02// 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. //03
 

冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

核兵器の先制不使用政策の賛否は核保有国の哲学の違いであり、アメリカの先制不使用の検討に同盟諸国が懸念を示すことは核廃絶に矛盾するとも限らない その2 

前回の記事では、各国が先制不使用政策について異なる対応を取る理由、その傾向を考えてみたわけですが、これはあくまで、核兵器を保有している国々を総合的に見た上での目安・概要のようなもので、個別の国にはそのまま当てはまらないこともあります。例えばたとえ軍事力に自信がないからと言って、必ず先制不使用政策を採用するとか、そのような法則性を持つものでもありません。

‖ すでにアメリカは実質的な核先制不使用国と言えるのではないか?

それを踏まえると、例えばアメリカは先制不使用を採用していないという分け方も、これは妥当であるとは言えなくなってきます。考えようによっては、アメリカは既に事実上の先制不使用政策を採用しているとも言えるのではないでしょうか。

長崎大学核兵器廃絶研究センター 核態勢見直し(NPR)報告書 要約部分全訳
2010/4 http://archive.is/YWdwZ

こちらは2010年に公表されたアメリカの核態勢見直し(NPR=Nuclear Posture Review)報告書になりますが、内容を手短に要約しますと、核不拡散の推進と核兵器への依存度を下げ、通常戦力の強化(ハイテク技術)等で代替する。核兵器の依存度を下げつつもアメリカおよび同盟諸国への安全保障に影響を与えない、ということになります。

それではこちらの報告書から、先制不使用の議論に相当する部分をいくつか見ていきたいと思います。

合衆国の核兵器の役割を縮小する

・・

核兵器が存在する限り継続する合衆国の核兵器の基本的役割とは、合衆国、同盟国及びパートナーに対する核攻撃を抑止することである。

・・

合衆国は、NPTに加盟し不拡散義務を遵守している非核兵器国に対して、核兵器の使用も使用の威嚇も行わないことを宣言することによって、長期わたって続けてきた「消極的安全保証」を強化する用意がある。

・・

合衆国は安全保証を提供される資格を有しながら化学生物兵器を合衆国もしくは同盟国及びパートナーに対して使用する国は、通常兵器による熾烈な反撃を受ける可能性に直面するであろうこと、・・生物兵器の破滅的な潜在能力とバイオ・テクノロジーの急速な進歩を考えたとき、生物兵器の脅威の進化と拡散、そしてその脅威に対する合衆国の対処能力が要求する場合には、合衆国は前記安全保証に必要な変更を加える権利を留保する。



このように、アメリカとしては、核兵器の基本的な役割は、アメリカおよび同盟諸国への核攻撃の抑止であり、たとえNPTの義務を順守している非核兵器国がアメリカおよび同盟国に通常攻撃や生物化学兵器を使用したとしても、それらに対しては核兵器を使用せず(=消極的安全保証)、通常兵器で対応(但し、熾烈な反撃)することになっています。なお、生物化学兵器にかんしては、その潜在能力と将来の技術進歩の可能性(=変更を加える権利を留保)という点はありますが、これらの兵器は国際的には未だ核兵器に匹敵するような脅威とはみなされていないようで、基本的には通常兵器で対応可能と理解して差し支えないでしょう。

‖ 消極的安全保障の対象外でも核兵器の使用は極限的な状況で検討される

合衆国の核兵器は、ごく限られた非常事態において、上記の安全保証の対象から除外される国――すなわち核兵器を保有する国、及び核不拡散義務を遵守しない国――による合衆国もしくは同盟国及びパートナーに対する通常攻撃もしくは化学・生物兵器攻撃を抑止する役割を果たす可能性がある。したがって、合衆国は現段階においては、核攻撃の抑止を核兵器の唯一の目的とするという普遍的な政策を採用する用意はない。しかし、合衆国は、このような政策を安全に採用できるような条件を確立するために努力するであろう。

 しかし、これは新しい安全保証の対象とならない国々に対して核兵器を使用するという我々の意思の高まりを意味するものではない。強調したいのは、合衆国は、合衆国もしくは同盟国及びパートナーの死活的な利益を守るという極限的な状況においてのみ核兵器を使用するであろうということである。過去65年以上つづいてきた核兵器不使用の記録をさらに更新することこそが、合衆国とすべての国にとっての利益である。



そして、消極的安全保証の対象外である場合においても、核兵器の使用条件はアメリカと同盟国における「極限的な状況」とされており、核兵器を使わないことがすべての国にとっての利益であるという方針です。

このように、アメリカは公式には先制不使用を採用していないとはいえ、自国および同盟諸国との安全保障におけるバランスも考慮に入れながら、核攻撃の抑止を核兵器の唯一の目的、すなわち先制不使用の採用に努力していると言えるでしょう。

報告書は幾分の「あいまいさ」は残るものの、実質的には先制不使用にかなり近い内容になっていると思われます。

その3につづく


2016/8/26 追記

記事を投稿した当初は引用文以外で2度「消極的安全保障」という表記を用いましたが、こちらは英語で「Negative Security Assurance(ネガティブセキュリティー・アシュアランス=NSA)」となっており、こちらのAssuranceは「保証」の意味なので、「消極的安全保証」が意味としては正しいことになりますので訂正させていただきました。ただし、NSAに関しては資料によって「保障」表記もあり、実態としてはまちまちのようです。

関連記事
スポンサーサイト

カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

comment(0) | trackback -- | edit

page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top