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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

反原発・ニセモノ狩りの記録5 -全てはアメリカが悪い- その5 

ツイッターなどを眺めていると、必ずと言っていいほど「日本はアメリカの属国」、「アメポチ」みたいなツイートが流れてきます。こういう主張は人気があるのか、RTの数も多い感じです。

日本はアメリカの言いなりで、あらゆる政策や外交交渉などもアメリカの命令で決められている。とにかく、何でもかんでもアメリカが悪い。世の中からアメリカがいなくなれば世界は平和になる・・。

このような、いわゆる「対米従属論(アメリカ陰謀論、あるいは悪玉論)」は、一昔前であれば革新系の団体や政党、知識人などが好んで発信していた話であったと思います。とはいえ、近ごろは特定の思想信条にとらわれない方がそのような話でワイワイ盛り上がる傾向にあるのでその限りではないようです。

‖ 原発問題と対米従属論(=陰謀論)

そして、対米従属論は原発問題とも相性がバツグンに良いらしく、

「日本は対米従属なので原発をやめたくても絶対にやめられない。アメリカの命令で原発は推進され、再処理も強要される」

「日本が決められるのは電気料金だけである」

「ジャパンハンドと呼ばれる絶対的な権力者、あるいは影の総理大臣が日本の政府中枢に多大な影響力を持っている・・」


というような話が原発反対派の中でも支持されていますし、実際そのような内容の本がベストセラーになって「目からウロコが落ちました!」なんて感動している人も少なくないのです。

しかし、こういう話や理解は表面的・粗雑に過ぎて具合が悪い。このような与太話は原発問題をかえって複雑化・カルト化させてしまうだけだというのが「ニセモノ狩りの記録5 -全てはアメリカが悪い-」シリーズを通して主張してきたことなのです。

‖ 陰謀の森に迷い込まないための書籍・資料一覧

原発問題を陰謀論的な視点でのみ論じ、拡散させる。それが不特定多数の方に「原発の真実」として共有され、目からウロコが落ちて、この感動をほかの人にも教えてあげたいとして拡散される。このような悪循環を防ぐ、ある種の悪魔祓い的な作用が期待される本(ブックレット)が最近発売されています。

鈴木達治郎・猿田佐世 (編集)  『アメリカは日本の原子力政策をどうみているか』(岩波ブック レット)出版(日米原子力エネルギープロジェクト)
2016/10/20 http://archive.is/6QG4a

日本はあらゆる政策についてアメリカから強い影響を受けているが、原子力政策も例外ではない。2012年、民主党政権(当時)によって模索された「2030年代原発ゼロ」の閣議決定は、アメリカから「回避せよ」との要求があった直後に見送られたことが明らかになっている。

しかし、政府高官も含めたアメリカの多くの専門家が、安全保障上の問題から、日本に対し使用目的の明確でないプルトニウムの製造、つまり再処理への強い懸念を直接間接に示していることは、日本にあまり広く伝わっていない。

私たちは、日本に届く情報に触れるとき、誰のどのような意図でその情報が私たちのもとに届けられたかに常に思いを致す必要がある。アメリカが日本の原子力政策を推進するよう圧力をかけているといわれるが、・・



こちらの本はブックレットという形式上、ページ数は少な目なのですが、原子力の戦後史、日本の原発導入から東海再処理交渉、最近の日米間、諸外国の原子力事情などが簡潔にまとめられており、原発・プルトニウム問題の入門・論点整理として手元にあると便利、コストパフォーマンスに優れた本だと思いました。

本書の核心部分としては4・5章の辺りになると思いますが、この辺はいわゆる「日本の原子力政策とアメリカの影響力」で、編集者であり同章の執筆者である猿田氏による、「何でもかんでもアメリカが悪い」等と、とかく陰謀論的解釈・行動に走りがちな原発反対派を諌める論調になっています。

私が言うのも何ですが、どうにも福島原発事故から原発反対派に転じた「新規参入組」に見られる傾向としては、日本の原子力史(歴史)についてはほとんど目を通していないか、そもそも興味がないというのが私の印象です。

彼らは基本的には、福島で原発が爆発、放射能汚染への恐怖、その反動から原発反対デモみたいな、そういうノリで動いている。原発事故もある種の「イベント(祭り)」ととらえれば、とにかく何でも良いから騒ぎたい、騒げば道が開かれるという心理。

だからこそ、そこではある種の勢いというか、燃料としての作用、すなわちエキセントリックな陰謀論、ネットの真実などが好まれるというのもあるのかもしれません。

吉岡斉 原子力の社会史
1999 4/9 http://bit.ly/2fA4Ofv

・・民事利用領域における日米関係は、全体として相当に緊密なものであったが、軍事利用の場合とは異なり、全面的にアメリカ政府の言いなりになってきたわけではない。アメリカ政府の干渉が、自国の原子力産業の安定的・包括的拡大という基本路線の推進の障害となる場合は、それに頑強に抵抗してきた。その意味では全面的臣従路線ではなく、限定的臣従路線を歩んできたと言える。日本人が直接進める事業については、アメリカからのコントロールが及ぶ度合いを限定しようとしてきたのである。



吉岡先生の「原子力の社会史」は、日本の原子力史を学ぶ上でのスタンダード、教科書的な著作として広く知られていますが、本書に少し目を通すだけで、「アメリカの陰謀」みたいな論調に対する免疫力がついてきます。

ちなみに、こちらの「軍事利用の場合」というのは、いわゆる「核持ち込み」などの問題であって、別にアメリカと共同で核兵器を作っていたとか、そういう物騒な話ではありませんのであしからず。

原子力の社会史は2011年に新版が発売されましたが、比較的新しい2000年以降の情報は別の資料等からも得られますし、そういう意味では旧版で十分ではないかと思います。古本であれば200円以下で入手可能です。

「アメリカは日本の原子力政策をどうみているか」や「原子力の社会史」でも触れられていますが、1970年代の東海再処理(核燃料サイクル)工場をめぐる日米交渉。特にこのあたりが詳しく書かれているのが、当ブログでもたびたび参考資料として活用しているこれらの著作(論文)になります。

石田 裕貴夫 核拡散とプルトニウム
1992/12 http://goo.gl/Cq79kY

日本軍縮学会 『軍縮研究』 第2号 田窪雅文 日本の原子力政策と核拡散 ―核燃料再処理の核拡散抵抗性と必要性(PDFファイル)
2011/4 http://bit.ly/2fQqjK7

遠藤哲也 日米原子力協定(一九八八年)の成立経緯と今後の問題点(改訂版・PDFファイル)
2014 http://bit.ly/2fdEHds

「核拡散とプルトニウム」は出版年が1992年と少し古いですが、今でも原発問題を扱う著作や論文の参考資料としてよく目にしますので、おそらく研究者間では特に評価が高い本なのだろうと思われます。こちらもだいたい200円以下で入手可能です。

「日本の原子力政策と核拡散」では、核燃料サイクルは世界経済のロコモティブ(=牽引役)であるとして、日本が再処理に難色を示すアメリカを説き伏せた経緯について、数々の公文書に基づき解説しています。当時のアメリカは、日米合意による再処理方式は核拡散の抵抗性が決して高いとは言えないと認識していたものの、それでも日米関係の悪化を懸念して譲歩したという話は、日米間が単純な主従関係で説明できるものではないという証拠と言えるでしょう。こちらは無料で公開されています。

再処理交渉の当事者の1人という意味では、遠藤哲也氏の「日米原子力協定(一九八八年)の成立経緯と今後の問題点(改訂版)」も、「設立経緯」に関しては資料性が高いと思います。ちなみに、こちらの参考資料にも「核拡散とプルトニウム」が挙げられています。こちらも無料で公開されています。

岩波 世界8月号 【座談会】日米関係を揺るがすプルトニウム――脱原発と核燃料再処理の国際政治をめぐって 吉田文彦 (カーネギー国際平和財団客員研究員)×鈴木達治郎 (長崎大学核兵器廃絶研究センター長)×猿田佐世 (新外交イニシアティブ事務局長)
2016/7 http://bit.ly/2eSJnT4

先ほどの「アメリカは日本の原子力政策をどうみているか」と被る部分もありますが、原発・プルトニウム問題に関する日米・国際関係という意味においてはこちらも参考になるかと思います。日米関係という意味では遠藤氏の論文にも意見が述べられていますが、こちらは少々飛躍的なニュアンスも見受けられます。この件に関しては前者のほうが全体的にバランスが取れている印象です。

「世界」は定価が918円ですが、こちらは図書館に行けばたいていの場合は置いてあるので無料ですね。コピー代で50円くらいでしょうか。

‖有効な投資によって得られる知識が自分の身を守る唯一の手段

最後にお会計になりますが、最初の「アメリカは日本の原子力政策をどうみているか」は562円。こちらはまだ発売されたばかりなので、中古でも値段は変わらないと思います。「原子力の社会史」、「核拡散とプルトニウムが」それぞれ200円。「世界」のコピー代が50円。そのほかの資料はすべて無料。

合計1012円の有効な投資が、「日本が決められるのは電気料金だけ!」、「ラスボスはアメリカだ!!」みたいないかがわしい煽り本の類いから自分の身を守り、決して「目からウロコが落ちました!」などと無意味な感動を得ないための十分な知識が得られることでしょう。

もちろん、その1~4までの記事、資料や動画もオススメです。

- おわり -

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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