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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

日印原子力協定について考えてみる 6 - インド原発ビジネスの見通しは - その3 

‖ 賠償責任と外資系企業に厳しい国民感情

インドの原発ビジネスで忘れてはいけないのが、品質保証、いざというときの賠償責任です。この種の「責任」はどのような商品でも共通する話ではありますが、特にインドに原発を売るという点が問題なのです。

2010年に制定されたインド原子力損害賠償法(原子力損害に関する民事責任法)によると、原子力の機材の供給者に対する賠償請求を認める条文が盛り込まれており、これは輸出をする側から考えると、当然大きなリスク要因になります。

これはご存じの方もいらっしゃると思いますが、インドでは1984年の「ボパール化学工場事故」の影響で、インド国民の外資企業に対する不信感が根強く、原発においても甘い対応は出来ないという国内的な事情もあるのでしょう。

賠償責任に関しては、昨年アメリカのオバマ大統領とインドのモディ首相との間で妥協が図られることで合意したという報道()もありましたが、そもそも事故の際の被害金額はその時になってみないとわからないということもあります。肝心の損害賠償法そのものが廃止されることも国内政治的に考えて無いでしょうし、業界関係者は全然安心できないというのが本音ではないかと思います。もちろん、そのリスクが企業だけで収まるとも限りませんし。

‖ ポジティブな原発需要予測は当たったことがない

次に問題になるのは、これはある意味で一番重要な話とも考えていますが、そもそも原発の需要予測はアテになるのか?ということです。インドが10兆円、20兆円市場で、原発の設備容量が短期間で6300万kWになるとかそれ以上だとか、そんな景気の良い話は本当なのかなと。

結論から先に言ってしまうと、原発推進側は特定の国や地域に関わりなく、伝統的にとにかく「盛りたがる」傾向にあることは確かです。

高木仁三郎 原子力神話からの解放(2011再販 P23より)
http://goo.gl/dNjviU

国際原子力機関(IAEA)の原発設備容量の予測も一九七六年くらいから始まっていますが、そこでも、だいたい二〇〇〇年には原子力発電が約二三億キロワットまで増えると予想しています。七六年以来、IAEAは何回か同じような予測をやっていますが、やればやるだけ原子力発電の予測は縮んでいきます。

・・

ちなみに、IAEAの予測を受けて日本政府の原子力委員会は、一九七八年に出した長期計画のなかで、日本では二〇〇〇年の原発設備容量の目標を一億五〇〇〇万キロワットにおいています。実際は、その三〇パーセントの四五〇〇万キロワットにしかすぎませんでした。



今は2016年ですが、現在の世界の原子力発電の設備容量は3億8000万kW程度で、IAEAが70年代に行った予測(23億kW)とは全く違っている状況(実際には数年ごとに予測を下方修正しています。詳しくは同書をお読みください)です。

日本もIAEAを見習って大風呂敷を広げましたが、結果的には5000万kW程度でした。余談になりますが、もし日本での予想が当たっていたら、福島の事故は一体どんな感じになっていたのでしょうか?もしかしたら水素爆発した原発も3倍になっていたのでしょうか。

電力需要は景気の変動とも関連しますし、需要も景気も永久に右肩上がりということはありえません。原発は用地買収から建設までに長い時間を要するのが特徴で、原発を作ってる最中に社会情勢が変わってしまうことはよくあります。これはある意味、原発を売る側からすれば最大のリスク要因であると言えると思います。

‖ 企業活動に国境はない

インドの原発ビジネスに関しては、一部から「日本企業が止まれば世界の原発が止まる(だから止めよう)」というような声もあるようです。これは製鉄・鋳造技術等に優れた実績を持つ一部企業の事例が根拠になっているようです。

このような話は頷ける点もありますが、どうも私には外国企業の技術力を過小に評価しているようにも映ります。

原発の設計から製造まで、特にこの分野ではフランスやロシアが強みを持っていますし、中国や韓国なども猛烈な勢いでキャッチアップしている状況です。現在は大型部品の製造には力を入れていないアメリカ(ウェスティングハウス、GE)も、技術力に定評のある諸外国の企業と協力関係にあります。日本も協力先の1つであることは確かですが。

世間では業界再編(restructuring)という言葉をよく聞きますが、原子力産業もまた再編を繰り返してきた経緯があります。

現在の勢力図は過去の再編の結果であり、将来の勢力図もまた違ったものになるのでしょう。現代の企業活動は本質的にはグローバル(=国境が存在しない)なのです。


その1~3に関するその他参考資料

村上 朋子 激化する国際原子力商戦―その市場と競争力の分析 2010/3
http://goo.gl/Iu0DSG

下斗米 伸夫 島田 博 編著 現代ロシアを知るための60章【第2版】
http://goo.gl/C57QSu

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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