冷やし狸庵
原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。
オバマ大統領が広島平和公園で述べた所感について考えてみる その3
2016/06/01 Wed. 20:11
オバマ大統領の広島訪問ということで、どうしても大統領が主役という視点からその是非が論じられることが多いわけです。オバマ大統領が原爆資料館をおよそ10分訪れたとか、あるいはスピーチの中でこれを言ったあれを言わなかったというように。しかし、その歴史的な訪問の真の立役者という意味で考えると、日本政府・日本外交の功績も相応の評価があってもよいのではないかとも思います。歴史的な出来事も綿密な交渉と下準備があってのことで、特にアメリカ側の謝罪を問題としないという条件を提示したことが良かったと思います。やはりこの点が明確でなければ実現は無かったと思います。
‖ 核の問題と日本の置かれた立場
核兵器・核問題はどうしても情の側面から論じられることが多いのですが、あえてこれらを冷徹に、国益や安全保障という観点から考えると、とりわけ核問題で言えば、四方を核保有国に囲まれた状況で、日本はいかにして核の脅威から難を逃れられるか。あるいは非核保有国の日本が核保有国に対してどのようにして対抗しなければならないのか。こういう視点が第一に考えられなければならないのだと思います。
核兵器を持たず、実質的には持てない日本としては、やはりこれは「広島・長崎」を原資とする非核外交を徹底する以外に無いのだろうと思います。
唯一の被爆国日本という立場を堅持し、諸外国に非核への理解・同調者を増やしていく。核兵器の廃絶は究極的な目標(長期目標)であるとしても、少なくとも既存の核保有国は核兵器を使用しない(ためらわせる)、また新たな核保有国を増やさない。そのような国際世論の形成の努力を続けることで、結果的に日本が守られるように上手くやっていかなければならないのですね。
そういう意味において、オバマ大統領の広島訪問は、日本にとっては計り知れないメリットをもたらしたと考えて良いと思います。非核外交の資産運用の観点から優先順位は何かを考え、とにかく実現することを優先した日本外交の勝利ということになるでしょう。
というわけですから、日本は今後もこの種の外交資産を増やし続けていかなければなりませんし、まかり間違っても今まで積み上げてきた貴重な資産(=国益)を一方的に放棄するようなことはあってはならないということです。
‖ 核不拡散上、核燃料サイクルも望ましくはない
核不拡散という言葉を聞くと、どうしても核兵器、すなわち原子力の軍事利用の話になってしまいがちになりますが、これは当然、原子力の平和利用の分野でも当てはまることです。
原子力の平和利用と言えばやはり原発と言うことで、特に使用済み核燃料の再処理・核燃料サイクルは、以前よりアメリカ政府や多くの専門家等により核不拡散上の問題が指摘されている事業であり、本来であればすべての国が手を引くことが望ましいわけです。
核兵器の無い世界の実現のためにも、再処理技術を有する日本がリーダーシップを取る形で核燃料サイクル禁止条約を提唱し、同時に再処理に強い関心を持つとされる韓国やベトナムなどを取り込んでいく。そういう取り組みも求められるのだと思います。
残念ながら、政府はこの辺は今のところやる気はなさそうですけどね。
- おわり -
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