公表された秘密資料を見ますと、アメリカでは一九六二年に、わざわざこの原子炉級プルトニウムを使って核兵器の実験をやっていて、しかもそれに成功しています。多少プルトニウムの純度が低いといいますか、組成が違っても、原子炉からとれたプルトニウムでも立派に核兵器になることを実験して、確認していたのです。そういうものだから、プルトニウムの拡散には注意しなくてはならないよ、と一部の国のおもだった人たちを集めて、アメリカの高官が講義をしていたという事実も明らかになっています。そのときの資料が今、公開されていますが、そのなかには、先ほどの今井隆吉大使も招待され、同席していたという記録があります。
 つまり今井氏は、アメリカ政府から日本の代表として呼ばれ、そういう説明を受けていたにもかかわらず、彼自身はまったくそれとは別のことを日本で宣伝していたのです。日本のプルトニウムは核兵器にはならないと言ってきたわけですから、これは国連大使でありながら、日本国民にとってはまったく納得のいかない情報を流していた、いわば神話づくりの担い手の一人だったという気がしないでもありません。



このように、原発だから核兵器材料にならないのだというような話はフィクションであり、神話であったと。そしてこのような話は、私の調べた範囲では80年代~90年頃の資料でも触れられていたので、まあ知ってる人は知っていたということなのでしょう。

‖ 原子炉級プルトニウム安全神話の語り部

ところで先ほどの引用文にも登場している今井隆吉氏ですが、この方は東大・ハーバード大卒で新聞記者で日本原電の技術部長、外交官、国連の軍縮大使など、華々しい経歴を持つスーパーマンみたいなお方ですが、少し前になりますが日本経済新聞の記事にも登場しています。

日本の原発で核兵器製造可能 77年に米が見解 外交文書公開
2013/10/30 http://archive.is/C9NCV #日本経済新聞

一部抜粋

1974年のインドの核実験を受け、核不拡散政策を強化したカーター米政権が77年、日本の外交当局に対し、日本が導入してきた軽水炉から出る使用済み燃料を再処理した「原子炉級プルトニウム」でも核兵器は製造できるとの見解を伝達していたことが30日公開の外交文書から分かった。
 日本の原子力界は長年「原子炉級プルトニウムは爆弾にするには非常に具合が悪い」(今井隆吉・元原子力委員会参与)としてきたが、米国が早くから日本の原子力ムラの「通説」を否定していたことが判明した。



今井氏こそが日本の「原発安全神話」を補完する「プルトニウム神話」の語り部であり、どうやら私たちは一杯食わされた(続けた)ということなのでしょう。時代背景を考えれば、原発導入時期の60年代。「原発は平和利用の象徴である」というようなムード作りのため、国民が原発を受け入れやすくするために、このような話が広められたのだと思います。

‖ 今も神話は語り継がれている

しかし、この神話は事実関係が明らかになった今もなお健在で、例えば今年の夏ごろに放送していた「朝まで生テレビ」でも、「原発のプルトニウムで核兵器は出来ない」という話で盛り上がっていました。そういえば、出来ないと仰る方は概ね原発推進派の方だったような記憶が・・。

まあそれでも、前回のプルト君や産経新聞の取材を受けた再処理に携わる関係者にしても、あながち嘘は言っていない。ここがポイントなんです。実は彼らは、「原子炉級のプルトニウムで核兵器が出来るのか?」という問いに対して、「一線級の核兵器の作り方」について説明していたのです。もちろん、そういう意味では正しいのです。まあ質問に答えていないとも言えるのですがw

‖ 「花火」の威力

問題は原子炉級プルトニウムから作られた核兵器の威力です。これには諸説ありますが、アメリカやIAEA、世界の原子力研究者の見解としては最低でも1キロトン(=TNT火薬1000トン相当)~3.4キロトン、最大で20キロトンという感じです。一線級の核兵器には高純度のプルトニウムが必要だとしても、それには及ばないレベルであれば原子炉級でも十分いけるぞということです。

さて、先ほど1キロトンという数字が出てきましたが、これは「1」ということもあって大したことはないと考える方もいらっしゃるかもしれませんので、ここでそれがどのくらいの威力があるのかという動画をご覧ください。

TNT火薬1000トンが爆発→えらいことに



この動画は「1000トンのTNT火薬(1キロトン)」という説明になっていますが、ナレーションでは「one milion pounds tnt」となっているので、実際には約450トン、つまり0.5キロトンということになります。

動画を見て少し想像するだけでも、1~数キロトンという単位がどれ程の威力であるかがおわかりいただけると思います。そして20キロトンといえば、これは1945年に広島・長崎に投下された核兵器(16・20キロトン)に匹敵する破壊力です。現代の核兵器はそれの数千倍という威力のあるものもありますが、たとえそれらの数千分の1の威力であったとしても人類にとっては脅威であることに変わりないということですね。

このようなわけで、余剰プルトニウムに関しては、その潜在的な危険性から、以前から世界各国がきわどい問題として捉えているのです。

この件で、ある日本の研究者は、「仮に原子炉級の核兵器が出来たとしても花火程度の威力にしかならない」と仰ったそうですが、実際にはそんな程度では済まないということですよね。だいたい、本当に「ただの花火」であれば、世界中の優秀な方々で余剰がどうこうと議論になるわけがないじゃないですかw

軽水炉から再処理したプルトニウムで核兵器は製造可能であり、その威力も申し分なし。そしてこの問題はアメリカ・IAEAを筆頭に、世界が憂慮している。使用目的のないプルトニウムを大量に抱えることは、たとえ当人にその気はなくともその気があるとみなされるということです。

‖ それでも出来ないらしい

しかし、それでもなお、日本政府や核燃料の製造を引き受ける日本原燃等は「出来ない」、「不可能である」という見解を保ち続けています。なぜならば、そこには核不拡散性に優れた日本独自の技術があるからだということなのですが・・。

その3につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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