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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

反原発・ニセモノ狩りの記録5 -全てはアメリカが悪い- その3 

今から半年ほど前になりますが、「反原発・ニセモノ狩りの記録5 -全てはアメリカが悪い-」というタイトルで2回(12)にわたって話をしたことがあります。内容としては、原発反対派にありがちな「全てはアメリカの陰謀だ!」、「アメリカ言いなり、アメポチだ!!」というような思い込みは注意した方が良いというものでした。

本来は連載は2回で終了のつもりでしたが、終了後にたまたま借りて読んだ本が大変興味深く、連載記事の内容的にも合っていると感じ、「これはもう1回くらい・・」と考えて、それで今まで忘れてしまっていたのですw

私が興味深いと感じたのはこちらの本になります。

‖ 究極のアメポチは占領時代

明神 勲(みょうじん いさお) 著 戦後史の汚点 レッド・パージ GHQの指示という「神話」を検証する
2013/8 http://goo.gl/Xp4vv8

内容説明(以下、本書から一部抜粋)

 新たに発見したGHQ資料をもとに、レッド・パージ=GHQの指示というこれまでの通説が、じつは「神話」であることを実証的に明らかにする。レッド・パージ研究の最新の成果を集約した著者渾身の書。



これは日本の戦後史の話になりますが、レッドパージとは1950年前後における、「GHQの指示・命令」による共産党員やその支持者に対する公職等の追放令のことです。

日本の敗戦からGHQ(アメリカ)による占領政策、民主化の進展と、一方で国際社会における米ソ冷戦(ソ連は1949年に核実験に成功、50年には朝鮮戦争)の激化。このような背景で、当初は容認されていた社会主義の支持者への風当たりが厳しくなる、いわゆる「逆コースの時代」で起きた出来事の1つです。

「レッドパージはわかったけど、それと原発・エネルギー問題に直接関係があるのか!?」と聞かれると、私としても微妙なところなんですw

しかし、私の見たところ、原発反対派の多くは「全てはアメリカの命令」というステレオタイプの歴史観、被害者意識を持っている方が非常に多い印象で、事実、「アメリカの命令で原発がやめられない」みたいな「隠された真実」が日々拡散され、同様の内容の本が飛ぶように売れている。

私としてはこのような思い込みを解く上でも、日本史上における「究極のアメリカ言いなり・アメポチ時代」の事例をもとに考えてみるのも面白いのではないかと思ったのです。

私は先ほど、レッドパージを「GHQの指示・命令」と説明しましたが、これは一般的に流通している辞書や昭和史の資料などでもそのような説明になっていますし、おそらく一般の方がイメージするレッドパージは大体そのような理解である思います。

しかし、先に挙げた書籍の内容説明の部分では、それは「神話」であると書かれています。

‖ 占領時の日本のしたたかさは現代にも通じるところがある

実際のところ、レッドパージは一部を除いてGHQの命令で行われたものではなくて、基本的には当時の日本政府及び各省庁、司法、財界、労働組合等、要は日本社会が強く望んでいたことなのでした。

具体的な名前を挙げれば、例えば吉田茂首相や田中耕太郎最高裁長官(以前取り上げた統治行為論を日本で初めて採用した方です)らの個人的な思惑もあれば、経済界から労働組合に至るまで、パージ(追放)することが各界にとっての利益と考えていたようです。本書では日本の政府高官がGHQ充てに「何とかパージしたいんだけどアドバイスをいただけませんか?」といった内容のお手紙の事例が多数掲載されています。

もっとも、当時の日本政府には何をするにしても実質的な権限がなく、GHQの後ろ盾が無ければ成立し得ないことで、作者の明神勲氏はレッドパージの責任の所在を総括して、「GHQ・日本政府等による共同正犯」と結論付けています。

私がこの本を読んだ後、率直に感じたことは「これは以前に書いた寝技・虎の威を借る狐の話そのものじゃないか!」というものでした。国内の案件を巧みにアメリカ、あるいは国際社会の要望であるかのようにすり替えてしまう。こういうのが表面上では決してわからない日本の強さであり、狡猾さなんだろうなと思ったわけです。先回までの話の内容と構造が非常に似ているのです。

当時の日本側の狡猾さを示す事例として、本書から特に気になった話を2つ掲載します。

  さらに共働者として日本側は、レッド・パージ成功のためにGHQに特別の資金提供までも行っていた可能性がある。GHQにおけるレッド・パージ担当者のネピアは、竹前栄治のインタビューで「ここで私が[GHQ内でレッド・パージを]担当することになったのです。幸い、資金は大変豊富でた。というのは、大蔵省事務次官池田勇人氏が私のために週ごとに特別資金を用意してくれたからです(5)」という驚くべき証言をしている。
 「大蔵省事務次官池田勇人氏」とは当時大蔵大臣でありのちに首相となった人物である。もしこれが事実だとすると、週ごとの特別資金なるものの出所はまさか池田蔵相のポケットマネーからではなかったであろう。



  [エーミス※2は]これははっきり言って何ですけども、頭の粗雑な…人のよいところがあるんですよ、いわばこっちが十分利用できるという感じの人でしてね。人がよいし、占領行政にはわれわれもだんだん馴れて来て、どこをどう押せばどうなる、このベルを押せばどうなる、このボタンを押せばどう来るというような格好になってきましたから、エーミスが労働班長から課長になって来た頃は相当向こうがこっちに依頼して来るという感じでしたね。

・・

これは官僚の特徴ですが、僕らはエーミスを利用するわけですけれども、あいつは馬鹿なもんですから、「こういえ」というと、そのとおりいうのですよ。



当時は本当の意味での「アメポチ」だった日本ですが、これじゃあどっちがポチなのかわかったものではありません。以前、「とてつもない日本」という本が話題になった(内容は知りませんが)こともありましたが、確かに日本はとてつもないですね。

原発問題にしても、「日本はアメリカに原発を押し付けられた、売りつけられた!」と力説される方もいらっしゃいますが、そもそも原発を人一倍望んだのは日本でした。

そして日本初の商業用原発は、イギリス※1のコールダーホール型・天然ウランを使用する、茨城県東海村の「東海原発(1966-1998、電気出力16万kW、現在は廃炉作業中)」です。

70年代後半からの再処理交渉にしても、なぜか「アメリカが再処理を押し付けた!」みたいに怒鳴り散らす方もいらっしゃいますが、これも違います。核不拡散の観点から再処理を渋るアメリカに、当時の日本政府が公然と突き上げ、裏からは日本の電力会社等が手を回し、ワシントンDCで世論操作(ロビー活動)を展開。押し付けられたどころか日本側が押し切ったというのが真相でした。

近年の原発再稼働問題もまた然りです。日本の原子力ムラが親日派のパイプ役などを通じて「日本が原発をやめれば日米関係が悪化する、世界経済が停滞する!いや、それどころか世界が破滅する!!」みたいに適当なことを吹き込めば、「日本は原発をやめるべきではない」みたいな作文(なんちゃらレポート)が勝手に出来上がる。古賀茂明、飯田哲也氏が仰っていたことですね。

‖ 被害者意識が強く、とにかく「外」に敵を見いだす原発反対派

原発に反対される方(だけではないかもしれませんが)は特に、日本を「従順な羊で一方的な被害者」と捉える傾向が強い印象ですが、実態としては「羊の皮を被った狡猾なキツネ」が相応しいと言えるでしょう。

想像上の「敵」を作り出して怒り狂うよりも、まずは日本に以前から(おそらく戦前よりも前から)備わっている国家、あるいは社会としての狡猾さ・ある種の底意地の悪さを再認識すること。これが今回の連載の結論(先回と同じような感じですが)ということになります。

安易に外に原因を求める行為自体が、すでに相手の術中にはまっていると言っても過言ではないと考えます。


※1 こういうものは何でもアメリカが1番かと思いきや、アメリカの商業用原発(現在主流である濃縮ウランを使用)は、当初開発が遅れていたのです。世界初の商業用原発は、西側がイギリス(コールダーホール・1956)、東側がソ連(オブニンスク・1954)で、アメリカはその後(シッピングポート・1958)です。そして、天然・濃縮ウランの優劣に差が付くようになるのは、60年代中盤以降でした。

※2 労働省労政局労務課長・飼手真吾氏の証言。エーミス=GHQ労務課長


その他参考資料

村上 朋子 激化する国際原子力商戦―その市場と競争力の分析 2010/3
http://goo.gl/Iu0DSG

石田 裕貴夫 核拡散とプルトニウム
1992/12 http://goo.gl/Cq79kY

田窪 雅文 「日本の原子力政策と核拡散―核燃料再処理の核拡散抵抗性と必要性」 軍縮研究2011年4月号
2011/4 http://goo.gl/Gqrewa

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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