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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

北朝鮮の弾道ミサイル実験と核不拡散 - 「ミサイル・人工衛星論争」を超えて - 

日本では半ば恒例になっている、北朝鮮の「ミサイル・衛星論争」ですが、これは先回の結論のとおり、ミサイルです。つまり、「あれはミサイルですか?」と聞かれたら、「ミサイルです」という回答になりますし、「ミサイルじゃなくて人工衛星ではないのですか?」と聞かれたら、「いいえ、あれはミサイルです」ということになります。「ロケットじゃないんですか?」でもミサイルです。

北朝鮮の場合はなぜミサイルなのかといえば、これは核兵器の開発と絡んでいるからに他なりません。

核爆発や弾頭の小型化等の研究に加え、それを発射するため(もちろん実際に核は使いませんがw)の実験。今回であれば弾道ミサイル、すなわち長距離核ミサイル技術の向上につながるわけで、そこで国連安保理決議では「弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射もするべきではない」という話になるのです。

‖ 核兵器の垂直・水平拡散

こういう話をすると、「そんなこと言ったらアメリカだって核兵器をたくさん持ってるじゃないか!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それは確かにその通りですが、この話は結局のところ、これは以前にも少し触れましたが、核軍縮・核不拡散、つまり「核兵器の垂直拡散と水平拡散の防止」という話に行き着くのだろうと思います。

核兵器の垂直拡散とは、既に核兵器を保有している国が核兵器の数を増やすことです。例えばNPTの定義上の「核兵器国(※1)」であれば、これらの国が核兵器の数を競い合うことです。イメージとしては核兵器の上積みです。

これと対になる概念が水平拡散であり、これは新たな核保有国へのチャレンジをすることであり、例えば今回の話であれば、北朝鮮はこれに該当すると考えて良いと思います。こちらのイメージは核兵器の横への広がりです。

核兵器の拡散を「タテとヨコ」という概念に分類すれば、核兵器を新たに保有する国が増える(水平拡散)ことは国際社会にとって決して良い事ではないことは明らかです。

今回の北朝鮮の行動が「衛星実験でありミサイルではない!」と、声高に抗弁される方も少なくないようですが、それは無意識のうちに核兵器の水平拡散を容認するというような、なかなか物騒な話に繋がるのではないかとも私は危惧します。気のせいか、普段核兵器に反対と仰る有識者の方が、「あれはミサイルじゃない!」なんて言ったりしてるようなw

もちろん、従来の核保有国が核兵器の保有を誇示し、あぐらをかいていても良いという話では決してありませんし、事実アメリカやロシア等にしても、核兵器の数を減らす努力をしていることは確かです。しかし、なかなか事は早急に、今日明日で「核兵器のない世界」というわけにもいかない理由もあります。

国会会議録検索システム 第65回 国会衆議院内閣委員会議事録第26号(中曽根康弘 防衛庁長官)
1971/5/15 http://goo.gl/p7PUIS (PDFファイル)

一部抜粋(下記の発言は七ページから掲載されています)

 大体いま世界戦略的に、また世界歴史的に見ますと、核武装というのは第二次世界大戦の戦勝国の業になってきている。ああいうものをつくってしまいましたからなくすわけにはいかぬ、相手が持っている以上は少し優越したものを持っていないと不安である、そういう世界に入り込んでいって、やむを得ず苦悶してSALT(※2)をやるというような形になってきておる。それで、私は戦勝国の業であろうと思っております。敗戦国である日本がそんな業にのこのこ入っていく必要はない、そんな考えを私は持っているわけです。



中曽根氏といえば戦中からアメリカ政府から「風見鶏」などと認識されていたという、なかなか掴みどころのない方(議事録中、「私は一貫して非核論者である」というような発言があったと記憶していますが、もちろん嘘です)のようですが、この「業」に代表される一連の発言に関しては、核保有国の心理・本質を突いた意見であると思います。

先の核兵器国(5ヶ国)ですが、当然核兵器の保有数ではアメリカ・ロシアということになりますが、例えば両国が順調に減らしていくことで、今度は他の国が核兵器の数を上積みをして追いついてくるかもしれない。必ずそういう懸念が頭をよぎります。

そのためオバマ大統領やプーチン大統領にしても、「みんな一緒にやろうじゃないか」と声をかけるのですが、他国からは「まずはあなたたちが先にやることだw」というような話になる。この辺は政治的な駆け引きであり、カードの切り合いであり、総じて「核保有国の業」ということになります。

‖ 現状の秩序をベースに地道な努力が求められる

核兵器のない世界を目指すにしても、一度になくすことは現実的に考えて到底不可能であり、そこには必ず時間差が生じることになります。今回のミサイル実験にしても、単純に核兵器の数を比較して「あっちのほうが1000倍悪い!」などと言ってみたところで、それは現実性を著しく欠くうえに、別の意味で誤解をされかねない際どい意見ではないかと思います。

そのようなわけで、核兵器のない世界の実現のためには、一般論としてはまずは核兵器の水平拡散の防止を優先し、同時に核保有国に対する核兵器削減も求めていく。結局はそれ以外には無いということだろうと思います。

今回の件に関しては、言うまでもなく、私は北朝鮮を徹底的にぐうの音も出ないほど締め上げろ等というようなことは一切主張していません(核廃棄のための「効果的な制裁」はやむを得ないでしょうが)し、いたずらに「北の脅威」を煽ってもいません。

そして、核兵器の水平拡散の防止のために、既存の核保有国が積極的に核兵器を削減する姿勢を見せるのは当然のことです。


※1 NPT上の核兵器国は「米・露・英・仏・中」の5ヶ国に限定されます。同条文9条3項より

※2 SALT=戦略兵器制限交渉(外務省 外交青書・白書より)


その他参考資料

加藤哲郎・井川光雄 編 原子力と冷戦 日本とアジアの原発導入
2013/3 http://goo.gl/jp3T8W

下斗米 伸夫 島田 博 編著 現代ロシアを知るための60章【第2版】
2012/10 http://goo.gl/C57QSu

石田 裕貴夫 核拡散とプルトニウム
1992/12 http://goo.gl/Cq79kY

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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