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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

安倍晋三内閣官房副長官(当時)の早稲田大学での講演は本当にものすごい中身だったのか? その1 

先日告知していた企画になりますが、昨日問題の記事が届きまして、全4ページと分量も少なめと言うことで、その日のうちに読み終えました。先ほど記事を書くために何度か読み返したところです。

政界激震 安倍晋三官房副長官が語った ものすごい中身
2002/6/2日号 #サンデー毎日

一部抜粋

 5月13日午後1時、東京都新宿区の早稲田大14館地下にあるB101教室に、安倍氏が姿を見せた。同大学教授で評論家の田原総一郎氏が「塾頭」を務める「大隈塾」のゲスト・スピーカーで、テーマは危機管理と意思決定。・・



‖ ・・これが「ものすごい」だって?

ツイッターなどでは「安倍氏が早稲田大学で行った講演で・・」というような話を目にしますが、記事によると、これは同大学の1、2年生を対象とした授業(21世紀 日本の構想)の1つのようです。そしてたまたまある日の授業のゲストが安倍晋三氏であったと。ちなみに記事によると、当時総理だった小泉純一郎氏も参加したそうですが。

記事を読んだ感想ですが、やはり私が懸念(悲観)したとおり、特にものすごい事を仰っていたようには思えませんでしたw「政界激震」、「核兵器の使用は違憲ではない」なんて物々しい言葉が紙面を飾っていますが、やはり大したことは書かれていません。

しかし、せっかく記事を取り寄せて「大したことはない」だけで終わりというわけにもいきませんので、記事中から当ブログの守備範囲内に該当する箇所(ここでは核兵器関連)をかいつまんでいろいろ書いてきたいと思います。

‖ 先制攻撃と先制的自衛権

田原氏「有事法制ができても、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル基地は攻撃できないでしょう。これは撃っちゃいけないんでしょう?先制攻撃だから」
安倍氏 「いやいや、違うんです。先制攻撃はしませんよ。しかし、先制攻撃を完全に否定はしていないのですけども、要するに『攻撃に着手したのは攻撃』とみなすんです。(日本に向けて)撃ちますよという時には、一応ここで攻撃を、『座して死を待つべきではない』といってですね、この基地をたたくことはできるんです。(略)撃たれたら撃ち返すということが、初めて抑止力になります」



一見すると「先制攻撃」なんて当時の安倍氏はずいぶんと物騒なことを・・と思えなくもないのですが、そうでもないのですね。安倍氏の仰っていることは、いわゆる「先制的自衛権」で、これは相手国が自国に対して明確な攻撃の着手が確認された場合、かつ他に有効な手段がない時には、相手の基地や関連施設を攻撃し得るというものです。

先制的自衛権は一応国際的には認められている権利であり、実際に、このような政府見解は既に昭和30年代からありました。

衆議院会議録情報 第〇二四回国会 内閣委員会 第15号 昭和31年2月29日
1956/2/29 https://goo.gl/G7gNKY

一部抜粋

○船田国務大臣・・わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。この点防衛庁長官と答弁に食い違いはないものと思います。
 以上が政府を代表して、総理大臣からの本問題についての答弁でございます。どうぞよろしく御了承をお願いいたしたいと思います。



当時の総理大臣は鳩山一郎氏(第三次鳩山内閣)で、議事録によるとユネスコの要人との会談により会議を欠席。船田中(ふなだ・なか)防衛庁長官が代理として答弁しているようです。

しかし、日本としては先制的自衛権を純法理論的には有り得るとしつつも、実際には今現在も権利を行使するための配備には着手していません。それは、法理論的にはありえても実現可能性に問題があるからです。

‖ 先制的自衛権の技術的・政治的な問題点

例えば、先ほどの北朝鮮の事例で言えば、既に自走式のミサイル発射台を数多く保有・配備している国家に対し、仮に自衛権を行使するとしても、果たして自衛隊にこのような対象物を確実に破壊できる能力があるのか(=抑止力として機能するのか?)という議論もあるようです。

なお、国際的には「予防戦争(=将来自国にとって脅威になる『おそれ』があるので、予防的に攻撃する)」は認められていません。

これは例えば原発問題で言えば、イラクの研究用原子炉「オシラク(フランスの技術協力による)」をイスラエルが爆撃した「バビロン作戦(1981)」が挙げられます。

当初イスラエル側は、攻撃の正当性の根拠として「先制的自衛権(近くイラクが核兵器を製造し、イスラエルを攻撃する差し迫った脅威)」を主張しましたが、この主張は認められず(=予防戦争)、国際社会から厳しい批判にさらされることになりました。

このように、先制的自衛権はその実効性と、国際的に禁止とされている予防戦争との区別が必ずしも明確にはならないという問題が含まれています。

‖ 記事中唯一の問題発言か

安倍氏「大陸間弾道弾はですね、憲法上は問題ではない」・・それは私の見解でなくてですね、大陸間弾道弾、戦略ミサイルで都市を狙うというのはダメですよ。



この箇所に関しては、記事中唯一問題発言の疑いがあるのではないかと思いました。憲法解釈上、大陸間弾道弾(ICBM)は持てないというのが一貫した政府見解のはずです。

この辺の話は、以前の記事(もしくはこちら → 防衛省:憲法と自衛権)でも少し触れましたが、一般的に、相手国の国土の破壊に用いられるような武器(戦略兵器)の保有は、自衛のための必要最小限度の範囲を超えてしまうので、これは安倍氏の誤解に基づいた発言ではないかと思います。

この問題にかんしては、当時長妻明衆議院議員(現:民進党)が今回のサンデー毎日の記事を引用する形で質問主意書を提出していましたので、こちらの質問と政府側の答弁もご覧ください。

政府の大陸間弾道弾(ICBM)の憲法解釈等に関する質問主意書 提出者  長妻 昭
2002/6/4 http://archive.is/56XFt

一部抜粋

・・報道によると安倍官房副長官も早稲田大学で「大陸間弾道弾は憲法上は問題ではない」と発言されておられる。
 そこでお尋ねする。
 一九八八年四月六日の参議院予算委員会で、瓦力防衛庁長官(当時)は「政府が従来から申し上げているとおり、憲法第九条第二項で我が国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものを指すと解されるところであり、・・
 しかしながら、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるから、いかなる場合にも許されず、したがって、例えばICBM、長距離核戦略爆撃機……長距離戦略爆撃機、あるいは攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されず、このことは累次申し上げてきているとおりであります」と発言されている。
 福田長官、安倍副長官の発言は、右の瓦長官発言にあるような大陸間弾道弾(ICBM)は憲法上許されない、との従来からの政府見解を変更するものだと理解して宜しいか。
 変更するものでないとすれば、どう説明されるのか。



衆議院議員長妻昭君提出政府の大陸間弾道弾(ICBM)の憲法解釈等に関する質問に対する答弁書 内閣総理大臣 小泉純一郎
2002/6/11 http://archive.is/rzD13

一部抜粋

 憲法第九条第二項で我が国が保持することを禁じられる戦力は、自衛のための必要最小限度を超えるものを指すと解されるところ、その性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器を自衛隊が保有することは、これにより我が国が保持する実力が直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるから、憲法上許されず、したがって、このような兵器であるお尋ねの大陸間弾道弾(ICBM)を自衛隊が保有することは許されないものと考えている。




その2につづく

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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