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冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

原発反対派はなぜ、「陰謀論」と「与太話」に弱いのか 

印首脳、原子力協定に署名 NPT未加盟国と初
2016/11/11 http://archive.is/UZIsn #日本経済新聞

日本とインド両政府は11日、首相官邸でインドへの原子力技術の輸出を可能にする原子力協定に署名した。インドは核拡散防止条約(NPT)に未加盟で、日本がNPT未加盟国と原子力協定を結ぶのは初めて。日本国内にはインドの核実験への懸念があることから、インドが核実験を再開した場合は協力を停止できることを別文書で確認する。



‖ 日印原子力協定の署名と若干の感想

先日、日本・インド両政府によって日印原子力協定が正式に署名されたわけですが、こちらの件については既に昨年末から今年にかけての連載(全7回+番外編1回)で考えを述べてきた通りというわけで、感想は特にないです。もともとこの協定は2008年の米印原子力協定がベースになっているので、今回の日印原子力協定についても従来の流れを逸脱するような内容にはならないことが予想されましたし、実際の文章を確認してみますとだいたいそんな感じになっています。

ちなみに、先ほどの日経新聞の記事にある「インドが核実験を再開した場合は協力を停止できることを別文書で確認する」にかんしては、外務省のサイトに協定文書を含めた一連の資料がアップされています。

外務省  日印首脳会談 2 日印原子力協定
2016/11/11 http://bit.ly/2fU3Qbz

それから、こちらの「日印原子力協定(公文テキスト)」では、当時のインド共和国外務大臣、プラナーブ・ムカジー氏による2008年9月5日の声明が協定の不可欠の要素であると書かれています。こちらはいわゆる「核実験モラトリアム(一時停止)」の継続など、そういう話です。

Statement by External Affairs Minister of India Shri Pranab Mukherjee on the Civil Nuclear Initiative(インドの外務大臣プラナーブ・ムカジー氏※1による民事原子力構想に関する声明)
2008/9/5 http://archive.is/Mc4vB
→ 日本語訳はこちら(google翻訳ですが、内容はほぼ正しいと思います)

ここまでは今回のタイトルとはあまり関係がないのですが、本題はここからです。

‖ 日印原子力協定十七条3項と日米原子力協定十六条3項

日印原子力協定の第十七条(協定の終了・更新関連)の3項には、このような記述があります。

この協定の下での協力の停止又はこの協定の終了の後においても、第一条、第三条、第四条、第五条1、第六条、第七条、第十条、第十一条、第十二条3、第十三条及び第十四条の規定は、引き続き効力を有する。



たとえ日印原子力協定が終了しても、条文の大半は引き続き効力を有する。パッと見ではよくわからない内容に映るかもしれませんが、当ブログにお越しいただいた皆様の中には、これと全く同じ条文をご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか?そうです、日米原子力協定の第十六条3項です。

原子力規制委員会 原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(PDFファイル)
1988/7/2 http://bit.ly/2goJg6b

一部抜粋

3 いかなる理由によるこの協定又はその下での協力の停止又は終了の後においても、第1条、第2条4、第3条から第9条まで、第11条、第12条及び第14条の規定は、適用可能な限り引き続き効力を有する。



日米原子力協定第十六条3項の「引き続き効力を有する」にかんしては、以前、矢部宏治(実名を出すのは今回が初めてですが、以前から氏にかんする話は書いてました)氏が自著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』において、「日本が絶対に原発をやめられないとんでもない条文である」と指摘して、原発反対派の皆さん(著名人・有識者を含む)が「目からウロコが落ちました!」と大絶賛されたことがありました。こちらはアマゾンあたりでも☆5つばかりの名著※2になってます。

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
2014/10/24 http://bit.ly/1spvgru

一部抜粋

日米原子力協定には、日米地位協定にもない、次のようなとんでもない条文があるのです。

「第一六条三項いかなる理由によるこの協定またはそのもとでの協力の停止または終了の後においても、第一条、第二条四項、第三条から第九条まで、第一一条、第一二条および第一四条の規定は、適用可能なかぎり引きつづき効力を有する」

もう笑うしかありません。「第一条、第二条四項、第三条から第九条まで、第一一条、第一二条および第一四条の規定」って......ほとんど全部じゃないか!それら重要な取り決めのほぼすべてが、協定の終了後も「引きつづき効力を有する」ことになっている。こんな国家間の協定が、地球上でほかに存在するでしょうか。



さて、この条文が本当にとんでもないかはひとまず置いておくとして、実際に地球上でほかに存在するじゃないですかw先に挙げたとおり、このたび、日本とインドの間でそのような約束事を取り付けたわけです。矢部氏の解釈であれば、今度は日本はインドの圧力によって原発が絶対にやめられなくなった(日印原子力協定は憲法の上位法?)というような奇妙な論理になるわけですが。

‖ とんでもないとされる条文は地球上の至る所に存在する

もちろん、地球上でほかに存在するでしょうかという条文は今回で2例目というわけはありません。日印に先立つ米印原子力協定(PDF)にもそのような条文(第十六条3項)はありますし、日本との関係でいえば英、仏、中、露、加、豪・・。とにかく原子力の平和利用に関する二国間協定(ロシアはこちら、比較的最近の事例としてはトルコヨルダンも例外ではありません)では必ず見られます。

日英原子力協定
1998/10/12

第14条 4 この協定の停止又は終了の後においても、第3条から第6条まで、第7条2及び第10条から第12条までの規定は、引き続き効力を有する。



日仏原子力協定
1990/9/22

第9条 3 この協定が廃棄され又は終了した場合においても、第2条、第2条のA、第3条、第4条、第4条のA2から4まで、第7条、前条及び2の規定は、必要である限り引き続き効力を有する。



日中原子力協定
1986/7/10

第10条 2 この協定の終了の後においても、この協定に基づいて受領された核物質、資材、設備及び施設並びに回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質に関し、これらが関係締約国政府の管轄の下にある間又は両締約国政府により別段の合意が行われるまでの間、この協定の第1条及び第4条から第8条までの規定は、引き続き効力を有する。



‖ 先入観を排して条文を読めば目からウロコが落ちることはありえない

では、そもそもこれらに見られる「引き続き効力を有する」とはいったいどういう意味なのかといいますと、これは以前に説明したとおりです。原子力の平和利用に関する二国間協定というのは、文字通り「平和利用のため」の協定なのですから、先に挙げた条文が入ってなければ逆におかしいのです。協定終了後も効力を有すると規定されている一連の条文は、すべて核不拡散の問題に非常に強く関連するからです。

なお、これらの協定は基本的に双務性(双方に権利と義務がある)を帯びた内容になっていることにも留意が必要です。要するに、国際・文化交流のために空手を学んで、関係が切れた途端に鍛えた体で強盗をやるみたいな話はお互いやめましょうというような話です。

‖ 何が目からウロコを落とさせるのか?

なぜ原発反対派は「陰謀論」や「与太話」に滅法弱く、そのような論説に飛びついては、その都度、目からウロコが落ちてしまうのか?

それはやはり、原発に反対するに際しての基礎体力が備わっていないから、ということなのだろうと思います。


※1 Shri=インドにおける敬称、Mr. Mrs.の意味。おそらくシュリーと読む

※2 私は以前、こちらの書籍に☆1つを付けて差し上げました(書評)が、案の定、「参考にならなかった」ばかりですがw

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カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

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