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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

核兵器の先制不使用政策の賛否は核保有国の哲学の違いであり、アメリカの先制不使用の検討に同盟諸国が懸念を示すことは核廃絶に矛盾するとも限らない その4 

先制不使用政策に関しては、周知のとおり安倍首相がアメリカの高官に対して反対の意見を述べたという記事が出回り、その後首相自ら否定し、この件でアメリカと意思疎通を図るという流れになっています。

‖ 安倍首相に先制不使用政策を真っ向否定する理由はおそらくない

安倍首相が先制不使用に明確に反対したのかというと、私としてはそれはないと見ています。ただし、この件でしかるべき部署といいますか、例えば外務省などが「反対」ではなく「確認」の意図で、アメリカ側と何らかの意見交換をしたことは考えられると思います。

これはある意味当然と言いますか、唐突にオバマ大統領の肝いりで先制不使用政策が議論されるとしても、日本側としては、それによって一方的に日本の安全保障環境が損なわれるようであっては困ります。例を挙げれば、以前から何度かお出ししている、2010年の核態勢見直しと、今回の先制不使用の関連性です。日本としては、アメリカが正式に先制不使用政策を採用するとして、それでも以前と同様に、日本を含めた同盟諸国への安心安全を提供する内容であるのか。そういう意味においての確認、言質を取る意図で、アメリカに何らかの接触を図ったという可能性はあると思います。逆にそれすらやってないとすればおかしいと思いますが・・。

日本としてはアメリカの核戦略の変更に関わりなく、とにかく総合的な安全保障、拡大抑止が保証されるのであれば問題は生じないでしょうし、おそらく、先制不使用を明確に反対する理由はないと思います。別に先制不使用は核兵器を使わないという宣言ではありませんし、これは日本の従来からの安全保障戦略である、日米同盟を基軸とした拡大抑止(その是非はさておき、アメリカは核戦力を含むあらゆる種類の能力を提供するという意味)と矛盾するものではありません。

‖ 先制不使用政策はアメリカ単独で決められる性質のものではない

しかし、この問題は日米間の枠には到底収まらず、もっと広い枠組み、すなわちアメリカとの同盟諸国の関係であり、実質的な権限はアメリカには無いという事情もあると思います。そもそもアメリカの政策変更に安倍総理が反対したという記事が出回るということからして、この問題は既にアメリカ単独で決められるものではないということです。

同盟国でアメリカの先制不使用に反対していると言われるイギリスやフランス。こちらはNPTにおける正式な核兵器国であり、伝統的に核の先制不使用について「意図的なあいまい政策」を採用しています。アメリカはいつでも先制不使用を宣言出来るとはいえ、それはアメリカの圧倒的物量・性能を誇るハイテク通常兵器によって担保された、ある意味ではアメリカにしか出来ない贅沢とも言えるでしょう。そこで先制不使用を宣言されてしまうと、英仏国内で、両政府にとっては現時点では好ましくない議論が生じるリスクもあると思います。

核兵器を持たない同盟諸国。これは日本もそうですが、仮に日本が納得したとしても、諸外国もまた当然様々な政治的・地政学的な事情を抱えているわけで、今のタイミングで先制不使用は困ると考える国(日本はわかりませんが、ドイツや韓国などが反対しているようですが)も少なくないと思われます。EU・ロシア(ウクライナ情勢)、中東、中国、北朝鮮情勢など。その捉え方は各国によって異なるでしょう。

アメリカが核兵器を持たない同盟諸国の事情を考慮せず、一方的に先制不使用を宣言するのも危険です。これがアメリカの提供する安全保障への不信につながり、ついには対米不信、反米政権へとエスカレートして、最悪の場合、新たな核武装国が出現する可能性も生じるでしょう。そうなれば既存の核保有国にも何らかの影響を与える可能性も高いでしょう。そういう意味で、「先制不使用=善、反対=悪」とは、私としては一概には言えないと考えています。

以前に述べたとおり、アメリカは実質的には現時点で先制不使用政策を採用していると私は考えていますし、実質か正式かの違いで各国間でしこりが生じる事態になるとすれば、それはそれで問題のような気もします。

もっとも、たとえアメリカを含めたすべての核保有国が先制不使用を宣言したとしても、現時点でそれを検証できる仕組みや技術というものも存在しないわけですし、このような話は核保有国・非核保有国間の一定水準の信頼関係が成立・維持していなければ、どちらにしても意味がないとも考えられます。

何事も信頼関係、信頼醸成が第一ということではないでしょうか。

- おわり -


その1~4におけるその他参考資料

黒沢満 核軍縮入門
2011/7 http://goo.gl/bqc9f0

武田康裕・神谷万丈 責任編集 最新版 安全保障学入門(リンク先は最新4版)
2003 http://goo.gl/rY317h

核の先制不使用に関する議論の経緯と課題 立命館アジア太平洋大学客員教授 小川伸一(PDFファイル)
2010/10/26 http://goo.gl/FtnH9f

アーミテージ・ナイ緊急提言日米同盟vs.中国・北朝鮮 リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原 剛
2010/12/16 http://goo.gl/RoyZdc

内閣官房 「国家安全保障戦略」(平成25年12月17日 国家安全保障会議・閣議決定)
2013/12/17 http://goo.gl/yv6dzX

外務省 日米安全保障協議委員会(「2+2」) 日米防衛協力のための指針
2015/4/27 http://goo.gl/RCX4rp

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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