02// 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. //03
 

冷やし狸庵

原発・エネルギー問題を静かに考えるブログ。

「命」の価値を過大に評価してしまう原発反対派の悪癖 その1 

新潟県の柏崎市長選。結果はこちらの記事の通り、原発推進派とされる桜井雅浩(さくらい・まさひろ)氏が当選となりました。

柏崎市長選 桜井雅浩氏が初当選 再稼働容認派(新潟県)
2016年11月20日 http://archive.is/iyj8k #毎日新聞

一部抜粋

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を争点に新人同士の一騎打ちとなった新潟県柏崎市長選が20日投開票され、条件付きで認める元市議、桜井雅浩氏(54)が、反対する元市保健師、竹内英子氏(47)=共産、社民推薦=を破り初当選した。10月の県知事選は「反原発」の野党3党が推薦する米山隆一氏が制したが、立地市は原発との共存路線を選んだ。



先ほど私が「とされる」と表記したのは、これは対立候補の竹内英子(たけうち・えいこ)氏陣営、あるいはその支持者の視点から見た桜井評ということになります。実際に反桜井氏側のツイッターやユースト等の動画を見ていると、とにかく桜井氏はとんでもない原発推進派なので当選したら新潟(原発)が大変なことになる!みたいに「拡散」されている方も少なくなかった印象です。

‖ 櫻井候補はとんでもない原発推進派なのか?

しかし、桜井氏が本当にとんでもない原発推進派であるのかといえば、私は必ずしもそうではないとも考えています。桜井氏の主張としては、確かに条件付きではありますが、再稼働は容認する(ただし、再稼働容認=原発推進とは必ずしも言い切れない)というスタンスではあるのですが。

柏崎市長選 桜井氏出馬表明(新潟県)
2016/9/28 http://archive.is/5jUB4 #bsn

一部抜粋

桜井さんは「柏崎の元気を全国に発信したい」と抱負を述べました。原発推進派、反対派の両派から打診され出馬を決意したということです。桜井さんは「柏崎の現状を見れば再稼働を認めざるをえない。同時に原発は減らしていく方向にする」と将来像を話します。



このように、もともと桜井氏は原発推進派・反対派の両方から出馬を打診されたというのが真相であり、桜井氏自身としても原発は将来的には減らしていくと述べていました。

当選後の桜井氏の発言を見てみますと、最初の記事の通り、「慎重な容認派」というスタンスであり、再稼働の可能性を認めつつも、事実上凍結状態になっている再稼働の議論を自ら溶かすことはない(安易に再稼働を求めない)と慎重な姿勢を崩さず、さらに中期的には原発への依存度を減らし、将来的には撤退するべきであると、選挙期間中よりも踏み込んだ発言をしています。

このようなわけで、私としては桜井氏が「とんでもない原発推進派」というような、そこまで悪い印象はないですね。

‖ 世の中命より大切なものはない?

しかし、今回の選挙の結果を受けて原発反対派の方々は、口々に「命よりカネか!」とか、「柏崎市民の民度が云々」、「事故が起きたら責任をとれるのか(取れ)」みたいな辛辣な論評を述べられる方も見られます。

この手の選挙のたびに、必ず反対派から出てくる主張が「命より大切なものはない(だから即時原発ゼロ=反原発なのだ)」というものですが、このような話は私としてもいちおう理解はできますが、しかし一般論としてはあまりに純粋に過ぎ、原発反対の論拠としてはこのような主張はあまり前面に出すべきではないとも考えています。やや回りくどい言い方になりましたが、端的に言えば、現実社会における「命」の価値は、反対派の皆さんが思ってるほどは高くないのです。

柏崎刈羽原発 お膝元は容認派を選んだ(産経新聞 社説)
2016/11/24 (1)http://archive.is/rWX19 (2)http://archive.is/b0jNo #産経ニュース

一部抜粋

先月、新潟県の新知事に就任した米山隆一氏は「県民の命や暮らしが守れない現状では、再稼働は認められない」という姿勢だが、長らく原発と共存してきた柏崎市と刈羽村の人々の声に耳を澄ます謙虚さが必要だ。

 「お金より命が大事だが、生活を支えて命を育むためにお金も必要」という選挙戦での桜井氏の訴えは、柏崎市の生活者の過半を占める切実な思いだろう。

そうした意見を、原発依存だと安易に断じる批判があれば、皮相に過ぎよう。



命は大事だがお金も必要。桜井氏の主張はもっともだと思いますし、これはおそらく一般論としてもそうだと思います。もちろんこれは、「命よりお金が大事」という意味では全くありません。

浅羽通明 「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか
2016/2/8 http://bit.ly/2fuZiXq

一部抜粋

‐しかし、原発の問題に関しては、命あっての物種ではないのですか。生命の危険にほかの何が優先するというのでしょうか。

浅羽 命より大切なものはない。脱原発を唱える人がよく使うフレーズですね。
 これに対しては、すでに3・11が起きた年の秋、根本的な疑問を投げかけた人がいました。作家の金原ひとみ氏です。
 「東京新聞」で金原氏はこう書きました。
 「命より大切なものはないと言うが、失業を理由に自殺する人が多いとされるこの国で、失業を理由に逃げられない人、人事が怖くて何も出来ない人がいることは不思議ではない」。

・・

世の大方は社名と肩書きあっての物種なのです。命あっての物種ではまったくない。・・それがぐらぐらと崩壊してゆく恐怖に比べたら、命を失うなんて大したことではありますまい。



浅羽 中高年再就職でハローワークへ通う屈辱の日々、無事、社に残ったり条件のよい再就職ができた同僚と比べたときのみじめさ、これまでにもまして突き刺さる家族の視線、熟年離婚、末はホームレスすら想定外ではないというリアルなイメージに押し潰されて、ゼロ年代の日本では、中高年が毎年、二万数千人ずつ自殺していったのですよ。
 原発の危険性を彼らが知らないわけでは決してないでしょう。
しかし、次の事故がいつ起きるかわからず、・・とりあえず「ただちに危険はない」といえてしまう。

・・

この程度の「危機」では、減給への怯え、リストラの底知れぬ恐怖のほうがはるかに優先してしまうのが勤め人の日常というものでしょう。・・そしてこの勤め人には、作業員ほかの原発関係の勤労者も含まれるのです。

・・

 これまで通りの日常と生活が続いて惰性で生きられる幸せ。その延長線上の想定内の未来。「命」より大切なものなんかいくらでもあるのです。



著者の浅羽通明(あさば・みちあき)氏は、本書で金原ひとみ氏の主張を「ペシミスティック(極端に悲観的・厭世的)」と評しているわけですが、当の浅羽氏本人がさらに輪をかけてペシミスティックな主張を展開されているというのが面白い(おそらくわざとやっている)のですがw浅羽氏の仰る「命より大切なものなんかいくらでもある」というのは、たしかに金原氏以上にペシミスティックではありますが、それでも一般人の肌感覚としては合っているように思います。

この話は、「命」を「リスク(負担)」と置き換えればわかりやすいかもしれません。自分の身はもちろん大事だけど、何かを得るために、あるいは日々の生活を守るために何らかのリスクを負って日々を過ごしているというのが国民感覚としては妥当であると思います。浅羽氏のような切った張ったほどではないにしても、将来の健康を害するかもしれないリスクを承知の上で、今はとにかくマイホームや子供(家族)のために少々無理して働くとか、食費を削ってお金を貯めるとか。そういうことはよくあるわけです。

‖ 世間は反対派とは違い、「ただちに危険はない」リスクを最優先仮題とはしない

しかし、原発事故は確かに脅威ではあるものの、次の事故がいつ起きるか(実際に事故が起きても被害の規模はその時次第)わからず、ひとまず「ただちに危険はない」と言えるので、「今そこにある危機」とはみなされない。そのため、原発問題に関しては、国民の危機回避の優先度の順位としては、やや後回しにせざるを得ない。

こういう感覚は私としては残念ではありますが、同時に認めざるを得ないとも思っています。

そのためこのような環境で、「命が大事、命より大切なものは無い!」と、一見正論に思える主張を述べられても、それが必ずしも実社会ではリアリティー(生活感)を持つ言動であると評価されるとは限らないのです。それどころか、あまりに声高に「命が大事!」とやってしまうと、「ああいうのはどうにも浮世離れした人たちだ」と、かえって心証を悪くしてしまうかもしれません。

生活感のないバーチャルな論理は、例えばアカデミックな世界やデモ、各種集会のような限られた非日常的な環境では通用し得るとしても、実社会で共有されるとは思えません。「命の価値は一億万円なのだ!」、「そうだー!」みたいなアジテーション、コミュニケーションの類いは、本来限られた価値観を共有できる特異な環境のみで成立するものです。

しかし、どうにも原発反対派の主張としては、そのような内輪の論理が一般論であると認識しているような節が見受けられるのです。

それはつまり、「命」の価値に重きを置いた原発反対論の限界でもあるとも考えています。


その2につづく

関連記事
スポンサーサイト

カテゴリ: 冷やしたぬき放談

テーマ: 政治・経済・社会問題なんでも  ジャンル: 政治・経済

comment(0) | trackback -- | edit

page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top