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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

余剰プルトニウム物語 -頼れる核兵器材料?プルト君- その4 

先回紹介した、「ウラン・プルトニウム混合脱硝」ですが、日本でこの技術が使われるようになったきっかけは、今をさかのぼること40年前、1974年のインドの核実験(平和的核爆発=表向きはダム建設等の名目で)にありました。この事件に一番驚いたのがアメリカで、まさか自分たちが技術協力した国がサッサと核武装してしまうとは・・と、まさに想定外の出来事であったのです。

‖ インド核実験の影響から日本の間違いを恐れたアメリカ

同時期の日本では、当初からの国策・国是である核燃料サイクルの推進の一環として、茨城県の東海再処理工場(動力炉・核燃料開発事業団=動燃 現:核燃料サイクル開発機構)で使用済み燃料の試験運用を行う段階(1977)でした。そこで当時のアメリカ、カーター政権(1977/1/20-1981/1/20)が日本の再処理事業に強い警戒感を示し、「ちょっとまってくれ」という話になりました。

アメリカとしてはインドの事例もあるし、日本がこのまま再処理を続けて、どこかで間違いを犯す行動に出るかもしれない。という理由から、出来れば日本には再処理をしてほしくなかったのです。実際アメリカは、自国での再処理を経済性の問題(コスト高)や核不拡散の観点から取りやめにしています。つまり使用済み燃料はそのまま捨てる、ワンススルー方式です。

‖ 日本との関係悪化を恐れたアメリカの配慮という構図は理解されにくい

しかし、それでも日本は続けたかった。やはり国策ですから。そこで日米間の交渉が何度か行われて、結局、アメリカが「折れる」形で、プルトニウムにウランを混ぜる混合抽出で手を打つ形になりました。

交渉の主な関係者であるカーター大統領やマンスフィールド駐日大使、その他の高官にしても、この件であまり強気に出ると日本との関係を損ないかねないと、そのように考えていたようです。福田赳夫内閣が、「日本は資源がない(エネルギーは死活問題)んだから!」、「これ(再処理)がダメになると日本(世界)経済が崩壊するぞ!アメリカはそれでもいいのか!!」などと、宇野宗佑通産大臣(経産省)らと一緒にアメリカをねじ伏せたということなのです。

ここでもしかすると不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。どうにも3.11以降に原発に反対するようになった方は、「アメリカに原発や再処理を強要・命令されている」等と思い込んでいるようですが、そうではないのです。特にネットではそういう方向に持っていこうとする方が多い。そのような陰謀史観は原発問題を迷走させるだけにしかなりませんので、おやめになった方が良いと思います。

さて、冒頭の「ウラン・プルトニウム混合脱硝」ですが、これは核拡散の抵抗性はそれほど高くはないと前回説明しましたが、もちろんこの問題は当時のアメリカも承知していましたし、日本もそうでした。そういう意味ではアメリカも随分サービスしたんだなあと、そう思いました。

‖ アメリカは勧めないが、日本はやめるにやめられない。そうである以上は・・

アメリカとしてはできれば日本に再処理をやってほしくない、という本音は、現在のオバマ政権でも同様であると言われています。オバマ大統領は特に核不拡散に強い関心があるそうですからね。

とはいえ、アメリカが他国の政策に、露骨に「やれ・やるな」というようなことは言えないでしょうし、そもそも日米原子力協定にはそんなことは一切書かれていません。この点は以前から書いてきましたが、念のため。

結局のところボールは日本側が持っているということで、進むにしても引くにしても、小泉元総理が仰る「全ては政治判断」ということになるのでしょう。特に再処理事業に関しては、もはや役所や電力会社等、ステークホルダーのメンツで行われている(やめるにやめられない)などと2000年頃から言われるようになっていて、このような状況では政治判断以外に頼れる方法は無いと思います。

‖ 平和利用から軍事利用のアパルトヘイトへの懸念

核燃料サイクルは、これを「非核保有国である日本が持つ特権」と評価する意見もありますが、これは当然「日本だけが特権を持つのはおかしい」という話に(もうなってますが)なり、やがてみんな持つようになって、ひょっとするとそこから間違いが起きるかもしれません。再処理の人種差別、アパルトヘイトという論点が、核(兵器)のアパルトヘイトという話にすり替わる懸念ですね。

なるべく早くやめた方が良いと思います。

-おわり-


今回の連載ではいくつかの資料をお出ししてきましたが、これらに加え、例えば、日本軍縮学会会報誌「軍縮研究」の2011年4月号、「日本の原子力政策と核拡散―核燃料再処理の核拡散抵抗性と必要性(田窪 雅文)」、同じく田窪氏も執筆者の一人である、石橋克彦編「原発を終わらせる(岩波・2011年)」、太田昌克「日米〈核〉同盟――原爆、核の傘、フクシマ(岩波 2014)」、こちらも太田氏が関わっている47NEWS「原子力時代の死角 核と日本人」もオススメです。


2015年12月3日 追記

紹介するはずだった本を1冊忘れていました。これも追加でオススメです。

石田 裕貴夫 「核拡散とプルトニウム(NDBOOKS 1992)」

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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