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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

日印原子力協定について考えてみる 番外編 - 東芝のウェスティングハウス買収劇(2006)について - 

先回の話で「ウェスティングハウス(WH)」という社名が出てきましたが、この会社はご存じのとおり、現在は東芝が所有(ただし、WHの企業としての独立性は保持とのこと)しています。今回は話のついでということで、2006年に東芝がWHを買収した経緯について簡単にまとめてみたいと思います。

‖ BNFLの不祥事とWHの売却

WHはアメリカの原子力関連企業として、原子炉の設計・開発、各種部品の製造・保守点検などを手掛けてきましたが、1999年にイギリスの国営企業である英国核燃料会社(BNFL)に買収されました。

ところが、それから間もなくBNFLで「MOX燃料製造データ改ざん」等の重大な不祥事が発覚。その上BNFL自体の業績低迷も重なり、改革の一環として事業単独では比較的好調であったとされるWHを売却することになりました。

原発ビジネスは中長期のスパンで経営資源を投入する事業であり、それに対してより短期的な問題解決・改革を迫られたBNFLには、もはやWHを所有し続ける意味が無い(持て余す)という判断だったのでしょう。

‖ 原子力ルネサンスとその時代

BNFLがWHの売却を表明したのが2005年になりますが、当時の原子力産業を取り巻く状況は、例えばアメリカでは住宅価格の上昇にともなう好景気に加え、79年のスリーマイル原発事故(それ以前から建設のキャンセルはありましたが)以降の低迷期から再評価にあたる時期であり、中国では毎年2ケタの経済成長率と、電力需要の増大に伴う野心的な原発増設計画も話題になっていました。業界的にはこのような追い風要因を受け、原子力の復興・再評価、いわゆる「原子力ルネサンス」論がさかんに唱えられていました。

このように、業界的には好材料がそろっているということで、実際にWHの買収に手を挙げる企業は多く、アメリカ・フランス・韓国・日本の原子力関連企業や投資会社が入札に参加しています。そこでいろいろあって、最終的には日本の東芝がWHを落札したのが2006年ということになります。BNFLがWHを落札した金額が1000億円で、2006年の入札は2000億が相場(上限)とも言われていたそうですが、東芝はその3倍、54億ドル(日本円で6400億円)を提示して落札しました。

‖ アメリカ悪玉論は混乱のもと

東芝のWH落札の経緯はこのような感じになりますが、なぜ今回こんな話題にしたのかと言いますと、先回のWHの社名を出したときに、そういえば以前に、「WHはアメリカに無理やり売りつけられた・押し付けられた!」なんて話をしている人が結構いらっしゃったことを思い出しまして、忘れないうちに「そういう話じゃないんですよ」ということで記事にしてみました。

これは以前にも書いてきたことですが、どうにも原発の話題について、とにかく何でもかんでも「アメリカのせい」にしたがるというか、そういう流れ・風潮にしたがる方が多いのです。

諸悪の根源はアメリカにあり、アメリカ言いなり・アメポチ(?)の日本はアメリカに原発を売りつけられ、東芝も無理やりWHを押し付けられた・・。

このような「アメリカ悪玉論」のようなストーリーを展開される方は少なくない印象ですが、このような俗説は原発・エネルギー問題を考える上で余計な先入観が入り込んでしまい、話が余計に混乱するだけで好ましくないと考えます。

‖ 原子力ルネサンスにみんなが踊った

当時の東芝にしても、それだけ「原子力ルネサンス」に入れ込んでいたということでしょう。自民党、民主党政権下で、これから国産の原発を大いに輸出しようと音頭をとっていた時期です。

バブル崩壊後の「失われた10年」などという言葉がありますが、当時はさかんに「これからの日本は何で飯を食っていくか」という議論があり、その答えの1つが原発輸出という話もありました。そしてそれを政治が後押しするべきだという雰囲気もたしかにありました。

そのようなわけで、国内外の環境から考えて、たとえWHが相場の3倍でも十分に安い。東芝としてはそういう経営判断だったのでしょう。もちろん、当時から原発輸出に関する各種リスク、当時は目玉とされていた中国の原発案件も、中国政府は当初から将来の国産化と輸出の推進を掲げており、そのような意味でもWHの買収に懐疑的な意見も少なくなかったのですが。

東芝といえば昨年から不適切な会計(粉飾決算)が話題になっていますが、経営の足を引っ張っている大きな原因として、原発・WH案件が取りざたされています。原発の需要予想というのは、先回も説明しましたとおりまったくあてにならないということで、このような問題が生じるのはある意味必然とも言えるでしょう。もしかしたら将来的にはWHを手放すなんてこともあり得るかもしれませんね。

・・実は東芝潰しのアメリカの陰謀だったのだ!みたいな話はどうか勘弁してくださいw


その他参考資料

電気新聞海外原子力取材班 原子力ルネサンスの風 海外最新レポート 2006/3
http://goo.gl/gU7bvw

村上 朋子 激化する国際原子力商戦―その市場と競争力の分析 2010/3
http://goo.gl/Iu0DSG

高木仁三郎 原子力神話からの解放(2011/5 再販)
http://goo.gl/dNjviU

吉岡斉 原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か 2011/2
https://goo.gl/MJfwH6

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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